マリア・シャラポワがウィンブルドンを華麗に制覇したのは、2004年のこと、まだ17歳だった。まさに、スターが誕生した瞬間だった。
きっと、これから何度も優勝を重ねるのだろう――そう思っていたのだが、2度目の優勝はなかなか訪れない。セリーナ・ウィリアムズという「天敵」がいるからだ。
2015年のウィンブルドン、セリーナとシャラポワは準決勝で対戦し、セリーナが6-2、6-4のストレート勝ちを収めた。
セリーナは13本のサービスエース(シャラポワは2本)、29本のウィナーを決めての圧勝。対するシャラポワは6本のダブルフォールト、セリーナのサービスゲームでは一度もブレイクポイントを握ることのない完敗だった。
これで両者の対戦成績は、セリーナの18勝2敗となった。
シャラポワが勝ったのは2004年のウィンブルドンと、その年のツアー・チャンピンシップの2回だけ。すでに10年以上もセリーナに勝っていない。それどころか、セットを奪ったのも2005年の全豪、2008年のチャールストン、2013年のマイアミだけ。
試合はおろか、セットを取ることもままならない状況が10年以上も続いている。なぜ、ここまでシャラポワはセリーナを苦手としているのだろうか。
ひとつには、シャラポワがセリーナの姉、ビーナス・ウィリアムズと似たタイプの選手だから、という指摘がある。
ビーナスとシャラポワはともに185センチを越える長身で、威力のあるサーブ、ストロークを得意とする。体格的なアドバンテージを押し出すのだが、セリーナは姉との練習の中で、長身選手に対するリズム、攻略法を身につけている。
その発想は、ひと言で表せば――。
「目には目を」
シャラポワの得意とするサーブ、力強いストロークで圧倒する。つまり、長所とする部分で圧倒し、自信を喪失させる。
今回の試合でも、シャラポワはリスクの高いサーブを打ち、それがダブルフォールトにつながるシーンが見受けられた。セカンド・サービスでのポイントはわずか29パーセントしかなく、プレッシャーがかかっていたことがうかがえる。
相も変わらず、攻略の糸口が見つけられない――。それがシャラポワのセリーナに対する印象ではないか。
もうひとつ、指摘しておきたいのがセリーナのシャラポワに対する強烈なライバル意識だ。
2012年のロンドン・オリンピックの決勝、両者の対戦は、観衆は「判官贔屓」もあって、8割方シャラポワの応援についていた。セリーナは戦う前からヒール、悪役だった。
しかも試合開始直前になって、セリーナはトイレット・ブレイクを要求した。シャラポワは準備万端という状況だったし、観客も試合の開始を待ちわびていたから、大きなブーイングが起きた(会場はウィンブルドンだが、オリンピックの観客は本大会ほど行儀が良くはない)。
セリーナはそんな反応はどこ吹く風、泰然自若としてコートに戻り、今回のウィンブルドンのように完膚なきまでにシャラポワを圧倒した。
ファンもマスコミも、女子テニスには「エレガンス」、優雅さを求める傾向がある。今はダブルスで活躍するマルチナ・ヒンギスのように、プレースタイルも優雅で強い選手が好きなのだ。
セリーナ、シャラポワともにプレースタイルは男子に近く、この10年間で女子テニスシーンを変えた。もはや優雅なだけの選手が勝てるほど、甘い時代ではなくなった。
しかし、シャラポワは美と優雅さも兼ね備えており、ファンも多い。
だからこそ、セリーナはシャラポワに対してはことさら闘志を燃やす――。33歳のセリーナだが、ハード、芝のコートではいまだ衰えは見られない。
シャラポワの天敵攻略は、解決の糸口が見えないままである。
[引用/参照/全文:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150710-00823718-number-spo]