Toshl
カルト集団に絡め取られたロックスターによる赤裸々な告白本だ。同時にカルト問題を世に啓発する本でもある。
狡猾な手口でカルト集団に全財産を奪われ、自己破産にまで追い込まれたToshl、稀代のボーカリストが遭遇した凶悪カルトの実態が赤裸々に記されている。
Toshl本人が著書の中で『カルト詐欺集団』と呼ぶホームオブハート(HOH)に、身も心も搾取され続けた12年間は想像を絶する過酷なものだった。
洗脳騒動の際、Toshl本人の周辺では何が起こっていたのか?著名人が絡んだカルト問題としてだけではなく、他人を操る卑劣なカルト集団の手口が判る本だ。
著書の中でToshlは、HOHのMASAYAこと倉渕透や妻(当時)の守谷香から受け続けた罵倒や暴力に関し、時系列に沿って詳細に記している。
1993年のロックオペラ"ハムレット"で共演した守谷香との"出逢い"がToshlをカルトへ引きずり込む呼び水だった。守谷の"手引き"でMASAYAの下へと導かれたToshlはMASAYAに傾倒、段階を踏んだセミナーにより身も心も支配されていった。
著書には、セミナーの中で記憶を歪められ家族への憎悪を植え付けられたToshlが、MASAYAに支配されていく過程が克明に記されている。
X JAPANからの脱退、解散、HIDEの死、世間を賑わせた騒動の背後でToshlはMASAYAと守谷の恐怖支配の下で喘ぎ苦しんでいたのだ。消費者金融からの多額の借り入れ、全国津々浦々を巡るドサ廻り、組織のロボットとして酷使され続ける日々、人間関係をズタズタにされたToshlは奴隷として金を稼ぎ続けた。
Toshlの稼いた金で贅沢な暮らしをするMASAYAと守谷香。巷で言われているような「ToshlはMASAYAに妻を"寝取られた"」ということではなく、最初からToshlを狙ってMASAYAが守谷を派遣したのではないかとの疑いも著書内には示されている。
1998年、Toshlの洗脳騒動がマスコミを賑わした。2004年には、HOH内で日常化していた児童虐待が告発され社会問題となった。HOH被害者からの民事訴訟やHOH側からの名誉毀損裁判、Toshlは当事者として否応なく訴訟合戦に巻き込まれていった。
2006年には、X JAPAN再結成に絡んだ利権にもMASAYAが首を突っ込んできたという。
そんな強欲なMASAYAが2008年、東京高裁法廷で行なわれた民事訴訟の証人尋問を受けた。その際に法廷で見せた情けない姿にToshlは疑念を持ったという。
2009年、長年に渡る過酷な奴隷生活により体調を壊したToshlは、MASAYAと守谷の支配環境からの逃亡を決意し実行する。一旦は連れ戻され監禁されたものの協力者の助けもあり脱出に成功、代理人を立てHOHとの縁を切った。
2010年1月18日、Toshlは「MASAYAとの決別」「守谷との離婚」「自己破産」について記者会見を開いた。
会見がきっかけとなりHOHの被害者と邂逅したToshlは同年4月23日、被害者団体とともに共同記者会見を開いた。この共同記者会見には本紙取材班も出席した。
今もToshlを広告塔にした勧誘を続けているというHOH
「勧誘の手を広げてゆく彼らの常套手段を絶対にやめさせなければならない」
Toshlは著書を出版した理由を綴る。
帯にはこうも記されている
「二度と僕のような犠牲者をださせないために、今、マインドコントロールされ苦しんでいる人とその家族のために、僕はすべての真実を、今、語る」
Toshlは本の末尾に記した
「人はどんな時でもやりなおせる」僕はそう信じている
関係者によると、この本の企画に際しては、出版社からToshlに持ちかけたわけではなく、Toshlの方から出版したいとして版元を訪ねたそうだ。
カルト問題に絡んだ人権侵害を追及し続ける弁護士として知られ、同書のあとがきを記したリンク総合法律事務所の紀藤正樹弁護士は筆者に語った。
「著名人としてこれだけのことを書いた人はいない。普通は書けない。敢えて実名で書くことで名誉棄損の裁判を起こされることも危惧されるのに、よく書いてくれた。この本を作ってくれただけでも尊敬に値する」
HOHの脱会者で、MASAYA・MARTHこと倉渕透グループの問題を考える会(旧、ホームオブハートとToshi問題を考える会)の山本ゆかり代表はToshlの著書を読んだ感想を以下の様に話した。
「同じ脱会者としてToshlが体験してきたことを改めて読むのは胸が苦しくなる様な気持ちだった。当時を思い出すこともあり、いろんなこの10年も思い出した。これを書くのはとてもしんどくて苦しくて辛い作業であったことは私たちには想像がつきます」
カルト被害の救済に取り組む山本代表はこう付け加えた。
「最後に『やり直せる』と書いてある。いい言葉で締め括ってくれた。12年カルトに居ても辞められる。他のカルトの脱会者にも励みになる」[カルト新聞]
http://dailycult.blogspot.jp/2014/07/x-japantosh1.html
■HOH脱退も「無限の洗脳地獄」の可能性
インタビューを読んでひっかかる部分が3つある。
まず、洗脳時代に"TOSHI"名義のCDを作ったことなどから、10年の脱洗脳会見以降"Toshl"(lはエルの小文字)に改名したこと。
もう1つは、インタビュー中、昨年オーガニックの野菜などを売っている店で、HOH主宰MASAYAの作った歌が流れていたことをToshl自身が語っていることだ。そもそもHOHではセミナーなどで、"オーガニック"を1つのキーワードにしていたが、まだオーガニック信奉があるのか。
さらにToshilの脱・洗脳を手伝ってくれたという人物の存在だ。ToshlはHOHからの脱出を手伝ってくれた知人に連れられて、山中にある一軒家に行ったのだが、そこで1人の人物と出会ったというのだが――
「(その人物は)見ず知らずの僕をかくまってくださったのです。"お父様"と呼んでいますが、その方との出会いはまさに奇跡でした」
と語っている。MASAYAから逃げたその先で、自分を匿ってくれた人物を"お父様"と呼ぶ。そして彼との出会いは"奇跡"であり、"お父様"に関しては異常なほどの丁寧語を使うToshl。
改名、オーガニック、お父様、奇跡――Toshlから発せられるのは、洗脳セミナーや怪しい宗教、マインドコントロールに共通するキーワードや考え方、志向性だ。本当に洗脳から解けたのか?
一度洗脳された人にありがちだが、1人の教祖からの呪縛が解けると、それを解いてくれた別の教祖へ依存し、信仰対象を代えただけなどといわれるが、なんだかToshlもそのパターンではないかとの疑問が浮かんでくる。
もちろんこのインタビューを読んだ限りだし、脱・洗脳の達人たちが周囲にいるから大丈夫だと思いたいが、しかし。そんな危惧を抱いてしまった不安だらけのToshlの「脱・洗脳本」宣伝インタビューだった。[サイゾーウーマン]
http://www.cyzowoman.com/2014/07/post_13055_2.html
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作曲家かと思った