不思議ちゃんと呼ばれようとする。誰に? たぶん世間に。そしておそらく男の人に。そう、この言葉を最初に使ったのは、やっぱり男性だった。
女の生理や性を歌いながらも、奇抜なコスチュームと個性的なパフォーマンスで世間や男を煙に巻く彼女たちを不思議ちゃんと呼びカテゴライズしたのは、彼女たちの存在を扱いかねていた男たちだったのだ。
女の子たちは、不思議ちゃんの出現を歓迎した。「あ、あたしもコレで行こう!」――ちょっとばかり自意識が強く、個性的でありたいと思う「女の子なら誰でも」そう思ったに違いない。
一方では、表向きは抵抗を示しながらも内心は不思議ちゃんと呼ばれたいと思う人も多い。男性の奴隷人形になるよりは、個性派として認められたいという願望だろうか。
美人でなくても注目される不思議ちゃんの元祖は、80年代に一世を風靡した?戸川純だった。戸川純が全国的に注目されたのは、TOTO ウォシュレットのCMに出演してから。
取り立てて若そうでも美人でも可愛くもない女性が、頭に花飾り、ミニのワンピース姿で登場し、「おしりだって洗ってほしい」とつぶやくのは、クール・ジャパンという言葉もなかった1980年代初頭には、かなり「不思議」なパフォーマンスに思われただろう。
今でこそ、三十路や四十路を超えて、あゆも梨花も頭に花ぐらい平気でつけるが、80年代に二十歳を過ぎた女性がキティちゃんのように頭に花をつけるのは勇気のいる行動だった。
インパクト大なCMで出現した戸川は、1984年にリリースした楽曲「玉姫様」でもさらなる驚きを世間に与えた。
「ひと月に一度 座敷牢の奥で
玉姫様の発作がおきる
(中略)
中枢神経 子宮に移り
十万馬力の破壊力
レディヒステリック
玉姫様 乱心」
(「玉姫様」より)
という具合に、彼女は女の生理そのものを、ランドセル姿の少女に扮して、あるいは巫女に扮して歌い上げた戸川は、一躍同姓のカリスマ的存在に上り詰めたが、男性にとっては不思議以外の何物でもなかったろう。
戸川は当時を振り返って、「生々しくなりすぎないようにバランスをとっていた」と語っている。
実は、デビュー前の戸川はJJガールのような女子大生だったと香山リカが明かし、エキセントリックな戸川純像が演じられたものであることを指摘しているが、そんなことは百も承知なのである。
彼女は、80年代の初めに「不思議ちゃんで行こう!」と決心したにすぎない。戦略的に元祖不思議ちゃんを演じきったのが戸川純だったのだ。
これは男や社会に「女を押し付けられる」ことに拒否感を持つ女の子にとっても、素晴らしい戦略だった。なるほど、不思議ちゃんになれば女を押し付けられずに生きられるのか。少女のまま、自意識と個性を保ったまま生きていくことも可能なのか。
JJガールが「私は女だから、男の考える理想の女になってあげますよ」という生き方ならば、不思議ちゃんは「私は女だけど、そう簡単に男の幻想には付き合わないわよ」という生き方なのである。
いい奥さんいいお母さん、良妻賢母コースからの戦略的逸脱と言ってもいい。男社会に束縛されない自由な女の時代の到来を予感させた戸川には、蜷川実花も夢中になったという。
戸川純が切り開いた不思議ちゃん戦略を踏襲し、いっそう確信犯的に推し進めたのが、ゼロ年代の「歌舞伎町の女王」椎名林檎である。
「女に成ったあたしが売るのは自分だけで同情を欲したときにすべてを失うだろう」(「歌舞伎町の女王」より)
林檎がブレイクしたのはは、援助交際やコギャルブームもピークを過ぎた1998年。ガングロやヤマンバが跋扈する不思議の国ニッポンで、もはやナースの制服や花魁の着物でちょっとやそっとコスプレしただけでは不思議ちゃんになれない。そこで彼女は次の手を編み出した。
「無罪モラトリアム」「勝訴ストリップ」「下剋上エクスタシー」難解な日本語にエロティックなカタカナを故意にぶつけて、装いだけでなく、言葉でもコスプレを行ったのだ。
同時代に登場した浜崎あゆみがファッションと歌詞の単調さからヤンキーを主要顧客としたのに対し、椎名林檎は戸川純以上に知的なおじさんまでをも魅了したからだ。
「エッチなことを言うときもなるべく文学的な表現を心掛けております(C)壇蜜」男という生き物は、その落差にエロスを感じるようにできているからである。
そして2011年、「女の子は誰でも」を歌う頃には、資生堂マキアージュのCMモデルに選ばれる。化粧品のCMに出るということは、女子を代表するということである。
それはつまり、「女の子は誰でも」不思議ちゃんの要素を持っている――確信犯的に演じるしコスプレもするのだ。理想の女なんて本当はどこにもいない、私たちは男の幻想に付き合ってあげているだけなのよ、ということを知らしめた瞬間でもあった。
2014年、戸川純、椎名林檎のDNAを受け継ぐ新型不思議ちゃん大森靖子がメジャーデビューした。
「月経周期 基礎体温 全部知ってる大きな愛を 今日は誰にも邪魔させないのだ」(「あまい」より)
と戸川純を彷彿とさせる歌詞で女子様を歌い上げるが、だが、何よりも注目すべきはそのガーリーさだ。
確信犯的に「女子」を着て、「女子」を歌う新型不思議ちゃん・大森靖子のガーリーな世界観は、もちろん歌詞にも色濃く反映されている。
「ディズニーランドに住もうとおもうの」(「絶対少女」より)
「桜が終わって40デニール」(「Over The Party」より)
こんな歌詞は「女子」でなければ書けないし、「女子」でなければその意味すら理解できないだろう。戸川や林檎との違いは、そのどこにでもいそうなリアルな女子像だ。大森が語るには、
「『私じゃなきゃいけない意味をどうにかしてつくんなきゃ』っていうスタンスが、『誰でもいいなら私でいいじゃん』になりました。もっと自由になれたし、もっと孤独になれたんです。だからすごくこれから楽しみです」(メジャーデビューシングルに寄せたメッセージより)
「私じゃなきゃ」から「誰でもいいなら私でいいじゃん」へ。大森靖子の「転向」こそが、今を表している。三十路になっても四十路になってもハロウィンで思い思いのコスプレをする、普通の「すべての女子」たち。
そんな時代だからこそ、大森靖子はあえて「女子」を着て、「女子」を歌わずにはいられない。世間や男の期待を気持ちよく裏切るのが、戸川純から受け継がれた「不思議ちゃん」の使命だからだ。
これは新しい女の生き方の肯定でもあり、男の幻想に付き合わずに、自意識と個性を保ったまま生きていく有効な「戦略」なのだ。
[引用/参照:http://www.cyzowoman.com/2014/12/post_14292.html]
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いや戸川さんは本当にアレですよ。
完璧に向こうの世界に行っておられます。
昔、妹さん(故人)から聞いたので間違いないです。
林檎さんは戦後昭和の退廃がお好きなんでしょう。
戸川純の『遅咲きガール』は名曲だと思う。
この記事みてるDな魔法使いさんたちにもmerryX'mas!