宇佐美貴史の華麗なプレーを、再び欧州の舞台で見られるかもしれない。
今季のJリーグでは得点ランキング3位(19点)となり、ハリルホジッチ率いる日本代表にも定着した。スポーツ新聞の報道によれば、マルセイユやシュツットガルトが関心を示しており、今冬に欧州のクラブへ移籍する可能性が高まってきた。
ただし、宇佐美本人も迷っているかもしれない。1度目の欧州挑戦では、満足できる結果は残せなかったからだ。
19歳のときにバイエルン・ミュンヘンに移籍して第2節で出番が回ってきたものの、不用意なボールロストでハインケス監督を激怒させてしまった。
そこからリーグ戦では32節まで干され、失った信頼を取り戻すことはできなかった。2年目にホッフェンハイムに移って先発に定着した時期もあったが、監督交替のあおりを受け、最後は戦力外扱いになった。
いったい宇佐美が欧州でブレイクするには何が足りないのだろう?
最も不安視されるのは、「爆発的なアクションを連続して行うのが苦手」ということである。いわゆるインテンシティの欠如だ。
ブンデスリーガ北部のあるクラブ関係者に会ったところ、やはり監督から宇佐美の情報を求められたという。だが率直にアクションの継続が苦手だと伝えると、監督は興味を失ったそうだ。
ダイジェスト映像にいくらスーパープレーが並んでも、それを90分間コンスタントに出せなければ、1シーズンを戦い抜くのは難しい。
なぜ爆発的なアクションを連続できないのか。その原因は、おそらく姿勢の悪さにある。
宇佐美に限らず、猫背の選手は踏ん張ったり、地面を強く蹴ったりしないと動き出せないため、90分間動き続けるのが難しい傾向がある。一言で言えば、燃費が悪い。
猫背のさらなる弊害は、スピードの変化をつけられないことだ。今夏、岡崎慎司の成長秘話を取材するために、彼の専属トレーナーで元陸上選手の杉本龍勇氏に話を聞く機会があった。杉本氏は一般論として、指摘してくれた。
「日本人の多くの選手は姿勢が悪く、だからスピードの強弱がつけられない。守備者から見ると、同じリズムのドリブルというのは予測しやすい。日本でドリブラーと呼ばれる選手が、欧州に行くと簡単に抜けなくなるのはそこに原因があると思います」
《中略》
「クリスティアーノ・ロナウドは、ドリブルを仕掛けるときに逆に姿勢が良くなる。日本にはボールを持てる選手はいるんですけれども、姿勢が悪いがゆえにスピードの強弱をつけるのが苦手な選手が多いと思います」
あくまでこれは一般論としての指摘だが、宇佐美にもあてはまるのではないだろうか。姿勢が悪く、それゆえに速度の強弱がつけにくく、相手のレベルが上がると簡単には抜けなくなってしまう。
姿勢が悪いのは武器にも!?
サンフレッチェ広島や川崎フロンターレでトレーナーを務めた西本直氏は、宇佐美の姿勢の悪さに課題を感じながらも、同時にシュート時の体の使い方に驚きを覚えた。
「宇佐美選手は不自然とも言える姿勢から、目の覚めるようなパスや強烈なシュートを打つことができる。体を丸めたまま、膝だけで蹴る感じです。
それによって、普通なら正確に蹴ることができないような体の近くにあるボールでも強く打てる。守備者からしたら、相当タイミングやコースを読みづらいはずです」
ゴール近くでボールが足元にさえ収まれば、トリッキーなシュートを素早く打つことができる。ある種の点取り屋であり、もし王様としてゴール前に留まることが許されれば、日本人FWの概念を覆せるかもしれない。
ルーニーの姿勢の「使い分け」が参考になる?
そこでヒントになるのは、ウェイン・ルーニーのプレーだ。このイングランド代表FWは、良い姿勢と悪い姿勢を場面ごとに使い分けているからだ。
ルーニーはシュートの場面では体を丸めて、全身をコンパクトに使って蹴っているが、それ以外の場面では実に姿勢が良く、背筋を伸ばして走っている。
宇佐美も同じように姿勢を使い分けることができれば、良さを維持しながら、課題をクリアできるはずである。
[引用/参照/全文:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151124-00824582-number-socc]
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