あなたが、サッカー協会に登録されているプレイヤー(プロは言うに及ばず、18歳以下の第2種、15歳以下の第3種、12歳以下の第4種、女子サッカー、40歳以上のいわゆるシニア層、もしくはフットサルに興じる個人登録もすべて含む)なら、ちょうど4年前の今頃を思い起こして欲しい。
2008年の2月1日から、4月までの間にケガや持病の治療のために手術や静脈注射をした方は日本中に何人くらいいるだろうか。なぜ、こんなことを問うのか。それは当時、日本サッカー協会内でとんでもない医事規程変更(JFAドーピング新規定発効)が行なわれていたからである。
結論を言うと、この3カ月の間で上記の治療を受けた方たちは医師も本人も知らないうちに全て潜在的なドーピング違反者にされていたのである。
当時のJFA医学委員長はこの2008年2月1日から、FIFAのドーピング規定にもFIFAが受け入れているWADA(世界アンチドーピング機構)の規程にも無い世界でも稀(まれ)なローカルルールを発効したのである。
その内容は「日本サッカー協会に登録する全ての選手に治療から48時間以内に診断書およびTUEの提出の義務」というものであった。「TUE」をご存知だろうか。ドーピング規程に引っかかる禁止薬物や禁止方法を選手がどうしても治療のために使用せざるをえない場合に、事前に申請し承認を受ける除外措置のことである。
これは本来、FIFAの国際大会に出場し、ドーピングテストを受けるようなトップレベルの選手が対象となるものである。ところが、かような特殊な措置を医学委員長はJFA全登録者、すなわち小学生、中学生、高校生、女子、フットサル、ビーチサッカーの全選手に義務化してしまったのである。
JFAの登録者数は推定で約100万人弱と言われているが、果たして何人がこの事実を知っていたのか。いったい何人が治療を受けたあとにTUEを提出しただろうか。否、それ以前にTUEの存在を知っていただろうか。私が手当たり次第に聞いた協会関係者も学校の校医も誰ひとりとして知らなかった。地方のサッカー協会長などは絶句するばかりであった。
しかし、当時の規程ではこの場合、第4種に属する小学生も48時間以内にTUEを出さなければ、ドーピング違反にされたのである(事実、ドーピングコントロール委員会では「子どもでもドーピングになる」という説明がなされていた。この場合、治療した学校や小児科の医師などもドーピング幇助で永久追放になる)。
これなどはほんの一例である。その間のサッカー界における医療の混乱は極めて大きかった。
当時、医学委員長は2007年に正当な医療行為を受けた川崎フロンターレ(当時)の我那覇和樹選手を、規定を誤って適用しクロと裁定していた。自らがクロと裁定した判例を正当化するために、詭弁と詐術を弄し、さらにはそれを補完するようなローカルルールを発効していったのである。
その状態はドーピングコントロールでは最も進んだ日本の陸上競技のアンチ・ドーピング委員が「サッカー界のドーピング規程はまるでガラパゴスだった」と嘆くほどに、世界標準から遊離していたものだった。結果、当時はJリーガーとドクターたちがドーピング冤罪の恐怖に晒されて正当な治療を行なえず、手遅れになりそうな選手が続出したのである。
彼が何千万円もの私財を投じ、他の選手を巻き込まずにたったひとりでCAS(国際スポーツ裁定裁判所)に提訴をしたのは、自身の名誉のためだけではない。こんな被害は自分だけで食い止めなくてはいけないという思いだった。結果、我那覇がCASで勝った意味はとてつもなく大きかった。
先述の委員長は「国際大会で点滴の道具を持っていただけでドーピング違反」とも(公的な事情聴取の場で)発言していた。ならばW杯で日本代表選手だけが、体調を崩しても点滴治療ができず、試合どころではなかった。もしも我那覇が立ち上がっていなかったら、JFAの正当な医事改革は行なわれず、代表の南アW杯の決勝トーナメント進出もなでしこジャパンの世界一も成し遂げられていなかったかもしれない。
その意味で我那覇の行ないはW杯でゴールを決めるよりも崇高な貢献であった。
結果的に選手の人権と健康を守り、日本サッカーを救った男は、現役選手として故郷・沖縄で前を向き続けている。我那覇はCAS裁定以降、一切、事件については口を閉ざしてきた。後悔の言葉も、いわんや誰かを批判するようなことも微塵も言わない。選手としてピッチの上で支えてくれた人たちに恩返しをするという彼の意思を尊重し、この物書きはピッチの上の彼を伝えるものである。
[webスポルティーバ]
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20120213-00000306-sportiva-socc
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この問題ってサッカー会においては大きな問題なんだけど、マスコミやテレビにあまり報道されなかったのは圧力のせいか。
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本当チューバッカ