「今やったら勝つと思いますよ、尚弥」
Number920号「ボクシング総力特集 最強は誰だ。」にて、IBF世界ライトフライ級王者の八重樫東にインタビューしていたときのこと。
この日は全階級を通じて最も強いボクサーを表す「パウンド・フォー・パウンド」1位のローマン・ゴンサレスについて、対戦したときの話を聞くという趣旨だった。
八重樫は2014年9月に、強すぎるあまり対戦相手探しに苦労していた「ロマゴン」との対決を買って出ている。壮絶な打ち合いの末に敗れこそしたが、積極的なファイトで多くの感動を生んだ。
「クアドラスよりも尚弥のほうがパンチもある」
インタビューの場所は横浜市内にある大橋ボクシングジムの、会長室の一角。
八重樫は自らが感じたゴンサレスの強さを丁寧に説明した後、ジムの後輩でもある井上尚弥を引き合いに出して「今やったら勝つと思いますよ」と力強く言った。
「去年の9月に(カルロス・)クアドラスがロマゴンと試合をして、尚弥がやろうとしていること(フットワークを使って距離を取る)をやってましたね。
ちょっと雑でしたけど。あれのもっと完成度の高いことを尚弥はできます。クアドラスよりも尚弥のほうがパンチもあると思うので」
ゴンサレスは昨年9月にスーパーフライ級へと階級を上げ、井上尚弥と同クラスになった。そのため、今年の年末にも2人の「世紀の対決」が実現するのではないかと周囲の期待は高まっている。
冒頭の言葉はそんな状況に置かれた10歳下の後輩を思う、優しい先輩からのエールだった。
「おいしいところは尚弥が……」(大橋会長)
話題が一段落した頃、それまで自席でデスクワークをしていた大橋秀行会長が補足してくれた。
「ロマゴンとの試合を終えた直後、リング上での八重樫の第一声が『尚弥なら勝てますよ』だったよな。こっちは『大丈夫か』って聞いてるのに、こんなときに何を言ってるんだって(笑)」
そこからしばし、取材陣も交えた雑談。
大橋会長「ところで、これはどういう取材なんだっけ?」
――「ロマゴンに挑んだ男たち」というテーマで、対戦経験のある日本人ボクサー全員に話を聞いています。
大橋会長「おお、格好いいね。で、尚弥のインタビューもあるんでしょ?」
――あります。
大橋会長「なるほど、おいしいところは尚弥が持っていくってわけだ」
八重樫「その流れはだいぶわかってきました(苦笑)。もう、脇役でいかに目立てるかですから」
昨年末の中継では八重樫が“視聴率No.1男”だった。
そんなことを言う八重樫だが、実力もさることながらボクサーとしての人気は国内随一を誇る。
昨年末の中継「ボクシングフェス2016~井上尚弥・八重樫東ダブル世界戦&村田諒太世界前哨戦~」(フジテレビ系)では、番組内の瞬間最高視聴率が八重樫の試合の最終ラウンドだったとか。
八重樫はこの試合で、挑戦者サマートレック・ゴーキャットジムを12回TKOで下して2度目の防衛を果たしている。
八重樫人気の理由の一端が垣間見えるエピソードを、これもまた大橋会長が教えてくれた。
温厚で謙虚、しかし闘争心は常に持ち続ける男。
「ロマゴンとの対戦が決まったとき、八重樫は二つ返事で『やります』って。こっちはちょっとでも躊躇するようなら、断りを入れようと思っていたんだ」
温厚で謙虚ながら、どんな相手にもすぐにファイティングポーズを取れる男。それが八重樫東なのだ。ゴンサレスをテーマにした取材だったのに、そのことばかりが印象に残っている。
発売中のNumber920号「ボクシング総力特集 最強は誰だ。」では、スポーツライターの渋谷淳氏が「ローマン・ゴンサレスと拳を交えた男たち」を書いています。
ゴンサレスに挑んだ日本人ボクサー4人(八重樫東、高山勝成、新井田豊、松本博志)全員に話を聞いたことで、その強さの理由が明らかになりました。
同じく渋谷氏がゴンサレスとの「世紀の対決」に向けて切り込んだ、井上尚弥のインタビュー「世界のトップになるために」も掲載されています。詳細は是非、本誌をお読みください。
[via:http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170131-00827350-number-fight]
右拳の具合次第じゃね
ガード越しにおもくそ殴れるなら行けるやもね