3カ月前とは全然別物を見ているようである。Jリーグもそうだが、日本のサッカーは、監督が新しい人に替わると前任者が植え付けた良い面も消える。
前の4年間で築き上げたベースに、新たな要素を加えた方が良いと思うが、一度ゼロに戻してしまうのだ。なぜこうなのだろうと疑問に感じる。
ザッケローニ監督が目指した、ボールを保持して主導権を握る戦法は、日本サッカーを新時代へ導いた。長く日本代表の試合を見ているが、これほどアグレッシブなチームは初めてだ。
ブラジルでのワールドカップの結果は別にして、将来につながる良いサッカーをしているのは間違いなく、日本サッカー協会も主導権を握るサッカーを継承する存在としてアギーレ新監督を選任したはず。
ところが、ウルグアイ、ベネズエラの2試合では、強豪を相手にしてもパスをつないで攻めようというサッカーは見られなかった。
新しいメンバーが入って、システムも4―3―3に変更。わずか3回しか練習の機会がなかった札幌のウルグアイ戦は別にして、第2戦のベネズエラ戦でも4年間積み上げてきた緻密さがなかった。
ロングボールも蹴ればと言いたくなるほどショートパスにこだわった前チーム。アギーレジャパンにその考えはないようだ。
原因はシステムだろう。アンカーの森重真人を逆三角形の底に置く3人の中盤。その1列前の左の柴崎岳、右の細貝萌の後方、森重のサイドに大きなスペースが生まれる。
森重がピルロのようなボールさばきをできるのならいいのだが、そこまで求めるのは酷。最終ラインでボールを持ったときにザックジャパンではでは近くに遠藤保仁、長谷部誠と二つのパスコースがあった。
だが今回は森重一人。その前方の柴崎、細貝へのパスは距離があるのでうまく通りにくい。パスがつながらない原因になったと思われる。
試合内容としてはとても良いものではなかった。そのなかで新しい発見もあった。それが代表2試合目の武藤嘉紀と柴崎の活躍である。
収穫のなかったウルグアイ戦において、後半43分に唯一のハイライトとなったポスト直撃のボレー。この場面を作った武藤の前への推進力は、前チームにはなかった特徴。
そしてベネズエラ戦で見せた後半6分の先制点も武藤のスピードと前に出るパワー、シュート意識の高さがあるからこそ。
味方からのロングボールを相手DFがヘディングでクリア。その落下地点に入った武藤に躊躇はなかった。左サイドに開いた岡崎慎司と右サイドに走る本田圭佑の開けたスペースをドリブルでまっすぐに走る。
ファウル覚悟で後方から止めにかかったDFをスピードで振り切り、左足を振り抜いてゴールに入れた。
この選手のいい所は、大切なフィニッシュでの意識の高さ。「まず(ボールを)浮かせないことだけを心掛けた」と言っていたが、ビッグチャンスを迎え心がはやる局面でも冷静沈着。どんなに強烈なシュートでも入らなければ意味がないことが分かっている。
この武藤と同学年の22歳。柴崎の場合は初代表なのに非常に冷静である。そのプレーは、良い意味で枯れている。サッカーセンスの塊なのだ。
本人は「初出場ということもあるので、ある程度、硬さが出るのは、自分の意識していないところであった」と言っているが、試合仲は身ぶり手ぶりを交えて味方に指示を出す姿はベテランのようだ。すでにこのチームのメインメンバーとしての自覚がある。
それにしてもサッカー選手には、ときに期待のできる選手がでてくる。。コンサドーレ札幌の小野伸二のように。日本が後半22分挙げた柴崎の2点目はそれそのものだった。
自陣で武藤がカットしたボールを自らが起点となり展開。岡崎が左サイドを突破したところで、柴崎はDFの視線から外れるように意識的にワンテンポ遅らせる走り方をしたのだ。その予測力が、結果的にゴールの右サイドでフリーになるポイントとなった。非常にクレバーな選手である。
シュートについては「クロスもいいところに上げてくれたので、あとは流し込むだけだった」とコメントしたが、技術自体はかなり難易度の高いもの。それでも柴崎の感覚では簡単なプレーなのだろう。
ただ、この二人の才能に隠れた感があるが、アギーレジャパンの船出は良いとは言えない。試合を作るという点において、前代表より弱くなっている。
1996年のアジアカップ。加茂周監督に率いられた日本代表は、クウェートに0―2で負けた。前面に押し出した「ゾーンプレス」の新戦術は互角に勝負を挑んでくれる欧州や中南米のチームには効いたが、アジア勢相手には効かなかった。アジアのチームは、プレスの掛けどころである中盤を越すロングボールを多用したのだ。
日本はW杯の前に、アジアで戦わなければならないという状況である。この日、日本が挙げた2ゴールはカウンターだった。必ずといっていいほど引いて守ってくるアジアのチームに、カウンターという場面はあるのだろうか。アギーレ監督は、世界の前にアジアがあることを意識するべきである。
[引用/参照:47news]
http://www.47news.jp/EN/201409/EN2014091101001024.html
2試合で判断すんな馬鹿。