トークバラエティが全盛の昨今、一般人であっても「話が面白くないとダメ」という強迫観念にとらわれがちだ。スベれば地獄。そんな世の中を生き抜くためにトークのプロ・土田晃之さんに、一般人でもすぐにできる、面白く話すちょっとしたコツを聞いてみた。
――ボクら一般人がウケるトークをするために、まず気をつけることってはなんでしょうか?
土田:よくやりがちだけど、最初に「おもしろいことがあってさ~」って言っちゃうのは絶対ダメ。いきなりハードルをあげちゃうことになりますからね。面白い話って、そんなそぶりは見せずに話して、最後に面白い話だったっていうのが理想なんですよね。
「面白いことを話すぞ」っていうのをできるだけ相手に悟られないようにする。それだけでハードルがグッと下がりますからね。ちなみに出川(哲郎)さんとか狩野(英孝)くんとかは、プロだけどそれができないタイプですね(笑)。
2人の、あれで笑いが起こるっていうのは天才的なパターン。もう神の領域ですからね。あれは絶対にマネてはいけないやつです(笑)。
――でもつい顔に出ちゃうって人は意外と多いですよね。
土田:あとよくいるのが、オチの前に自分で笑っちゃう人ね。同じ事務所の先輩・上島竜平がよくやっちゃうんですよね(笑)。あれ、ダメだよ!って何回も言ってるんでけどね。
今でもうまくいかないと自分で笑うんですよ。何年もきびしく教えてるんですけどまだ覚えない。力はあるコだと思うんですけどね(笑)。
――土田さんといえば、『アメトーーク!』で「タッチ芸人」や「北斗の拳芸人」とさまざまな、くくりで出演していますが、登場する芸人さんのなかでも、特に知識量が豊富というか常にマニアックなトークを話している印象がありますよね。
土田:「○○芸人」は知識量よりも話術が重要です。通っぽく見える話し方をしてるってだけなんですよ。
――つまりどういうことですか?
土田:たとえば「ドラゴンボール芸人」の回だと、次長課長・井上(聡)とかウエンツ(瑛士)はめちゃめちゃ詳しいんですよね。ボクは弟が持ってたのを読んでたぐらいだから、「だいたいのストーリーは知っているけど細かいところまではわからない」ってレベルの知識量だったんですね。
でも相関図を見てキャラクターを説明するってコーナーで、はじっこにいるギニュー特戦隊を見つけて「これ、ギニューとリクーム、バータとかっていますけど、みんな名前が乳製品なんですよ!」って話したら、知らない人は、そこまで知ってるんだ! ってなるんです。
悟空とかベジータとか、メインキャラの詳しい話をするよりもインパクトがある。知識のどこを切り取って出すかによって印象って変わるんですよね。
――それはでもやっぱり、それなりに知識が必要ですよね。
土田:それは当然必要なんですけど、その知識に気づいてもらうために、どう話すかってところが重要で。ボクは王道の部分は触れないようにしています。
――それは『アメトーーク!』以外でもそうなんですか?
土田:常にそうですね。若い頃、サッカーの仕事をたくさんやりたいって思ってた時期がありまして。ただ、ワールドカップの話をしても印象には残らないので、あえてその話はしないようにしてみたんです。
たとえば、ペレとかマラドーナなんかのメジャーな選手にからめて、ヨーロッパ選手権の話をする(笑)。
ベッカムが出始めたときも「ベッカムも好きなんですけど、ボクが好きなのはベッカムよりも先にスペインのレアル・マドリードにいたスティーブ・マクマナマンで…」って話すと、知ってる人は、「こいつ、マクマナマンおさえてんのかよっ!」ってなる。
――知識があるってわかってもらうには、ちょっと通っぽい選手の話をするほうがいいですよね。
土田:でもそういうはじっこのほうばっかり話してると、それはそれでめんどくさいやつだと思われる(笑)。だからあえてベッカムの話を最初にちょっとするんです。そうすることで、よくわからないマクマナマンの話でも、みんな興味を持って聞いてくれるんです(笑)。
――たしかにメジャーな選手の話を織り交ぜながら話せば、興味を持続させることができますね。今日はいろんな技術を教えていただきましたけど、そもそも話すのが苦手で、うまくしゃべれないよ!って人の場合はどうすればいいんでしょうか?
土田:ボクも今はこんな仕事をしてますけど、昔は人前に出るのが苦手だったんですよ。やっぱり、苦手意識を克服するのに、いちばんいいのは自分がしゃべってるのを聞くことですかね。
なんでスベったかっていうは、そのトークを録音して何度も聞きなおせばわかってくるんです。それで次に前よりもうまく話せたら自信になるし、緊張もなくなってくるはずだし。
まあボクらは仕事だからそうするけど、一般の人はなかなかそこまでするのは難しいでしょうけどね(笑)。
――土田さんの話術のコツをまとめた著書『納得させる話力』には、そういったプロの技術がいろいろと書かれています。
土田:でもこの本を読んだ人が、すべて実戦できるかっていうと、それは結構難しいんですけどね。まあアドバイスの1つとして読んでもらえればうれしいです。ちょっとした会話で役には立つかもしれないし。まあ、ボクだったら千円あれば「進撃の巨人」を2冊買いますけどね(笑)。
――特に最近、男性のトーク力に対する女性のジャッジはきびしくなってる気がします。そもそも論として、話がおもしろくないといけないっていう最近の風潮は、どう思われますか?
土田:まあ、しゃべっててつまんないよりは、楽しいほうがいいっていうのはわかります。でも「つまんない男はダメだ」って言ってる女性にこそ言ってやりたいんですよね。じゃあ、お前はどれだけの面白い話をしてくれるんだ?ってね(笑)。
[引用/参照:http://nikkan-spa.jp/834561]