先週、ブラジルに行ってきた。W杯に向けたインフラの整備やスタジアム建設の遅れが日本でもニュースになっており、日本のファンもやきもきしているだろうけど、当地に赴いた実感として、まだまだブラジルはW杯モードじゃないね。


セルジオ越後

メディアも街も静かなものだ。6月のW杯よりも、今は3月のカーニバルのほうに気持ちがいっている。サッカー文化が良くも悪くも浸透している国だから、放っておいても6月が大盛り上がりになるのは間違いないが、インフラ整備やスタジアム建設はちゃんとやってくれと願うしかないね。

ブラジル滞在中に感じたことの一つに、日本とのスポーツ番組のテイストの違いがある。例えば国内リーグの試合後に放送される討論番組では、1時間たっぷり、延々と激論が交わされる。番組時間が突然延長されることもザラ。

きわどいオフサイド判定があろうものなら、そのシーンを何度も何度もリプレーしながら、ああでもないこうでもないと騒ぐ。批判的な時は、辛口なんていうレベルを超えているよ。とにかく本音なんだね。

翻って日本は、ハイライト番組と応援番組が主で、コメントは本音よりも建前だ。采配ミスや判定ミスがあったことは、思っていても口に出さない。Jリーグや日本代表のニュースで、きわどいオフサイドシーンに触れられることがあるだろうか。

臭いものに蓋、触らぬ神に祟りなし、という言葉がある国民性からか、どうもそういう話題は奥に押し込めてしまうよね。議論をして相手に意見を言うと、その相手のことを嫌いなのかと思われてしまう。これじゃあ議論にならないよね。

もう一つ、日本のスポーツ報道は、そのスポーツそのものよりも周辺のドラマ性ばかりに注目する。延々とサイドストーリーが語られる箱根駅伝もそう。

浅田真央の快演で感動を呼んだソチ五輪のフィギュアスケートにしても、プレー分析やライバルとの採点の付き方の比較といった、競技そのものについての言及はほとんどなく、とにかく感動ストーリーだけが拡散される。なぜもっと議論しないのか。

日本人はやはり元来争いごとが嫌いなのだろうか。本音100%のブラジル人のトークがすべてではないけど、日本ももう少し競技そのものを論じる土壌が広がれば、文化として根付いていくと思うのだけど、それが根付くのとブラジルのスタジアムが完成するのとどっちが早いだろうね。[Soccer Journal]
http://news.livedoor.com/article/detail/8567677/

■作られた物語でなく競技そのものの感動を

創作物としての映画やドラマが溢れかえるこの現代で、なぜ人はスポーツにそこまで「物語」を求めてしまうのか。それはスポーツが、誰かの描いたストーリーに沿った創作物ではなく、人為操作のない「天然」の「物語」だからではないか、と思っています。

フィギュアスケートはあまりにも華やかな見かけであるせいか、数あるスポーツの中でも、そんな「天然の物語」を求める人を惹き付けやすい側面があるのかもしれません。メディアとしても、舞台として扱いやすい部分があるのでしょう。現在の日本は世界でもトップクラスの実力を持つ選手が多いだけに、物語を創り上げやすいのではないかと思います。

人々が選手たちの背負った物語に感銘を受ける。これは何も間違った事ではなく、そんな物語が彼らの演技を彩る点があるのも事実です。

しかし、そんな彼らの物語が演技に影響するのは、彼らがその物語を演技に昇華させ、演技に反映させるからでしょう。観客が過剰にストーリーを被せ、評価に繋げるのは、行き過ぎになりすぎると危険だと思っています。

映画のようなストーリー、その登場人物や主役のような選手たちに思い入れるあまりに、フィギュアスケートがスポーツ競技である事を忘れてしまう時はないでしょうか。

「物語」の観客でいるうちはまだいいのですが、そこに「己が望む物語」を期待しすぎて、己の中でいつしか「主役」の選手を決め、望んだ展開や結末を否定する、そんな状態に陥ってしまっている人が、時折見受けられるように思うのです。

数ある選手の中で贔屓の選手、お気に入りの選手がいるのは当然です。でも、そうではない選手を悪者のように解釈してしまうのは、明らかに「物語」を自分の中で「創造」してしまっていると言えるのではないでしょうか。

それは「天然の物語」を求める側にとっては矛盾であるはずなのに、物語への感動を求めるあまりに、矛盾に気づかない人が出てきてしまう。それを、昨今のフィギュアスケートを巡る報道や、市井の人々の反応に感じてしまうのです。[goo]
http://news.goo.ne.jp/article/gooeditor/sports/gooeditor-20140212-01.html

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