チリの落盤事故で2番目に救出された“スーパー・マリオ”こと、マリオ・セプルベダさん(40)がこのほど英紙サンデー・メールのインタビューに応じ、生存が確認されるまでの「暗黒の14日間」を語った。奇跡の生還を果たした作業員33人は「沈黙の契約」を結び、地下で起きたことをしばらくは話さないと決めていたが、ホモ疑惑やカニバリズム(人食い)などの噂が流れていることから、「真実を語ることが必要」と判断したという。
◆運命の日
8月5日 ランチを取るため全員が地上に戻る昇降機のそばに集まっている時、大きな落盤が起きた。
「もし地下の坑道に散らばっていたら助からなかっただろう」とマリオさんは病院のベッドで語った。だが、そこから「真っ暗な地下の墓場で絶望と戦う日々が始まった」という。
◆パニック
シェルターに避難した33人は脱出ルートを探す一方、役割分担を決めた。
33番目に救出されたルイス・ウルスアさん(54)がリーダーになり、ツナの缶とラジエーター用の油で汚れた水を分け合った。
「シェルターの中を常に清潔にすることが大切だった。
穴を深く掘って排便し、たまるとドラム缶に詰めて砂をかけてフタをした。何かを決めるときは多数決で決めた」
「パニックになる者もいた。
毎日誰かがおかしくなり、それが治ると別の人間がヒステリーになった。
全員が何か役割を果たし、常に忙しくしていること、救出されると信じ続けることが大切だった」
◆ユーモア
子供のころからジョーク好きだったマリオさんは道化役を買って出た。
常に人を笑わせ、険悪なムードになることを防いだ。
「自分が泣きたい時はシェルターを出てトンネルの中で1人で泣いた。道化師が人前で泣くのはおかしいからね」
◆最悪の時
10日目、地下の雰囲気が最悪になった。全員を餓死の恐怖が襲った。
「起きたら、険悪なムードになっていた、そこで私は弱々しい声で皆を呼び、“おれはもう死ぬだろう。
家族に、おれがどれほど愛していたかを伝えてくれ”と言って息を止めた。そして、もうこれ以上息が続かないとなった瞬間、大声で笑ったんだ。皆、怒ったよ。
でもあとで聞くと、あの瞬間から皆は“死ぬならグループで、尊厳をもって死のう”と決意したらしい」。その後、それぞれが遺言を書き始めた。
◆セックス
「おたがいの妻の話をしたことはあるが、真剣にセックスの話をすることはなかった。
それを話すこと自体、あの状況下では痛すぎることだった」とマリオさん。噂されているホモ疑惑は、もちろん否定。
カニバリズムについては「もっと長い時が経てば、そういうことがあったかもしれないが、そんな事態にはならなかった」という。
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