漫画原作者の狩撫麻礼(かりぶ・まれい)さんが2018年1月7日に亡くなった。小学館が運営するウェブサイト「ビッグコミックスBROS.」などが伝えた。70歳だった。死因などは明らかにされていない。葬儀はすでに近親者で行われたという。
インターネット上では惜しむ声が相次いでいる。
1947年生まれ。1979年に漫画原作者としてデビューした。「狩撫」の名前以外にも、「カリブ・マーレィ」「土屋ガロン」「ひじかた憂峰」など複数のペンネームを使用して活動していた。ハードボイルドな作風で知られる。
「ビッグコミックスBROS.」は、
「狩撫氏はかわぐちかいじ、谷口ジロー、池上遼一、弘兼憲史、かざま鋭二、浦沢直樹、中村真理子、松本大洋ら小学館でおなじみのそうそうたるメンバーとタッグを組み、ビッグ各誌誌上に作品を発表されました。謹んでご冥福をお祈りいたします」
と哀悼の意を表している。
映画やドラマ化された作品もあり、故・松田優作さんが主演・監督を務めた1986年公開映画の同名原作『ア・ホーマンス』(画・たなか亜希夫)をはじめ、『湯けむりスナイパー』(画・松森正)は遠藤憲一さん主演でドラマ化(テレビ東京系、2009年)、『リバースエッジ 大川端探偵社』(画・たなか亜希夫)はオダギリジョーさん主演でドラマ化された(テレビ東京系、2014年)。
また、『ルーズ戦記 オールドボーイ』(画・嶺岸信明)を原作とした韓国のパク・チャヌク監督の映画「オールド・ボーイ」(2003年)は、2004年にカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞している。
2018年には『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』(画・いましろたかし)を原作とした山下敦弘監督、山田孝之さん主演・プロデュースの映画「ハード・コア」が公開予定だ。
「もっとも僕の人格に影響を与えた人でした」
インターネット上では業界関係者やファンからの追悼コメントが相次いで書き込まれている。
狩撫さんと「劇画村塾」の同門である漫画家の山本貴嗣さんは、「ご冥福をお祈り申し上げます」のツイートとともに、狩撫さんをモデルとした「狩魔無礼」の画像を投稿した。自身の漫画『最終教師』に登場するキャラクターで、
「当時ご覧になった狩撫先生ご本人も笑っておられました。三十数年昔になります」
と懐かしんだ。そのほかにも狩撫さんとの思い出を綴っている。
ツイッターには、狩撫さんの作品を愛読していたファンからも、
「もっとも僕の人格に影響を与えた人でした」
「あなたの作品に命を、魂を救われました」
「『ボーダー』は、まだ青かった時の自分にとってはバイブルみたいなもんだったんだ」
「色んな偉大な文人の人の本とか読んだりしたけど、狩撫先生の言葉は誰よりもスウッと入ってきた」
など、自身の思い出や思い入れなどとともに、死を惜しむ声が寄せられている。
『リバースエッジ 大川端探偵社』を漫画雑誌「漫画ゴラク」で連載していた日本文芸社は、15日公式サイトで訃報を伝えるとともに、未発表の原作を順次同誌に掲載予定であることを発表した。
[via:https://www.j-cast.com/2018/01/16318765.html]
知らない世代に読んで欲しい
バブル絶頂に無職の男たちの物語
そんな狩撫先生の名前を初めて聞いたという人は、『迷走王ボーダー』を読んで欲しい。
連載当時(1986~89年 漫画アクションで連載)はバブル期真っ盛り、テレビではトレンディドラマと、多額の予算を割いたバラエティ番組がバンバン放送されていた。
「不景気」という言葉とは無縁の時代と言ってもいいだろう。
その羽振りの良い時代に登場したこの作品の主要人物は、海外放浪を経て日本の安アパートに住む無職の男たち。ことに主人公格の蜂須賀は、家賃をまともに払うことができないので共同トイレを部屋代わりに過ごしていた。
何もかもぶち壊す
登場人物がムチャクチャなら物語もハチャメチャ。今読み返しても、この後どうなってしまうんだ!? という展開の連続。「既成概念」や「世の中の常識」をことごとくぶち壊して、読者の心にさまざまな疑問を投げかけてくる。
価値観とは何か? 豊かさとは何か? 生きるとは何か?
答えのある疑問ではないのだが、ガムシャラに突っ走る蜂須賀の姿を通して、読者は自らの人生や価値観について考えさせられたと思う。
今だからこそ
今は、バブル期の頃とはまた違う意味で、豊かさや価値観について問われている時代ではないだろうか。就職や転職に頭を悩ませている若い人も多いと思う。
また将来に不安を抱えている人は、何も若者だけではないはず。そんな人たちにぜひ『迷走王ボーダー』を読んで欲しい。作品を通して、豊かさや自由について何か見えてくるはずだ。改めて狩撫先生のご冥福をお祈りします。
[via:https://rocketnews24.com/2018/01/15/1008002/]
ネットの反応
・ボーダー面白かった。
あの時代ならではの作品でした。
・ずーっと人気があったんだって再確認
・「無為こそ過激。なんにもしないでブラブラ生きてんのは本当は一番の力技なのさ」
・ギィルティとか懐かしいなあ
・カリビアンコムさん…
・漫画家と違って原作者はそれなりに長生きな印象あったけどなあ・・・
・まじかよー。もうゴラクでリバースエッジ読めないのか。
・青の戦士、持ってたのにどこかにいっちゃったんだよ
>谷口ジローも往っちゃったんだよなあ
・一時期ブルハに心酔してた人だな
・合掌 生きる意味がわからなくなった時ボーダーに救われました
・蜂須賀ならなんて言うんだろう
・でも「ネオ・ボーダー」っていまいち何をしたかったのか分からない続編だったな
・あの暑苦しくて青臭い作風好きだったわ
久々にLIVEオデッセイやナックルウォーズ読み返すか
・大友克洋の読み切り一本原案やってるんですよね。
「East of The Sun, West of The Moon」って題。
・別に有名にならなくても、カッコいい生き方をすることはできる
ということを教えてくれ、沢山の人に勇気を与えてくれたと思う
・狩撫麻礼と土田世紀のいない世界よ
「狩撫麻礼の作品に影響を受けた」と言えるような人生を送りたい
と思いながら残業している「あちら側」の人間
・あまり言及されない珍作「Astral Project 月の光」(marginal 名義)。
なんかもう途中からすごいことになる珍作。
・忌野清志郎が亡くなった時と同じような気分。
・「少女ネム」の続きが永遠に読めない世界線に入ってしまったか…。