松田奈緒子原作の連続ドラマ『重版出来!』に登場する、人気漫画家たちの描き下ろしの架空の漫画。その作画を担当しているのは、実際の超豪華漫画家たちというのはご存知だろうか?
今回その架空の漫画が、各作品の作画担当作家の単行本に収録されることが決定した。ドラマをより盛り上げてくれた漫画家たちの作品が全ページ読めるとあって、
「どの作品も気になるんだが! めっちゃうれしい!!」
「完全版が読めるとか楽しみすぎ!」
「え!? ちょ!? マジですか!! 絶対全作買う! 買うよ!」
とファンから喜びの声が上がっている。
『重版出来!』は、週刊コミック誌の編集部を舞台に新人女性編集者・黒沢心と出版業界を支える編集者たちの姿を描く職業マンガ。コミック編集部が舞台なので、作中には様々な漫画が登場する。
もちろん作中に登場する漫画家たちは役者が演じているのだが、登場する劇中作は実際に活躍する豪華漫画家が描き下ろした作品ばかり。
ファンからの「劇中作を単行本で読みたい!!」との声にこたえて、作画を担当した漫画家の単行本に収録するという形で出版が決定した。
8月18日に発売される田中モトユキ「BE BLUES! ~青になれ~」24巻には、田中による大塚シュート「KICKS」が、
8月30日に発売されるのりつけ雅春「しあわせアフロ田中」4巻にはのりつけによる成田メロンヌ「黄昏ボンベイ」が収められる。
8月30日リリースのゆうきまさみ「白暮のクロニクル」9巻では、ゆうきが担当した三蔵山龍「ドラゴン急流」が、村上たかし「アキオ…」では、村上が担当した八丹カズオ「タンポポ鉄道」が読める。
なお「白暮のクロニクル」9巻については「ドラゴン急流」「ドラゴン激流」の制作過程も含めた冊子付きの単行本が用意される。
また「タンポポ鉄道」は村上による大幅加筆の上で収録。
そのほか8月30日には「重版出来!」の最新8巻も登場するので、あわせてチェックしておこう。
この知らせにファンは
「タンポポ鉄道読みたい。村上たかしだもん、絶対泣く」
「ゆうきまさみ先生の絵だと思った!! おおおお!!! 読みたい!!」
「ドラマとの関わりで楽しんで、さらに漫画として純粋に楽しめる二度おいしいやつ!!」
と大興奮。
劇中に登場する作品は、原作者の松田が手掛けたネームを元に作画陣がオリジナルの世界観を膨らませて制作したもの。
単行本収録が決定している漫画家の他にも、『モンキーターン』『とめはねっ! 鈴里高校書道部』などで知られる河合克敏、『潔く柔く』『バラ色の明日』で知られるいくえみ綾、さらにはあの『忍者ハットリくん』や『怪物くん』の生みの親・藤子不二雄Aも作品を提供している。
このあまりにも豪華すぎる作画陣に
「本物の漫画家さんの原稿やネーム見れるだけで楽しい」
「ドラマはもちろん面白いんだけど、今週はどの漫画家さんが絵を描いてるのか気になって毎週見てる」
「本物の漫画家さんのリアル原稿を小道具に使うなんて…これ凄いことやで!!」
とマンガに重点を置いてドラマを見る人も。
第一話にゆうきが作画を担当した「ドラゴン急流」が登場した時は「小日向さんがゆうきまさみ先生の絵を描いてらっしゃる…?(混乱)」「我々は知っているっ! この絵柄をっ!!」とドラマを見ていたファンたちは大興奮。
さらに、作中で原稿にスミを落としてしまったり、三蔵山のデッサンが狂っていると言われるシーンでは
「あー!! ゆうきまさみ先生の画にスミがーー!!!」
「ゆうきまさみ先生をディスるという神をも恐れぬ展開にガタガタする 」
とテレビの前のファンたちは大騒ぎ。
実際は、「デッサンの整った絵を描いて渡して、デシタルで曲げ伸ばしした」ものなのだが、その事実を知らない視聴者たちにとっては恐ろしいひと時だったのだろう。
しかし、作画担当作家の単行本に収録ということで
「とめはね連載終了後の河合克敏せんせーのツノひめさまが読めないじゃないですかー」
「藤子先生の作品が読みたいんです~」
「単行本化だいぶ先になる先生も多そうだよ~」
とお目当ての先生の作品が読めない可能性に悲しみの声も上がりだしている。
劇中作として豪華漫画家が描き下ろした作品を、実際に単行本に収録するというミラクルな試みを行った『重版出来!』。すでに収録が決まっている作品や他の先生方の収録情報を心の支えにしながら“重ロス”を乗り切ってほしい。
[引用/参照/全文:http://ddnavi.com/news/306395/a/]
『重版出来!』劇中作品まとめ
『ドラゴン急流』作者:三蔵山龍(小日向文世)
作画:ゆうきまさみ
『タンポポ鉄道』作者:八丹カズオ(前野朋哉)
作画:村上たかし
『黄昏ボンベイ』作者:成田メロンヌ(要潤)
作画:のりつけ雅春
『ツノひめさま』作者:高畑一寸(滝藤賢一)
作画:河合克敏
『KICKS』作者:大塚シュート(中川大志)
作画:田中モトユキ
『東の賢者と西の銃』『ガールの法則』 東江絹(高月彩良)
作画:白川蟻ん
『タイムマシンにお願い』牛露田獏(康すおん)
作画:藤子不二雄A
『100万オトメバイブル』山縣留羽
作画:いくえみ綾
『ピーヴ遷移』中田伯(永山絢斗)
作画:ひなた未夢
持込原稿作画:松田奈緒子
[引用/参照/全文:http://www.neowing.co.jp/feature/juhanshuttai_2016]
漫画家、編集者にもモデルが!?
TBSラジオ『たまむすび』[2016/06/14]
(町山智浩)もう毎週、ボロボロに泣いてますけども。で、見てない人のために説明したいんですが、TBSで毎週火曜日にやっているドラマですね。
で、重版出来というのは出版用語で「本の二刷目が出来上がりました」っていう意味なんですが。舞台はバイブスという架空の青年漫画雑誌の編集部で、ヒロインは黒木華さん扮する新入社員の編集者の黒沢心ちゃんですね。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)で、その彼女を中心に漫画家さんや出版関係者の人たちのドラマなんですけども。で、原作は小学館のビッグコミックスピリッツに連載中の松田奈緒子さんの漫画なんですけども。
これ、とにかく僕がびっくりしたのは……っていうかこれ、『たまむすび』でやらなきゃならないなと思ったのは、赤江さんが出てましたね(笑)。
(赤江珠緒)そうなんですよ。あらっ、ご覧になっちゃいました?
(町山智浩)ねえ。いやー、もうズルい役ですねー!
(赤江珠緒)(笑)。そう。いいところで、遺影とかで出てくるでしょう?(笑)。
(町山智浩)だってキラキラ輝いていたじゃない。赤江さん。
(山里亮太)いい思い出の中でね。牛露田先生の奥さん。
(町山智浩)もうキラッキラでしたよね。もうね。
(赤江珠緒)ありがとうございます。わーい。
(山里亮太)町山さんはあの演技とか見ていて、どうでした?
(町山智浩)いや、だってただもう本当、女神のような人っていうキャラじゃないですか。ねえ。もうズルいなと思いましたよ。本当に。
(赤江珠緒)(笑)。ああ、よかった。そうですか。ご覧になっている人からそう言われると、よかった。
(町山智浩)俺なんて、ひどい役っていうか、出てるわけじゃないけど。ライバル出版社のすごい悪い、ズルい営業マンだよ。
(赤江珠緒)そうそう! エンペラーの営業の町山さんってあれ、町山さん?
(町山智浩)でしょう? そっちは女神で、俺はズルい営業なのか? と思ってね(笑)。でね、これ、原作者の松田さんの旦那さんの新保(信長)さんっていう人が編集者で、ちょっと知り合いなんですよ。僕。
(赤江珠緒)へー。
(町山智浩)で、「どういうこと?」って聞いたらですね、あの町山っていうキャラは脚本家の野木亜紀子さんのオリジナルキャラだっていう話なんで。まあ、嫌われてるんだろうなと思いましたけどね。はい(笑)。《中略》
(町山智浩)そうそう。だからね、モデルにされているんですけど。『重版出来!』もね、モデルがいるって言われてるんですね。出てくる人に。
(山里亮太)僕もそれ、イメージしながら見ています。これはこの先生のことかな?って思いながら。
(町山智浩)そうそう。で、放送されるたびに漫画関係者の人たちがTwitterとかで盛り上がってるんですね。で、赤江さんの旦那さんの役になった、昔すごかった漫画家さんなんだけど、いま描けなくなっちゃったっていう漫画家さんも……
(山里亮太)ギャグ漫画のね。
(町山智浩)そう。『ど根性ガエル』の吉沢やすみさんじゃないか? とかね。まあ、いろんな実在の……
(赤江珠緒)『ど根性ガエル』の?
(町山智浩)はい。じゃないかな?って。まあ、娘さんがね、描いているんですよね。その時のことをね。本にしているんで。
とか、いろいろ言われてたり。あと、最上もがちゃん扮するモデルと付き合っている滝藤賢一さんが演じている売れている漫画家の人がいるじゃないですか。
(山里亮太)高畑先生。
(町山智浩)そうそうそう。あれは誰だ?っていう話で、たぶんですけど、何人かが合成されていて。アイドルと結婚した江口寿史先生とかですね、あとは尾田栄一郎先生がキャンギャルと結婚されてますよね。
(赤江珠緒)へー!
(山里亮太)尾田さん、奥さんね、きれいな人なのよ。
(町山智浩)そうなんですよ。尾田栄一郎さんの漫画ってあれ、子供にものすごくいいなと思ってですね。あれを見ると、ロリコンにならないですね。『ONE PIECE』を読んでるとね。
(山里亮太)(笑)。あのボリューミーなね。
(町山智浩)ナイスバディ、バンバンだから。ロリコンとかふざけんじゃねーよ!っていう感じになって。なかなかいい男が育つと思うんですけど。まあ、それはいいんですが。
教育上素晴らしい漫画が『ONE PIECE』だと僕は思っているんですが。まあ、それは置いておいて……(笑)。
(山里亮太)そこだけじゃないですよ。友情とかもあるんですよ……
(町山智浩)(笑)。「もうナイスバディ以外は出さねえぞ、俺の漫画には!」っていうね、素晴らしい政治的ポリシーを感じますが。
あとですね、永山絢斗くん。イケメンの彼が演じる新人漫画家は絵が下手で下手で下手で。で、他の雑誌では「載せられない」って言われるんですけど、黒木華ちゃんだけが「これはすごい才能だわ」っていうことで、彼に賭けてみるっていう展開になっていますけど。
あれはよく、いま言われているのは『進撃の巨人』の諫山創さんじゃないか? と。
(赤江珠緒)ああー、やっぱりそうか。私もそう思いましたね。
(山里亮太)僕もそう思って見てました。中田伯。
(町山智浩)で、彼も絵のせいで最初少年ジャンプに蹴られて。で、それを別冊マガジンに入社して1年目の編集者の川窪さんに見出されてデビューして。
(赤江珠緒)へーっ! 1年目の編集者だったんだ。こっちも。
(町山智浩)1年目なんですよ。彼。だから黒木華ちゃんのキャラと同じなんですよ。設定的に。
(山里亮太)なるほど。じゃあ絶対にそうだ。諫山さんだ。
(町山智浩)だからそうじゃないか? とか言われたりしてるんですけど。で、そういうのもあってですね。あと、『重版出来!』でなにがいちばんいいかっていうとですね、キャスティングなんですよね。
(山里亮太)見事ですよ。見事なキャスティング
(町山智浩)これ、原作とそっくりなんですよ。出てくる人たち、顔が。で、いちばんすごいのは、五百旗頭さんですよ。
(赤江珠緒)五百旗頭さん。オダギリジョーさんね。
(町山智浩)そう! あの黒木華ちゃんの先輩の編集者で、もう完璧な編集者なんですよ。で、このオダジョーの色気がハンパないね。
(赤江珠緒)そうですよね。かっこいいですよね。《中略》
(町山智浩)毎回、とにかくめちゃくちゃ泣けるんですけど。とにかく、お話が素晴らしくて。いちばん僕が泣いたのは、ムロツヨシさんの話なんですよ。
(赤江珠緒)はいはい!
(山里亮太)泣けた!
(赤江珠緒)ねえ。長くアシスタントをされていたのに。
(町山智浩)ベテランのアシスタントで、もう何十年もアシスタントをやっているんですけど、その一方でデビューするために、ネームって言ってるんですが、ノートに書いた漫画の設計図をね、書いて。
編集者に見せているんですけど、なかなかそれが採用されなくて、デビューできないんで。で、10年以上がたってしまったと。で、そこの彼のアシスタントのチームに、永山絢斗くんが入ってくるんですね。
(山里亮太)中田伯。絵が下手だけど天才な子が。
(町山智浩)そうなんですよ。で、コミュニケーションも全く取れないんですよ。彼は。で、感情がないんでみんなから変人としてバカにされているんですけど。
そのムロツヨシが永山くんの書いたネームを読んで、その才能に愕然とするんですよね。で、「こいつは天才だ! 絶対に勝てないや、これは!」って思うんですよ。
ところがですね、そのムロさんの書いた、誰も相手にしてくれないネームを永山くんが読んで、涙をこぼすんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、「この物語は人間の尊厳についての物語です!」って言うんですよ。で、それは本当なんです。当たっているんですよ。ただ、ムロさんはそれが恥ずかしくて、隠して誰にも言わなかったんですね。
その、非常に実存主義的なテーマなんで。で、編集者は誰も気がついてくれなかったんだけど、永山くんは天才だから気づくんですよ。そこに。一発で見抜くんですね。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、その時になぜかムロさんは漫画を辞めて田舎に帰っちゃうんですよ。
(赤江珠緒)そうなんですよ。
(山里亮太)あれは悲しかった。泣けたなー。
(町山智浩)でもあれね、すごいいろんな意味があると思ってね。まず、一発で見抜かれたことで、この永山くん扮する中田くんは本当に天才なんだっていうことが決定的になったんですね。あれで。
でも、逆に言うと、ムロさんの漫画には天才を泣かせる力があったっていうことですよね。
(赤江珠緒)そうですよ。うん。
(町山智浩)そうなんですよ。で、しかも彼は天才だから、この世で最高の読者なんですよね。で、この世の最高の読者を1人だって泣かせることができたんだから、俺は漫画家としての仕事を全うしたという気持ちもあったでしょうね。
(山里亮太)ああー、なるほど! そっか。自分が凡人だって気づいたから辞めたっていうだけじゃないのか。
(町山智浩)だけじゃないと思うんですよ。「やっぱり俺は間違っていなかった」っていうのも確信したと思うんですよ。
(赤江珠緒)ああー、そこで消化できた部分があるんだ。
(町山智浩)だからすっごく複雑ないろんな意味があって。もうあの回は本当に涙ボロボロでもう、止まらなかったですけど。
(赤江珠緒)ねえ!
昔、阿川という才能ある役者が、役者を辞めると言った、
地元に帰る前の日、飲んだ、
阿川さんは明るかった、
飲んだ駅までの帰り道、阿川さんを止めたくて、止める必要などなくて、泣いた、
それがバレないように、阿川さんの先を歩いた、その時のことを、重版出来の7話の脚本で思い出した、
— ムロツヨシ (@murotsuyoshi) May 24, 2016
(町山智浩)で、そういう風に言っていると、この『重版出来!』っていうのは「漫画に興味ねーや」っていう人は、「俺には関係ねーし。よくわかんねーな」って思う人も多いと思うんですよね。
(赤江珠緒)ふんふん。
(町山智浩)でもね、そうじゃなくて。漫画家さんだけじゃなくて、出版に関わるいろんな職種の人が毎回主役になるんですよ。『重版出来!』って。
たとえば、二話目は営業マンの坂口健太郎くんがへなちょこでね。しかも、漫画にあんまり興味なくて。で、営業にも興味なくて。自分が働く意味がわからなくて、本当にもう呆然としているんですね。
これはいったいどうしたら……仕事をするっていうことは自分にとってどういう意味なんだろう? 自分の人生にとってなんだろう?っていうことを掴む話になっているんですよ。
(赤江珠緒)うん、うん。漫画を取り巻く様々な職種と仕事を描く
(町山智浩)それって別に、出版とかと関係ないですよね。誰にでもあることで。それで彼は、「自分の仕事っていうのは作り上げられた商品をいかに消費者に伝えるか?っていう仕事なんだ」っていうことに気づいていくんですよね。だからそれって別にどこにでも通じることですよね。
(赤江珠緒)たしかに。
(町山智浩)だからこれ、ドラマ全体を通して、『重版出来!』っていうのは漫画についてだけじゃなくて、編集者とか、アシスタント、営業マン、装丁をするデザイナーの人。あと、印刷所とか書店さんですよね。書店さんも出てきますよね。濱田マリさんのね。
(山里亮太)はい。河さん。
(町山智浩)あれも実在の人物らしいんですけど。
(山里亮太)ええーっ?
(町山智浩)そうなんですよ。あと、読者の反応も漫画にフィードバックされていますから。いま言った人たち全員が力を合わせて作り上げていくのが漫画っていうものなんだっていうことを描いているんですよね。『重版出来!』って。
(赤江珠緒)そうですね。だから私ね、三話目のね、要潤さんの回。(成田)メロンヌ先生と編集マンの荒川(良々)さんの関係性とかを見ていて、なんかラジオとかを作るのと一緒だなと思いましたもん。
パーソナリティーとディレクターとかと一緒ですよね。
(町山智浩)全く同じですよね。だからね、あれは要するに連載が打ち切りになるっていう時に、担当編集者と漫画家はどういう風にそれに対して立ち向かえばいいか?っていう話ですよね。
でね、雑誌が廃刊になったりするの、僕も経験があるんですけど。本当に辛いんですよ、あれは。
(山里亮太)あれも泣けたな。だから安田顕さんがね、あんな風になるきっかけになった、雑誌の追い込まれた時とかも、辛かったですよね。
(町山智浩)そうなんですよ。どうやってその、裏切りにならないようにまとめていくか?っていうね。本当にあれは辛い話。あれはヤングサンデー廃刊の時をモデルにしているらしいんですけど。
(赤江・山里)ああー!
(町山智浩)で、あそこで安田顕さんが「漫画っていうのはこれに関わる人たちみんなの家なんだ!」って言うんですよね。でも、あれは本当にそうで、雑誌っていうのはそうなんですよ。
雑誌って作る時に全員が家族のつもりでやらないと、できないんですよ。で、僕もそうやっていたんですけど、そうするとどうなるか?っていうと、本当の家族をダメにしちゃう場合があるんですね。
(赤江珠緒)ありがち(笑)。業界にありがちな話(笑)。
(町山智浩)家に帰れないから。で、安田顕さんは本当の家族がダメになったんで、本当の家族を取ることにした人なんですよね。
だからそのへんもすごくよくできていて。でも、たぶんね、これ、ラジオ番組なんか本当にそうじゃないですか。家族じゃないですか。
(赤江珠緒)はい。
(町山智浩)で、僕みたいにこうやってゲストみたいな形で出てくる人は、漫画家ですよね。一種のね。雑誌だったら。それで、ディレクターとかは編集者ですよね。だから本当にね、どこの職場も同じで。
たぶんね、映画もそうだし。僕、映画の内側に行った時も思ったんですけど、やっぱり家族なんですよ。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)で、音楽もそうなんですよね。CDを作ったりも。でもね、たぶん家電を作るのも、自動車を作るのも、ファッションもね、食品もサービス業も農産物もそうですけど。やっぱりみんな、家族みたいにして作っていってると思うんですよ。そういうものは。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)で、ただの冷たいビジネス関係ではたぶんね、人の心を掴む商品は作れないし、やっぱり直接付き合っているその、「あなたのためにやります」っていう気持ちがないと、やっぱり作れないですよ。
漫画家の人はいちばん身近にいる編集者がいて。編集者の君のために描くっていう気持ちがまずないと、その向こうの読者に届くものも作れないですよね。
(赤江珠緒)はー! なるほど。《中略》
(町山智浩)でも、そうやってさ、みんな仕事を通じて本当に密接につながりあうことによって、日本全体ができている……できていたと思うんですよね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)だって、日本ってビジネスライクな国じゃないじゃないですか。もともと村社会で。やっぱりそうやって、目の前にいる誰かのために作りたいっていう。
野菜を作る人だったら、野菜を仕入れに来るあなたのために、いい大根を作ったよっていう気持ちで作るんだと思うんですよ。で、それがつながっていくんですよ。連鎖的に。
(赤江珠緒)うん。
(町山智浩)それで、日本って世界で二番目の経済大国になっていったと思うんですよ。戦後。ただ、この『重版出来!』っていうのは、それが崩壊した後の世界っていうものをテーマにしているんですよね。
(赤江珠緒)ああー。
(町山智浩)で、セリフの中で「もうバブルの頃とは違うんだよ」っていうのが何度も何度も出てくるんですよ。
(赤江珠緒)そうですよね。本屋さんも厳しかったりね。バブル崩壊後の世界
(町山智浩)そう。「バブルの頃はあんなにみんなであったかくものを作れていたのに……」っていうことがあって。で、たとえば「コミックの初版部数はいまは5千部が限界だよ。普通だよ」っていうセリフが出てくるんですね。
でもね、それだと作者に入る印税っていうのは20万円なんですよ。
(赤江珠緒)ええーっ! そうか。5千部で。
(町山智浩)これ、生活できないですよ。でも、いま電車に乗っても、誰も漫画も本も読んでいない時代だから、しょうがないですよね。だからこのバブル崩壊から26年間、ずーっと撤退戦なんですよ。出版とか、映画も、テレビも、ラジオも。音楽業界も、家電メーカーも。
26年間、ずーっと撤退戦を続けて、ギリギリで耐えているんですよね。で、「クールジャパン」とか言ってるけど、ふざけんじゃねーよ、バカ!って思いますけど。
(赤江珠緒)本当だなー(笑)。
(町山智浩)いま、日本映画はヒットしても30億円を超えるのは年間に数本しかなくて。通常は15億円でヒットって言われているんですよ。これ、制作費5億円が限界ですよ。
(赤江珠緒)そうですよね。うん。
(町山智浩)下手なテレビ以下なんですよ。日本の映画って。こんな撤退戦の中だから、余裕がないから、どんどんひどくなっていってるんですよ。制作の現場がね。
かつての、仕事によって心と心が密接につながっていく擬似家族的な関係っていうものも、仕事の倫理とかも、もう本当に痩せ細っていって。もう枯れてしまっているんですよ。現在、日本って。
だから、僕なんかたとえばいま、記事を書いていますけども。メールのやり取りだけで、1回も顔を合わせたことがない編集者とかいっぱいいるんですよ。
(赤江珠緒)はー!
(町山智浩)で、原稿を送っても、なんの内容に関してのコメントもないまま、いきなり打ち切ったりね。
(赤江・山里)ええーっ?
(町山智浩)まあ、講談社ですけどね(笑)。あと、単行本の装丁のデザインを僕に見せないまま出したりね。
(赤江珠緒)ええーっ!?
(町山智浩)だから要するに、描き手とのつながりが作れない状態になっちゃっているんですよ。編集者とかが。でも、その頃の講談社っていうのは10年以上赤字が続いて、慢性的な経営危機にあったから、余裕がなかったんだと思うんですよ。
(山里亮太)なるほど。
(町山智浩)でも、いま現在、仕事の場における人間関係って荒野ですよ。荒野とか砂漠みたいになっているんですよ。ネットのせいもありますけど。
で、そういうのって人間関係全体が家族とか全てに向かって、日本全体に広がっていると思うんですよ。砂漠のような人間関係が。そこから生まれてきたのが、この『重版出来!』に出てくる永山絢斗くんなんですよ。
(赤江珠緒)ああー、そうですね。人に関心がないとかね。うん。
(町山智浩)そう。彼は親から捨てられて、誰ともつながらないまま生きてきて。友達もいなくて。人間の心が全くわからない、まさにそういったバブル崩壊後26年で生まれてきた人間なんですよ。
だから、彼の描く漫画には彼が抱えている、その圧倒的な孤独とか恐怖感とか絶望とか無力感がいっぱいなんですよね。
(赤江珠緒)うんうん。
(町山智浩)で、それはたぶんバブル崩壊後に生まれたものにしかわからない苦しみなんですよ。
でも、それを彼は上手く表現できないんですけども、彼の表現を助けたのは、その漫画作りの家族的なつながりなんですよね。現場の。で、そこで彼にはずっと家族がいなかったけど、ここで家族が初めてできるじゃないですか。
(山里亮太)あ、そうだ。
(町山智浩)その力によって、その支えで彼はそのずっと抱えてきたものを表現できるんですよ。それで、いまの滅びかけている出版っていうものを復活させることができるかもしれないっていうのが、たぶん今回の最終回になると思うんですよね。
(赤江珠緒)はー!
(山里亮太)そうなんだ! そういうテーマだったんだ。
(町山智浩)まあ、勝手に考えています。僕が。はい(笑)。最終回、まだ見てませんけども。でも、ねえ。講談社も諫山さんが復活させましたからね。『進撃の巨人』一発で講談社は立ち直りましたからね。
(赤江珠緒)そうですよね。
(町山智浩)だからたぶん、現場はガタガタになっているけども、いま現在の日本が抱えている苦しみみたいなことを表現することで、もしかしたら日本自体も再生できるのかもしれないという、ここもね、勝手に見てますが。勝手ですが、はい(笑)。
(赤江珠緒)へー!
(町山智浩)まあ今日の最終回、全然違う話になったら、「町山、バカじゃねーの?」ってなると思いますけども(笑)。
(赤江珠緒)それはちょっとわからないですけどね。
(山里亮太)「エンペラー倒したぞー!」で終わったらね(笑)。
(町山智浩)そう(笑)。そういうね、感じがするんですけど。まあ、本当にいろいろと考えさせられる、素晴らしいドラマだな思っていますね。
[引用/参照/全文:http://miyearnzzlabo.com/archives/38198]
重版出来、月スピ 創刊からずっと読んでます。…子熊ちゃん可愛いwww
このワクワクは、寄生獣以来かもしれない。