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【ACL】韓国メディアもKリーグキラーに意気消沈 柏レイソルが敵地で逆転勝利!勝負強さの秘密とは

韓国側の「本気度」は相当なものだった。ホームチームの熱が伝わってくるゲームは最後まで行方の分からない、緊迫感あふれる好勝負になった。

19日、AFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)のラウンド16初戦に挑んだ柏レイソル。アウェーで激闘の末、水原三星に3-2と先勝した。これにより5月26日のホーム第2戦では敗れてもスコア次第では勝ち上がりが決まるという有利な状況をつくった。

柏レイソルが敵地で逆転勝利

試合当日の韓国現地のメディアには、こんな見出しが躍っていた。

"水原、Kリーグキラー柏もこじ開ける"(『スポーツ朝鮮』)

鄭大世(チョン・テセ)とベテランのレフティー、ヨム・ギフン(2010年南アワールドカップ韓国代表)のコンビネーションで柏に勝つのだと。すでに「キラー」との呼び名が定着しているあたりに、柏への警戒ぶりがうかがえた。

「韓国最大のビッグクラブ」vs.「韓国キラー」。

当事者たる水原も「大マジ」。クラブ側がオンライン上でこんなキャンペーンを打ち、試合を煽った。

「韓日戦 敗れては満たされぬスーウォン・サムスン ある男の熾烈な復讐が始まる!」

"復讐"、とは2013年の同大会で柏と対戦し、ホームで2-6の大敗を喫したことをさしている。当時、ドイツのケルンから移籍入団直後だった鄭大世はPKに失敗するなど苦い経験を味わった。

また同じく当時就任1年目だったソ・ジョンウォン監督もこの時の雪辱に燃えていたと言う。2014年シーズン終了後、若手選手をクリスマス前から招集し、トレーニングを課した。すべては国内リーグより早く開幕するACLの戦いに備えてのものだった。

今大会、韓国から出場の4チームすべてが決勝トーナメント進出を果たし、19日、20日にラウンド16の初戦を韓国の地で戦う。そんななかで「韓国最大のビッグクラブ」vs.「韓国キラー」の対戦は注目度の高いものになった。

□ 肌寒さとは対照的な、激しい点の取り合い。

記録上の気温は21度ながら、日本から移動した身にはスタンドでの肌寒さが感じられた。平日開催のゲーム、約4万4000人収容のスタジアムは6164人と寂しい入りだった。このあたりは近年、プロ野球人気に押され気味のKリーグの実情がうかがい知れた。

しかしピッチ上では、それらを覆すような熱い戦いが繰り広げられた。柏のしたたかさ、水原のフィジカルの強さ、スキルが試合のエッセンスとなり、90分を通じ熱気の続くゲームとなった。

開始1分、左サイドに開いた鄭大世のセンタリングからヨム・ギフンに決めて水原が先制。しかし12分、レアンドロからの浮き球の絶妙なラストパスを茨田陽生がニアに決め同点。

レアンドロ PK 逆転さらに30分に得たPKをレアンドロが決め2-1と柏が逆転すると、後半に入った55分には右サイドからのセンタリングを再びレアンドロが合わせ3-1。

59分に鄭大世にダイビングヘッドを決められ3-2となると、ホームチームの次のゴールを求めるスタンドも一気に盛り上がっていった。しかしその後は柏が水原の猛攻を凌ぎ切り、終了のホイッスル。

敵地のスタンドを沈黙させた。『スポーツソウル』も「リベンジは果たせず」「(試合前にキープレーヤーと予想された)鄭大世、ヨム・ギフンがそれぞれ1ゴール1アシストと活躍も、逆転負け」と試合を伝えるほかなかった。

□ 試合の「入り」は最悪だった柏。

柏にとってゲームのポイントは2つあった。

まずは開始直後の不意の失点から、しっかりとチームを立て直した点だ。

試合の「入り」は最悪というべきものだった。ボランチの栗澤僚一は「ミスがあったし、集中力を欠いてしまった」と失点のシーンを反省した。

水原のFW鄭大世が柏DFに背を向けたままボールをキープ。そこから左足でのセンタリングを許し、ヨム・ギフンに中央で合わせられた。26日のホーム第2戦でも要注意となる2人のコンビネーションプレーだった。鄭はこのシーンをこう振り返った。

「ボールキープをする時、こちらが一瞬肩を落として、力を抜いた状態になった。その後即座にグッと力を入れてセンタリングを上げたから、柏の選手は次の展開は反応しづらかったのでは。

こちらとしてはヨム・ギフンとの意思疎通ができているからこそできたプレー。彼は僕がああいう状況でもセンタリングを上げることを知っているし、僕も彼が中に入ってくれることを分かっていた」(鄭大世)

□ 序盤の失点にも、なぜ慌てなかったのか?

しかし、柏はこの状況にも慌てなかった。スタンドから見ていても、黙々とやるべきことを遂行し、追いつき、逆転したという印象だった。「先制され、がむしゃらになった」という感じではない。栗澤が続ける。

「起きてしまったことは仕方がない、とすぐに割り切れました。ピッチ上の選手は落ち着いていましたよ。アウェーだったけど、慌てずに戦えば十分にやれると。そこのところでピッチの選手の気持ちは一致しましたね。

後ろ(DFライン)からつなぐべきところではしっかりボールをつなげましたし。慌てずに空いている選手にボールを預けてボールを展開していけば、やれるというところで」

吉田達磨監督も試合後には「先制された時間が早かったため、立て直す時間がしっかりあった」と振り返っている。

□ 柏は韓国のチームをいなすのが上手い

柏は韓国のチームをいなすのが上手い

ここで栗澤が言った「慌てずに空いている選手にボールを預ける」という言葉に筆者自身ピンと来た。グループリーグで対戦した昨シーズンのKリーグ王者・全北現代との戦いの際にも、柏の選手から聞こえてきた証言だったからだ。

これぞ、アジアの舞台での柏の凄みのひとつ。鄭大世はこんな証言をする。

「柏は『韓国のチームをいなすのが上手い』。そういった印象です。普通はこちらから体をぶつけていけば、攻撃の芽を潰していける。でも柏の選手はそれをちょっとしたターンや、ダイレクトパスでかわす。

そして縦にスッとくさびのボールを入れてくる。そうしているうちにプレスをかけているウチの選手が体力を消耗していく、という展開になった」

□ 水原の猛攻をしのぎ切った、柏の経験。

ゲームのもうひとつのポイントは60分以降にあった。

鄭は「体力を消耗した」といいながらも、水原は猛攻を仕掛けていた。徹底的にサイドに展開し、そこから柏DFライン目掛けてロングボールを幾度となく入れてきた。

柏はまるでどしゃ降りのクロスの雨を浴びるといった状況に。さらに水原は73分に長身FWカイオを投入し、2トップにして守備ラインに揺さぶりをかけてきた。

しかし柏はこれをじっと耐え抜いた。これも柏のこの大会での経験が生きたものだった。グループリーグ初戦の全北戦で「守り抜く」という展開を経験済みだったのだ。栗澤は、クロス攻撃の日韓の違いをこう説明する。

「日本だとクロスを上げる場合、確実にターゲットを目掛けて上げることが多い。『背の高い選手』だとか、『ファーサイドを狙ってくる』とか。だから対応がしやすい面がある。確固たるターゲットがないとむやみに上げてこないことも多いですし。

いっぽうで韓国チームのクロス攻撃の何が難しいかというと......『とにかくボールを蹴ってくる』という傾向がある点なんです。ターゲットがどうだ、という意識よりも『ゴール前で何かハプニングを起こそう』という意識を感じることが多い。

中にいる選手も『自分が捨て身になっても構わない』という感じで。これが逆に対応しにくいんです。つまり的が絞りにくい。とはいえ、ウチのチームはこれに対する経験から、対応ができています」

□ 「なぜKリーグに対して強いのか?」という質問が。

勝負強さの秘密は戦う気持ちの強さ

試合後の監督会見では、柏の吉田監督に対して、韓国メディアから「ドストライク」の質問が飛んだ。

なぜ、柏はKリーグ勢に対して強いのか。

吉田は答えをはぐらかした。「逆にKリーグ勢の強さを感じている。勝てたのはゴールを決めた時間帯がよかった、といった偶然が重なったこともある」と。さらに会見では「まだホームゲームが残っていて、チーム内の誰も"勝った"とは思っていない」という内容を繰り返した。

しかし、場面場面を切り取ると、そこまでのこの大会での柏の強さが垣間見えるゲームとなった。

速いパスワークでかわす。そしてぶつかるべき状況では徹底的にぶつかる。

この日も水原の猛攻を受けていた73分過ぎに、相手の鄭大世とシン・セゲの2人が同時にピッチに倒れるシーンがあった。柏の選手の強いチャージを受けた結果だった。まるで「テクニックの日本、力強い韓国」といったステレオタイプなイメージを変えるような風景だった。

□ 水原の選手に直接聞いた、柏が強い理由。

同じく試合後の選手取材エリアで、こちらからも水原の選手に聞いてみた。柏が強い理由は何かと。

「(グループリーグで水原が対戦し2勝を上げた)浦和と比べても、ボールをつなぐ技術などに大きな違いはない」

と、チームの重鎮ヨム・ギフンはいう。さらにヨムはこう言葉を続けた。

「ただ柏のほうが戦う気持ちの強さ、フィジカルコンタクトを厭わない気持ちの強さを感じる」

根底にあるものは「気持ち」「闘志」「メンタル」。それは試合前からの意識づけと、やはりクラブとして2012年からコンスタントに大会に出場してきた経験から生み出されるもの。改めて柏の持つ凄みを敵地で感じる一戦になった。

□ 第2戦、変化した鄭大世に警戒せよ!

ラウンド16の第2戦は5月26日、日立柏サッカー場で行なわれる。

ふだんはパスをつなぐサッカーを展開する水原も、崖っぷちにたたされたこの試合では、どこかで必ずクロス攻撃のスイッチを入れてくるはずだ。柏は引き続きこの点には要警戒。

鄭大世(チョン・テセ)に警戒せよ

一方でこの日も1アシスト1ゴールを決めた鄭大世の変化した姿にも気を配る必要がある。かつてはゴールへの意識むき出しだったストライカーが、結婚・子どもの誕生もありメンタルが変化。アシストにも力を発揮するようになり、韓国国内での評価を高めている。

さらに一点だけ相手チームをほめるとすれば、左利きを3~4人揃えるチームが繰り出す攻撃は魅力的でもある。Jリーグではなかなか見られない迫力がそこにはある。

柏はホームであっても「割り切って守る」というダブルスタンダードを発揮する場面があるだろうか。しっかりとここのラウンドを勝ち抜き、中東、中国の富豪チームとの対戦も見てみたい。現在の柏レイソルは、そんな期待を抱かせるチームでもある。

[引用/参照:http://number.bunshun.jp/articles/-/823348]

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