やっぱ「同胞」でしょ!? いまだに、このジンクスが生きている。ワールドカップの優勝監督だ。事実、昨年のブラジル大会を制したドイツの指揮官ヨアヒム・レーブも生粋のドイツ人だった。
蛇足ながら、準優勝のアルゼンチンも、3位のオランダも、4位のブラジルも、指揮官は同胞だ。代表では外国人監督の登用が認められているが、実に80年を越える大会史の中で外国人の優勝監督は一人もいない。
だから外国人監督はアカン、そろそろ日本人監督でよくね?
いや、そういう具合に話をもっていきたいわけじゃない。優先すべきは、やっぱ「国籍より手腕」でしょう、どう考えても。
そろそろ日本人で――という主張は、「その手の人材がいるじゃん」という信憑が先にあって初めて筋の通る話のような気がする。
そして、まだまだ外国人で――という主張にも全く同じことが言えるわけで。日本人か、外国人か――という問いの立て方から離れ(ま、誰もそんな問いを立てちゃいないでしょうが)別のアングルから日本代表に必要な「辣腕」を考えてみた方がよろしいんじゃないかと。
例えば、こんな問いである。「欧州リーグの実績か、ワールドカップの経歴か?」
過去2回の監督人事における要件は「トップレベルにおける実績」だった。具体的には欧州の主要リーグ、もしくはワールドカップ本大会での実績である。
この2つに最も高い優先順位が置かれていた。これらの条件に従って招聘したのがイタリア人のアルベルト・ザッケローニであり、メキシコ人のハビエル・アギーレだった。
結果は? 前者は「集大成」のブラジル大会でグループステージ敗退の憂き目に遭い、後者は「8強止まり」に終わったアジアカップの後に退任している。
果たして「世界レベルの実績」は必須の要件なのか?
どうも、そんな疑念が渦巻いてしまう。いや、必要だ――という意見を尊重した場合、さらに問いかけたいことがある。
世界レベルの実績に関する「賞味期限」をどう考えるのか。例えば、ザックの信用に足る実績(イタリア・セリエAでのタイトル歴)は’90年代のものであり、ゼロ年代ではこれという結果を残していない。
戦術やフィジカルなどの進化や発展が著しい現代において、約10年のブランクは実績の「期限切れ」や手腕の「再検査」を警告していないか。気になるところでしょう。
ザックについて言えば、ワールドカップという短期決戦のマネジメントに関する「バグ」もいくつかあったように思う。日本をベスト16へ導いた日韓大会のフィリップ・トルシエや南アフリカ大会の岡田武史は「欧州リーグの実績」を残していない。
しかしながら、両監督ともフランス大会で采配をふるった戦歴があった。どちらもグループステージ敗退ですが。その苦い経験を「2度目の挑戦」で生かしたという見方ができるかもしれない。さらに、もう一つのアングルがある。
欧州リーグの実績か、Jリーグの実績か――。
過去2回の監督人事で「Jリーグの実績」は選考基準にカウントされていない。あくまでもトップレベルの実績にこだわっていたからだ。
こうしたブランド志向の成功例としては、2002年の日韓大会で韓国をベスト4へ導いたオランダの名将フース・ヒディンクの名が挙げられる。ただし、当時の特殊な背景を理解しておきたい。ポイントは「特権」と「契約期間」だ。
まず「特権」とは本大会のホスト国に認められたワールドカップ・アジア予選の免除である。これにより、目先の結果にとらわれることなく、強化に専念することができた。
次に「契約期間」だが、こちらは約1年半だった。アジアの国々が欧州のマーケットで引きのある指導者を留めておけるのは「2年が限度」とも言われる。
それ以上の歳月を費やせば、巨大市場で需要がなくなる恐れがあるからだ。そうかといって2年契約では就任早々アジア最終予選が始まるため、大胆な強化方針を採りにくい。そこが、はるか彼方の「未知の国」で指揮を執る場合のネックになるわけだ。
金銭面の問題はどうか。日本の提示する契約金は悪くない。名声のある指導者には2億円強を投じる用意がある。もっとも超大国では3億から5億円が相場で、欧州のメガクラブになるとケタが変わってくる。日本の資金力は大物確保の決定打とはなりにくい。
さらに大きく異なる言語、文化、生活習慣、気質などの問題もある。特に「気質の違い」から生じる問題点を整理し、ムダなく強化を進めるには相応の時間がかかるだろう。
日常的に選手たちと深く関わるクラブ監督とは異なり、離合集散を繰り返す代表監督ともなれば、なおさらだ。おいそれと片付く問題ではないだろう。
こうした難しい条件の下でブランド志向を貫けば、釣れる相手が「過去の名将」に絞られていくのも止むを得ない。彼らへの投資が当初の期待を下回る結果となっている以上、選択肢の枠を広げてもいいのではないか。
それがJリーグで実績を残した指導者――「無印良品」というわけである。彼らの多くは、ブランド品に欠落した「ニッポンへの理解」を深めた状態で仕事に取り組めるはずだ。そのアドバンテージは想像以上に大きいのではないか。
国内市場に選択肢を求めた成功例として興味深いのは、昨年のブラジル大会で16強入りを果たしたチリだ。アルゼンチン出身の指揮官ホルヘ・サンパオリを抜擢。
欧州の市場で知られた存在ではないが、チリの古豪クラブ、ウニベルシダ・デ・チレを率いて国内三冠を達成。その実績を買われ、代表監督のポストに迎えられている。
主力の多くは欧州組だったが、クラブで実績を残した戦術を迷わず代表チームに転用し、成功を収めた。チリ人の扱い方を心得ていれば、選手たちの「格」は大きな問題にならないということの証左だろうか。さらに「短期の強化」にも適していると言えるかもしれない。
日本人の扱い方をよく知り、ピッチ内における長所と短所を見極め、それをチームづくりに落とし込める手腕さえあれば、国籍は問題じゃない。外国人でも、日本人でもいいはずだ。むしろ、吟味したいのは、実績の中身だろう。
ポイントは「何を」やり遂げたかではなく「どうやって」やり遂げたか。その見極めが「次期監督に求める条件」と密接にリンクするからだ。
[引用/参照:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150219-00822729-number-socc]