オナニーって人から習うもの?
いつのころからか、女性向けにAVを作っているメーカーさん各社から「ハウツー・オナニーを教える作品は常に需要がある」と聞くようになりました。
……オナニーの仕方って誰かから習わないといけないものなの?成長過程のなかで自然に身につくものなのでは? と思った私が浅はかだったようです。
表立って語られることはないけれど、「私のオナニー、間違っているのかも」「オナニーでもイケない」と悩む女性は少なくないそう。ゆえに「正解」を求めて、ハウツー・オナニーを勉強する人たちがいるのですね。
オナニーに間違いも正解もない……と、いいたいところですが、「気持ちよくない」「イケない」のなら、その方法を検討する必要はありそうです。
オナニーは気持ちよくなるためのもの。自分ひとりで自由にイクためのもの。自律神経が整うとか、よく眠れるとか、自己肯定感が高まるとか、オナニーに意味をいろいろ見出す説もありますが、それらは副次的なもの。
オナニーの目的はあくまで自分の身体に快感を与えることだし、第一、気持ちよくいオナニーで自己肯定感もへったくれもないでしょう。
では「間違ったオナニー」というのはあるのでしょうか?
ここに、『女のコのひとりエッチ完全マニュアル』(由良橋 勢著、笠倉出版)という電子書籍があります。ベーシック系、ダイナミック系、ギミック系、マニアック系と4ジャンルに分けた全48種のオナニースタイルが紹介されています。
「女性のオナニーってイイよな」という男性の覗き見趣味的な本だと思って手に取ったのですが、さにあらず。ツッコミどころは多いんですけどね!
でも、たとえば基本中の基本〈クリいじり〉の解説からして大マジメ。指でクリを刺激する方法が、イラストを交えながら、ご丁寧に3段階にわたって説明されています。おおまかにまとめると、
段階1
クリトリス包皮のむき方(陰裂の上端の皮膚を指先で恥骨に押さえつけながら、へそ側にぐいっと引っ張るようにしてずらす)
段階2
クリトリスを潤わせる(濡れていれば分泌液で、濡れていないならローションで)
段階3
クリトリスを刺激する(指の腹で「の」の字を書くようにクルクル撫でる、表面をスーッと直線的に撫でる、頂上をピトピトとごく軽い力で叩くなど)
と、しごく真っ当。その次のステップが「皮つるみ」なので何かと思って読んでみれば、単に包皮をむかずにクリ刺激するだけのことでした。まるで四十八手のような大仰なネーミングです。
全48種のオナニースタイルのうち、私がアウトだと思うものは、主に2種類のタイプに分けられます。
●不衛生なもの
●男性のファンタジーを押し付けられたもの
前者に相当するのは、「経血ローション」や「ゴールデンシャワー」。生理のときの血を小完全体に塗りたくってローション代わりにするのも、自分の尿にまみれてオナニーするのも衛生的ではありません。
ほかにも「エネマ洗浄(浣腸のこと!)」「尿道挿入」は、もしやりたい人がいたとしても、一度プロの指導を仰いだほうがいいでしょう。
究極は「触手這いずり」です。北斎の春画「蛸と海女」を見てもわかるように、日本人はほんとに触手が好きですね。
私も性的ファンタジーとして見るぶんにはわりと好きなのですが、「ドジョウをコンドームに閉じ込めて膣内に挿れ、中で暴れるのを刺激とする」とか、ありえないから!
こんなネタにマジレスするほうが負けなんでしょうけど、こういう発想って、女性にもドジョウにも失礼すぎて、私は笑えないんですよ。
後者の一例は、ディルドを床に固定しての騎乗位オナニー。それ、AVでよく見るやつ~。M字開脚でスクワットしながらディルドを出し入れって、筋トレ的には有効でしょう。
でも、太ももにたまる乳酸菌のほうに意識を奪われ、快感を覚えるどころではなさそうです。これは「見ている人のためオナニー」であって、自分のためのオナニーではないのです。
男性のファンタジーを内面化して、「それが私の快感」と思い込むのは邪道です。同様に、「精液ローション」も発想そのものが気持ち悪いです。
こうした「間違ったオナニー」のほかにも、次から次へとエクストリームなオナニースタイルが繰り出される本書ですが、読んでいるうちに何が正解で何が間違っているのか……どんどん混乱してきました。
たとえば、「擬似中出し」。シリンジ(針の付いていない注射器)にローションを仕込み、それを膣内に挿れて、精液に見立てて射出する……
って何が楽しいのか私にはさっぱりわかりませんし、それこそ男の「中出しで女は悦ぶ」願望を押し付けられているだけだ、と思いたい。
のですが、アダルトグッズ業者さんたちと話しているとき、「女性ユーザーから、ローションを精液に見立てて擬似中出しできるバイブがほしい!」というリクエストがたまに届く、と複数の人の口から聞いたことがあるのです。
かつてそういうバイブが販売されていたこともありますが、まったくもってステキなものではなく、いまの女性の感覚に添ったデザインではありません。
そもそもメーカーにわざわざリクエストをしてくるのは、とてもとてもコアなユーザーで、一般的な嗜好ではないため、実際に要望に応えて商品化するのはむずかしい、とのことでした。
人の数だけあるオナニー
他人から見たら極端で現実的でないスタイルでも、その人が「それこそが気持いい」「それでないとイケない!」のであれば、それは間違いではない……そう思えてきました。
同書で紹介された「擬似クンニ」はコンニャクを男性の舌に見立てて股間に這わせるというスタイルでしたが、クンニ好きでその感覚をリアルに再現したいあまり、牛タンを買って試してみた女性も私は知っています。
これはちょっと衛生的にアウトのような気もしますが、そこさえ気をつければ、他人から「それおかしいよ!」と否定されるものではないということなのでしょう。
女性の数だけ、オナニースタイルがある。そして、それはどんなものでも、尊重されなければなりません。
「私ってヘンなの?」「やり方が間違っているのでは」などと思わず、気持ちいいなら自分の気の向くままに愉しんでいいのです。
私はラブグッズこそ使いますが、自分のスタイルはとことんオーソドックスなのだなと実感しました。
同書で紹介されていたスタイルで唯一、「これやってみたい!」と思ったのが、「ローション綿棒」です。綿棒の先端にローションをたっぷりまぶして、敏感な部分を愛撫する……地味だなぁ。でも、絶対にイイはずです。
セックスで相手を攻めるときにも使える小ワザだと思います。ローションさえ持参すれば、ラブホでも手軽にできますしね。
[via:http://mess-y.com/archives/33824]
男性だけど面白そうですね。目を通してみたい本です