固く握手を交わす村井チェアマン㊧とラシュトンCEO㊨
長年苦楽をともにしてきたスカパー!を袖にして、Jリーグが新たな中継パートナーに選んだのは巨額の契約金を提示したイギリスの企業。その額、なんと2100億円。いったい、どんな会社なのか。
スカパー!が「深くお詫び」
衛星放送の大手・スカパー!の公式サイトに、高田真治代表取締役による前代未聞の「お詫び文」が掲載されたのは、昨年12月15日だった。
「スカパー!での放送を楽しみにしてくださっていた皆様に、このようなご報告をせざるを得ないこと、また今日までご連絡が遅くなりましたことを、深くお詫び申し上げます。誠に申しわけございません」
こう綴られた文中で、同社はJリーグの試合中継から「完全撤退」することを発表したのだ。
スカパーは’07年に、Jリーグの全試合放送を開始。「サッカー中継といえばスカパー」というイメージを着々と築いてきた。その撤退に、多くのサッカーファンから驚きと悲鳴が上がった。
事の発端は昨年。Jリーグは半年にわたる放映権交渉の結果、’17年シーズン以降のJリーグの独占放映権(無料テレビ放送を除く)をスカパーではなく、インターネットスポーツ中継サービス「ダ・ゾーン」を展開するイギリスのスポーツコンテンツ企業、パフォーム・グループと契約すると発表したのだ。
何より耳目を集めたのが、その「破格」の契約額だった。最終的にパフォームがJリーグ側と結んだ契約額は10年分で約2100億円。
それまで例年スカパーが支払ってきた金額は1年あたり約50億と言われ、単純計算で実に4倍強にもなる。
「焦ったスカパーはパフォームに対して中継権の二次受け交渉を水面下で続けてきました。
Jリーグ内部にスカパーを支持する人も多く、なんとかなるのではないかと思われていましたが、パフォーム側からは相当厳しい条件を突きつけられた。
年が明けて万策尽き、ついに完全撤退を決めたのです」(Jリーグ関係者)
昨年8月に日本でのサービスをスタートしたダ・ゾーンは、メジャーリーグやF1をはじめ世界中の130を超える競技、約6000試合以上の中継を月額1750円(税抜き)で楽しめる画期的なサービス。
日本での配信開始にあたり、目玉コンテンツとして白羽の矢を立てたのがJリーグだった。
Jリーグは’93年の開幕当初、ジーコやリネカーら、世界的な超一流選手たちを迎え入れ、一大ブームを巻き起こした。民放各局は試合を連日地上波で生中継し、日本中がJリーグブームに沸いた。
だが、熱狂しすぎたブームは去るのもまた早い。民放各局に見放されたJリーグは、ほどなくして地上波放送がほとんど行われなくなり、新たなファン層の拡大に苦慮する「冬の時代」が続く。
そんななか、Jリーグに救いの手を差し伸べたのがスカパーだった。
無念のスカパー!
「ウチは’02年の日韓W杯中継で手応えを感じたのをきっかけに、年間で千試合近くも行われるJリーグの全試合を中継することを決めたのです。
誰もやったことがない挑戦で、当然放送のノウハウはまったくない。
Jリーグ側の人間ですら、『そんなことが実現できるのか』と疑っていた。
試行錯誤の末、’07年のシーズンからついにJ1・J2全試合の放送を実現しました」(スカパー関係者)
スカパーの力の入れ様は半端ではなかった。社内に設けた専任チームがスタジアムに足繁く通い、時にはチームとイベントを共催するなど、リーグ全体を盛り上げるための様々な企画を矢継ぎ早に打ち出した。
結果、’07年の放送の開始以後、Jリーグ中継パックの契約者数は右肩上がりに伸びはじめる。
「苦しい時代から一緒にここまでやってきたという思いがあっただけに、今回Jリーグから切られたのは社内的にもショックが大きかった。
でも、なにより衝撃が走ったのは、やはり約2100億円というパフォーム側の契約金額。
ウチの会社のJリーグ全試合視聴プランより1500円近く安い月額料金でいったい、どうやって2100億に見合う利益をあげるのか……」(前出・スカパー関係者)
スカパーは2月以降、すべてのJリーグ試合中継セット(チャンネルを組み合わせたもの)の提供を終了するという。
同社広報は、本誌の取材に、「スカパー!でJリーグをご視聴頂いていたお客様には、大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。Jリーグ以外の国内試合や海外リーグなど、これからもサッカー関連番組を充実させていく姿勢に変わりはありません」と無念さをにじませつつ回答した。
会社の、いわば「虎の子」だったJリーグ中継を失うことによる経営へのダメージがいかに大きいかは、想像に難くない。
パフォームとはどんな会社か
では、スカパーから巨額のカネでJリーグ中継権をかっさらったパフォーム・グループとは、一体どのような会社なのか。
「今回話題になるまで日本では無名でしたが、デジタル技術を駆使して世界約100ヵ国でスポーツコンテンツを提供する国際企業で、欧州ではよく知られた存在。
あらゆるスポーツについてのデータや記事のほか、自ら試合の映像も制作し、主に企業やメディアに対して提供している。
スポーツニュースで流された会見映像が実はパフォーム制作などということも珍しくありません」(在欧スポーツジャーナリスト)
’07年設立と、パフォームは歴史こそ浅いが、その成長は目覚ましい。
’11年2月には世界最大のサッカー情報サイトである「ゴール・ドットコム」をはじめ、スポーツデータを扱う企業を次々と買収。世界でも有数のスポーツ総合企業に成長した。
年間210億円を回収するには
昨年、『東洋経済オンライン』のインタビューにおいて「いくらなんでも2000億円は高すぎるのでは」との声に、ダ・ゾーンのサービスを統括するジェームズ・ラシュトン氏はこう答えている。
〈ベリーベリーベリー、自信がある。投資したおカネを上回るリターンを得られると確信している。日本への投資は長期的な視点で見ている。Jリーグのパートナーとしてサッカーファンを増やし、スタジアムの体験をすばらしいものにする。
こうした取り組みがすぐに収入に結び付くとは思わないが、スポーツを楽しむ人が増え、サッカーを見る人も増えて、スタジアムに行く人も増えれば、ダ・ゾーンの会員も増える〉
リーグ運営の方法、サッカーの〝見せ方〟を変えれば、Jリーグ中継は十分ペイできると、強気の構えなのだ。
「例えば、ヨーロッパのサッカー中継では、選手がゴールを決めた瞬間、顔のアップも含め、様々な角度からの映像が流れ、日本よりも遥かに臨場感のある映像が観られる。
確かに、そういうノウハウを日本にも導入できれば、視聴者を増やせるかもしれない。
かつてプロ野球で巨人がイ・スンヨプ選手を獲得して、韓国で一大ブームが巻き起こったときのように、アジアのスター選手を獲得して向こうの国での契約者を増やすという手もあります」(スポーツビジネスを多く手がけるコンサルタント)
しかし、そうはいっても、ダ・ゾーンの月額1750円という契約料で年間210億円を回収しようとすれば、100万人の契約が必要。利益を出すためにはさらに数十万人の契約が不可欠だ。これだけの顧客を獲得するのは容易ではないはず。
スポーツ賭博の合法化を見据え
それでもなお、パフォームが強気なのはなぜか。
「背景には、各国でスポーツ賭博のネット化が進んでいることがあげられます。とりわけ政府公認の『ブックメーカー』が賭博を運営する英国では、’00年代に入り、オンライン化が相次いだ。
近年はスマホで試合を見ながら賭けられるシステムが完成されている。
それまでは試合前の予想で賭けるしかなかったのが、試合展開に応じて、試合中に変動する倍率を見ながら賭けられるインプレー・ベッティング(試合中の賭け)も盛んになっています」(前出・在欧ジャーナリスト)
そして、何を隠そうパフォームこそは、「ウォッチ&ベット」と呼ばれるスポーツ賭博の運営者に向けた動画配信サービスで急成長した企業なのだという。
「合法賭博用の動画配信のプラットフォームを押さえ、パフォームは安定した収入を得ている。
賭博は中毒性が高く、一過性のブームに乗ったファンとは比べ物にならない手堅い顧客を抱えており、極東の赤字ぐらいではビクともしません」(前出・在欧ジャーナリスト)
それを踏まえたうえで、Jリーグ関係者はパフォームの「シナリオ」をこう予想する。
「やはり、10年という長期契約のなかで見据えているのは、日本におけるスポーツ賭博の『合法化』でしょう。日本では一昨年の野球賭博の問題もあり、賭博=悪というイメージがいまだ根強いが、10年あれば風向きも変わる。
あれだけ反対意見の多かったカジノ関連法案も可決したのだから、可能性は十分。将来的に本国と同じようなビジネスモデルを築くための『先行投資』という意味合いが感じられます」
文部科学省が所管するtOtO(サッカーくじ)は、3年連続で売上高が1000億円を突破、安定したマーケットになっている。スポーツ賭博の新たな市場として、日本はまさに「格好の的」なのだ。
欧州の大物スター選手も
こうした支払う側の思惑は別として、Jリーグ側はウハウハの「パフォーム特需」に沸く。
なにせ、これまで地上波を合わせても放映権収入が100億円を超えたことのなかったJリーグに、年平均210億円という巨額が転がり込んだのだ。
「さっそく、来季からのJ1上位チームの賞金の増額が発表され、1位のチームには合計で21億5000万円が支払われることになりました。これは、昨季の4億8000万円の4倍以上。
同時に、外国人選手の登録枠を増やすことも決まっている。中国や中東のチームと同じように、欧州の大物スター選手をカネで釣って連れてくることも可能になる」(スポーツ紙・サッカー担当記者)
外資マネーの流入が、Jリーグの勢力図に大きな変化をもたらすかもしれないのだ。《後略》
[via:「週刊現代」2016年2月4日号]
http://news.livedoor.com/article/detail/12605512/
今季の成績がクラブの“将来”を左右
同じJ1でも順位により最大で十数億円の差が出るため、上位のビッグクラブ化が進み、これまでよりリーグ内の「格差」が出てくることで、特にJ1は1ステージ制に戻る上で、優勝争いの寡占化による弊害を懸念する声もある。
しかし、これまでは優勝タイトルやACLの出場権、残留争いに絡めない中位チームの“中だるみ”が存在したことも事実。傾斜分配金の額が大きければ、1つでも順位を上げることにより意味が出てくるメリットは小さくない。
より大きな問題はリーグ戦のウェートが重くなり、相対的にカップ戦やACLが軽視される傾向が強まるということ。
もちろん2008年にガンバ大阪が優勝して以降、8年間も遠ざかっているアジア王者に輝き、UAEで行われるクラブW杯に出場すれば名誉だが、ACLの優勝賞金は3億円で、仮にクラブW杯で優勝してもJリーグの優勝で得られる金額の半分に過ぎないのだ。
[via:https://dot.asahi.com/dot/2017011400039.html]
ネットの反応
・DAZNがコケてスカパーに戻ってくる予感
・なおカップ戦の権利は意地でも手放さん模様
・スポーツベッティング後進国の日本でストリーミングオンリーはどうかね・・・
・Jリーグを金払って見るヤツ居るの?
・スカパーは自ら切り開いたとか言ってるけど、要は殿様商売してましたっていってるようなもんだからな
・スカパー「カップ戦見たけりゃ月2980円な!!!」
・視聴者側には迷惑な話だな
・DAZNとかなぜかPALの25fps規格で日本のテレビと相性悪くてカクカク
・なにわともあれ画質。 スポーツ中継で画質が悪いのは致命的。
・DAZNは今よりももっと画質頑張らないと直ぐに有料顧客逃がすよw
・配信とTVとはまったく別次元のものだと思うんだがなぁ
・スカパーのせいでテレビ局が簡単に映像使えなくなってた
・スカパー!まじで終わりそう