西野亮廣
これまでの人生で、一番迷いの中にあったのが25歳の頃でした。僕は21歳で「はねるのトびら」(フジテレビ系)という深夜番組をやらせてもらいました。大阪から出てきて「よし、何としても、この番組をゴールデンにまで持っていくぞ!!」という目標を立てました。
結果、ありがたいことに4年半後にはゴールデンに昇格し、視聴率も20%ほど取れるようになったんです。確かに、番組は大きくなりました。でも、自分が考えていたものとは違ったんです。ものすごくありふれた言葉で言いますと、もっと売れる、スターみたいに(笑)なれると思ったんです。でも、まったくそうではなかった...。正直な話、相方にも話しましたが、この世界を辞めることも考えました。これだけの環境が整ったのに、突き抜けないわけですから。才能がないんだ。もうダメだと。
そんな中、当時レギュラーを務めていた「笑っていいとも!」(フジテレビ系)でお世話になっていたタモリさんから「飲みに行こうか」と誘われたんです。そこで、タモリさんが唐突に「西野、絵を描いたらどう?絵本を作るとか」と言ってくださったんです。当時は絵なんてまったく描いてなかったですし、それこそ「いいとも」の打ち合わせの時に、資料にちょっと落書きみたいなのをするくらい。
タモリ
...しばらくすると、思わぬ効果がありました。それまでの僕は、相方にすべての思いをぶつけていたんです。例えば、漫才のネタができ上がったら、朝の6時であろうが、相方を呼んでけいこをする。エネルギーを向ける方向が、全部相方やったんです。その結果、相方も精神的にしんどくなってしまった時期もあった。でも、絵を描き始めると、エネルギーのかなりの部分を絵に持っていかれる。となると、相方にいく部分が減る。すると、相方も負担が減って、コンビ仲、ひいては人間関係が少しずつうまくいくようになっていったんです。
ただ、それは同時に、絵本作りは時間がかかるということでもあります。1枚描くのにそれだけ時間がかかるので、想定していたページの半分の時点で2年が経っていたんです。毎日何時間も描いて、2年で半分。くじけそうになった時、またタモリさんに「飲みに行こうか」と誘っていただいたんです。
最初の店で、絵本作りに行き詰まっていると弱音を吐いてしまいました。すると、タモリさんが「そうだ、厚揚げのおいしい店があるから、そこに行こうか」とおっしゃったんです。次の店は、タモリさんのお知り合いがやってらっしゃる小さなお店でした。タモリさんが店主の方に伝えて、店のテレビに「カウント・ベイシー・オーケストラ」の映像を流したんです。
僕はまったく知らなかったんですけど、カウント・ベイシーという世界的なミュージシャンが率いるビッグバンドで、初めての僕でもすごさが分かるくらいでした。その映像を2時間くらい聴いてましたかね。そこでタモリさんがおっしゃったんです。
「マスターがベイシーが大好きで大好きで、店名も『ベイシー』と付けた店があるんだよ。東京からずっと離れた田舎の店なんだけど、オープンから20年経って、なんと、ベイシーがその店に来たんだ。自分の名前をつけてる店が日本にあるという話が回りまわって本人の耳にも入ったってことなんだよな」。
「へぇ~、そんな話もあるもんなんだ...」と思いかけて、ハッと気付きました。これを言うために、タモリさんはここの店に僕を連れてきたんだと。続けることは大変だけど、その先には何かがある。アホな僕が話の本質に気付いた瞬間に、タモリさんが店主さんに「厚揚げ、ちょうだい」とおっしゃいました。あくまでも、目的は厚揚げを食べに来たんだよという優しさをこめて。
翌日からまた描きはじめて、5年ほどかけて1冊目の絵本を出版しました。ゆっくりながら、今では3冊の絵本が出せました。物を作ること、ひいては生きていくことへの考えが25歳を境に変わりました。
タモリさんに絵を勧められてなかったら、いったい、今の自分はどうなっていたのか。考えただけでも、ゾッとします。恩返しなんておこがましいですけど、まずは自分が突き抜けた存在になること。そして、そこで初めて「あの時の言葉がなかったら、今の僕はありませんでした」とタモリさんにお礼を申し上げる資格が生まれるのかなと思います。
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西野って、友達とか可愛がってくれてる先輩多いよね。一般人がごちゃごちゃ言ってるだけな気が…
芸人としての才能が無いから別の道を探せって言いたかったんじゃないの
結果出してから経過を語れ…当たり前のことだね。
一般社会では結果が全て。結果が伴ってないのに経過語ったところでただの言い訳にしかならないから。
盲目ニート乙\(^o^)/