他方で投手陣も左腕エースの内海哲也が開幕から勝てず、昨年、優勝に貢献した西村健太朗、山口鉄也、スコット・マシソンのリリーフ陣も不調に。投打とも噛み合わず優勝に導いた今シーズンの原監督の采配は解説者の目にどう映ったのだろう。
まず、今シーズンの巨人を語る上で外せないのが、毎試合のように名前が入れ替わった打線である。原監督は今季ここまで(9月26日現在)137試合で106通りの打線を組んだ。これについて飯田哲也氏は次のように語っている。
「今にして思えば、調子の上がらない選手が多い中で、原監督はいろんなことを試していたのかなと思います。選手にいろんな打順を打たせて、今シーズンの適正打順を探していたのではないでしょうか。
後半戦になり、打順が固定されると勝ちも増えていったんです。僕が言うのも失礼ですが、原監督は目の前の一戦というより、1年を通した戦いに徹していたと思います。奥深さを感じました」
与田剛氏も同じ考えである。
「どうすればチームが機能するか、それを第一に考えたのでしょう。選手の状態を見て、どの打順ならいい結果を出せるのかを探していたようです。
もちろん、打順を動かさないという選択肢もありますが、原監督は動かすことを選びました。その決断も早かったですし、最後まで徹底していた。」
そんな中で山崎武司氏は「原監督は打線が"線"としてつながるようにいつも考えていた」と評価したが、「選手の立場を考えると、厳しい采配だったと思う」とも語った。
特に目を引くのが4番で、阿部の52試合を筆頭に、村田44試合、セペダ18試合、アンダーソン14試合、長野久義6試合、高橋由伸2試合、ロペス1試合と、実に7人もの選手が4番を務めた。その上これらの選手はそれ以外の試合で、7番から9番の下位打線に置かれることもあったのだ。
「4番から下位に回されるのは、正直、選手としては気分が悪い。『じゃあ、打って結果を出せ』と言われるのもわかりますが、4番打者に対しては『お前を信じていくしかない』という構えが欲しいですよね。
結果的に優勝しましたけど、僕は『あまり打線を動かさすべきではない』と思っています。もしかしたら、打順を固定した方がもっと楽に勝てたかもしれないですよね。ただ、勝ったということは、それが正解だったんです」(山崎氏)
打線の不調の中、投手陣はチーム防御率3.62とリーグトップの成績を残している。しかし、リリーフ陣に限っていえば防御率4.08と昨年の2.57から大きく下降。試合終盤に追いつかれる場面も多くて、チームの不調の原因となった。
ヤクルトの小川淳二監督は、今年の巨人について次のように語る。
「去年のような絶対的な強さは有りませんでしたが、勝負どころでの強さがありました。印象に残っているのは8月19日の試合。
調子が良くなかった阿部に延長で勝ち越しのホームランを打たれたのですが、そういう勝負どころでの強さが今年の巨人にありました」
与田氏も、小川監督と同じように感じたという。
「リリーフ陣の防御率が4点台と下降しましたが、たとえばリードした場面で登板しても同点まではOKという指示があったと思います。
それは、接戦に持ち込めばなんとかなるという考えが原監督にあり、特に試合終盤になれば鈴木尚広という足のスペシャリストや、高橋由伸という代打の切り札がいます。
彼らが登場すれば、1点を取りにいく合図というか、スイッチが入ったように得点しました。そして、そのスイッチを入れるタイミングが絶妙です。
今までのように投打で圧倒するという試合は少なかったですが、接戦に負けない本当の強さがありました。」
この勝負どころでの強さという観点から見た時に外せないのが、リーグ最少の失策数(67個)と、リーグトップの盗塁数(98個)だ。
さらに、その盗塁に関してはリーグトップの成功率(79.0%)である。飯田氏は「原監督の作戦が確立されていた」と語っており、こう説明した。
「たとえば無死一塁の場面で、巨人ベンチは相手投手のクイックの時間を計って、この走者でこのタイムなら成功しやすいと判断すれば、盗塁のサインを出している。
それから送りバントで一死三塁に。ランナーが三塁にいれば、犠牲フライ、暴投、内野ゴロなど、得点になる確率が一気にアップします。
それに相手チームが『巨人は走ってくる』と意識すると、どうしてもストレート中心の配球になります。そういうところをうまく利用しながら戦っていた印象がありました。
守備ではひとつのアウトを確実に取るプレイが多かったです。イチかバチかでダブルプレイを狙うこともあるけど、今年の巨人に関しては絶対に無理をしませんでした。それもチームの共通認識として徹底されてましたね」
巨人OBの槙原寛己氏に今シーズンの戦いを振り返ってもらうと、「選手の自立がもたらした優勝」と言う。今年はシーズン中に2度もコーチの配置転換が行なわれ、危機的なチーム状況に陥ることも。
「今年の巨人は投打ともにかみ合っておらず、Bクラスになってもおかしくない状態だった。シーズン途中でコーチを配置転換したのは、選手たちに危機感を持たせる意味で良かったでしょう。
少なからず、選手は責任を感じているでしょうから。ただ、これは選手たちが自立していたからこそできたのであって、そうでなければチーム内に不安が広がってしまう。
強いチームというのは、選手自身が勝負どころを理解しており、何をすべきかわかっている。巨人については、昨年までの2連覇が大きな自信になっているでしょう。そして、これらの選手を育てたのは、間違いなく原監督だと思います」
そして与田氏は、今年の原監督の采配について次のように総括した。
「僕は2009年のWBCで原監督のもと、コーチをやらせてもらいましたが、印象に残っているのが決断力の早さです。
監督というのは、ゲームの中で瞬時に判断しなければいけないことがたくさんある。継投や代打。その時に、ワンテンポ遅れてしまったために取り返しがつかなくなることがたくさんある。
その決断する早さはどこから生まれてくるのかといえば、情報力なんです。監督はチームのことをすべて把握できません。
それぞれの担当コーチが選手の状態を監督に伝えて、その情報をもとに監督が判断を下します。決断するのが早いということは、しっかりコーチが選手ひとりひとりの情報を把握し、監督に伝えていたということでしょう。選手個々の力はもちろんですが、組織としての強さも感じました」
今年の戦いぶりに「巨人らしさがない」という人もいるが、どんな状況でも勝ち抜く強さが今の巨人にはある。そして、その先頭に立つのが原監督だ。
気の早い話だが、もし来年、原監督率いる巨人が優勝すると、巨人軍の監督として史上2番目の優勝回数(8回)を誇る水原茂氏に並ぶ。そしてその先にはV9時代の巨人を率いた川上哲治氏の11回が待っている。原監督の挑戦はまだまだ続く。
[引用/参照:http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/2014/09/27/v_2/]
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ハラハラしたシーズンだった。日本シリーズは広島とオリだな。
今年に限って言えば、巨人が強かったというより他のチームが勝手に自滅したってとこじゃね?
特に阪神の勝負所でのダメ虎っぷりは酷かった(笑)
中畑がGを采配したらBクラスだろね