意外な壁ダルビッシュ米移籍 |

パ・リーグ2位の日本ハムは、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで同3位の西武に敗退。

ダルビッシュ有

絶対エースのダルビッシュ有投手(25)は不完全燃焼のまま、7年目のシーズンを終えた。

今オフの米大リーグ挑戦について「ノーコメント」を貫くが、メジャーへの最大の障壁は史上最高値を更新し続ける超円高だ。(笹森倫)

シーズン終盤の勢いの差そのままに、日本ハムは30日のCS第2戦(札幌ドーム)で逆転負け。連敗であっけなく敗退が決まった。

梨田昌孝監督

今季限りで退任が決まっている梨田昌孝監督(58)は、前日の第1戦で7回1失点と好投のダルビッシュを106球で降板させたが、1点のリードを守れず逆転負け。試合後には「次(ソフトバンクとのファイナルステージ)のことも考えながらやっていかないと。あまり負担をかけすぎてもいけない。次のことも本人に言ってあるし、完投は考えていなかった」と説明していた。しかし、絶対エースを立てて初戦を落としたダメージは大きく、結局ダルビッシュの「次の登板機会」は消滅した。

試合後、スタンドのファンにサインボールを投げ込んだが、大型ビジョンが映し出したのはこの日で日本ハムのユニホームを脱ぐ梨田監督ではなく、練習着姿のダルビッシュ。これが見納めの可能性があるからだ。

11月1日から申請が始まるポスティング・システム(入札制度)で、米大リーグ移籍を本人が希望すれば、球団側は「本人の意思を尊重する。向こうから言ってくるのを待つ」(球団幹部)という姿勢で一貫している。

ダルビッシュは今季を総括して「ケガなく送れたし、いいシーズンだった」とサバサバと語り、大リーグ挑戦については「方向性は決まってないので、何もコメントすることはないです」と話すにとどめた。

7年間で通算93勝を挙げ、防御率1点台を5年連続記録したことで通算防御率は1・99。白星より防御率を重視する男だけに、100勝にこだわって来季も日本でプレーするより、通算防御率1点台を区切りに、より高いレベルの環境を求めても不思議はない。

その決心に備え、前日もレンジャーズなど、米スカウトがネット裏から目を光らせた。

ただし、昨今の社会情勢は日の丸のエースにとって逆風だ。東日本大震災をきっかけに円高ドル安の傾向が強まり、1ドルが70円台に突入した現在も史上最高値を更新し続けている。各企業とも現在の水準の長期化を覚悟して、経営戦略の練り直しに動かざるを得ない。

松坂大輔

日本人選手で最大規模の米移籍は、2006年オフにレッドソックスがポスティングで西武から松坂大輔投手(31)を獲得したケース。当時は1ドルが約117円、西武には入札金の約5100万ドル(約60億円)が入り、松坂は6年総額5200万ドル(約61億円)の契約を結んだ。

大リーグ関係者によれば、ダルビッシュの評価は「1億ドル男」と呼ばれた松坂に匹敵する。しかし1ドルの価値が5年前より40円以上も下がってしまった今、1億ドルは約117億円から約76億円へと、40億円以上も目減りしてしまった。

ダルビッシュの今季年俸は5億円。日本ハムは独自の査定方法で導き出された数字に一切の手心を加えることなく新たな年俸を設定するため、来季は05、06年の横浜・佐々木主浩投手の6億5000万円を上回る契約となることが濃厚だ。

大リーグのエース級は11億円以上の年俸をもらっているが、ダルビッシュは「先発ローテーションの2、3番手」(米球界関係者)という評価。松坂の移籍初年度の年俸が、現在の為替レートで5億円を割り込んでいることを考えても、米移籍で来季の年俸が跳ね上がることは考えにくい。

大社啓二球団オーナー(55)はこの日、「レギュラーシーズンの2位はよく頑張った。CSはトーナメントのようなもので、そのときの勢いが出た。来季もいいチームで臨みたい」と語った。エースの引き留めについては「来年のチーム編成は、編成部が今季を振り返りながら、よりよくしてくれるはず」と一般論にとどめた。ただし「あれだけの大エースが残ってくれるなら、10億円まで考える必要があるんじゃないか」とも語っている。

超円高が続くようなら、残留したほうが高給がもらえる公算は大きい。言葉や生活習慣などが大きく変わることは、特に繊細な右腕にとって負担となるはず。年俸を下げての大リーグ挑戦に、それだけの価値を見いだせるのかは意見が分かれるところだ。

「人はパンのみにて生きるにあらず」。超一流のプロフェッショナルが、全盛期に本当に欲するものはどこにあるのか。ダルビッシュの決断に注目が集まる。

[zakzak]
http://www.zakzak.co.jp/sports/baseball/news/20111031/bbl1110311548007-n1.htm

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