SPORTS

HEADLINE

【W杯ラグビー】台風被害でもスコットランド戦を開催した意義に感銘した英記者のコラムが話題に

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は13日、A組最終戦で日本がスコットランドに28-21で勝利し、史上初の8強入り。4連勝で首位通過を決めた。

台風19号の接近により開催が危ぶまれながら、被災者に多くの勇気と元気を与えた一戦。開催の尽力を目の当たりにした英紙記者は「日本人の『おもてなし』は皆の想像より、さらに数段階先にあった」と感銘を受けたことを感動的なコラムでつづっている。

横浜で行われた一戦は日本のみならず、大きな感動を与えていた。英紙「ガーディアン」で「台風被害にもかかわらず、日本が世界に彼らの反骨精神を示す」と題したコラムを掲載したのはアンディ・ブル記者だった。

試合後、ピッチ上で寝転んだリーチ・マイケル主将、田村優を中心に、笑顔で集合写真に収まる選手たちの印象的な1枚とともに感動コラムを展開している。

[via:THE ANSWER]
https://news.livedoor.com/article/detail/17233982/

黙祷は、1分にも満たない、短いものだった。しかしそこには、過去に例を見ない状況で開催される、この試合に対する、相反する感情の渦巻き、衝突が含まれていた。

台風がつい数時間前に過ぎ去り、スタジアムの周りは洪水であふれ、救出作業も終わっていなければ、修復作業など始まってすらいない。

その黙祷が、一体誰に向かって、何人の犠牲者へ捧げられたのかは、誰も知る由はなかった。被害者の数は、未だに確定していなかったのだから。

明け方は4名とされていた死傷者数は9名へ、試合開始時には24名に、ハーフタイムに26名、試合が終わり少し経つ頃には28名へと増えていった。

そんな状況で、彼らは試合を開催するべきだったか。あなたは疑問に思っただろう。ラグビー協会はそのことを日曜早朝に話し合い、日本人の組織委員に判断を委ねることを決定した。

なぜこんな状況でスポーツをするのか。なぜスポーツを見るのか。

未だに多くの人が行方不明で、堤防は壊れ、川は溢れ、会場の横浜から東へ16マイルしか離れていない川崎では100万人が避難し、30マイル北に位置する相模原では、土砂災害でなくなった人の、正確な数さえ把握できていない状況で。

災害への一種の清涼剤としてかも、もしかすると、日常を取り戻すためかも、台風に対する挑戦かもしれない。

いや、それ以上、「私たちは今生きていて、少なくとも今ここにあるものは楽しむことを決意した」と言う極めて重要な意思表示の1つとしてかもしれない。彼らは試合の開催を決めた。

ホスト国としてのプライドもあっただろうが、会議に出席した委員会幹部は、「世界に向けて、自分たちはできると言うことを証明したい」というのが、開催を決定した最たる理由だと、繰り返し主張した。

この会場の被害が甚大でなかった理由の一つは、鶴見川から溢れ出す水を、建物の下へと流す貯水設備の上にスタジアムが建っているからだった。スタジアム自体が街の災害対策設備の支柱なのだ。そしてこの試合で、日産スタジアムは、街の『精神的』支柱にもなった。

組織委員たちは、台風が去ったら一刻も早く動き出せるよう、土曜の夜はスタジアムに泊まり込んだ。

明け方には整備班が現地入りし更衣室から水を吸い出し、消防隊は全ての機械設備の点検を3度行い、ピッチに流れ込んだ泥やゴミをホースで一掃した。

同時に、組織委員会は政府や地方自治体と協力し、水道局、道路局、バス会社や鉄道会社などの各種交通機関と連絡を取り、複雑な課題を解決していった。

日本では、このワールドカップにおける『おもてなし』とは何か、と言う議論が活発になされてきた。

私も正確に翻訳することはできないが、この国で4週間を過ごして、漠然とだが理解したかもしれない。それは、客人を喜ばせるために全力を、いや、何かそれ以上を尽くすということだ。

しかし、彼らの『おもてなし』は、私たちの予想をはるかに上回っていた。試合前、多くの人が全くの勘違いをしていたのは、そのせいかもしれない。

「日本人はみんな、この試合が中止になり、過去に勝利したことのないスコットランドとポイントを分け合うことを望んでいる」という勘違いを。中には、「日本は故意にスコットランドの妨害をしている」と言う、壮大な陰謀論を唱える者までいた。

スコットランドラグビー協会の最高責任者、マーク・ドッドソンも、完全な勘違いをしていた。

怒りに任せて、『巻き添え被害』(ポイントを分け合うこと)に合えば法的措置を検討しているなどと口を滑らせた。これは、日本人たちがどう覚悟を決めたかのプロセスに対する、恥ずべきミスリーディングだ。

黙祷に続いて、日本の国歌、君が代が流れた。日本人はこの国歌に複雑な思いを抱いており、歌わない人もいる。そのため大会中、ファンたちに国歌斉唱を促すキャンペーンが開かれている。この日、会場の多くの人が参加した国歌斉唱は、感動的で、荘厳だった。

選手を鼓舞する歌声が、大きく大きく、街中に響き渡るほど広がっていった。あの瞬間、あなたは思い知っただろう、スコットランドが対面しているのは、ラグビー文化を持たない極東の島国ではなく、強大なサポーターを持つ、己の真価を世界に証明しようと言う覚悟の決まったチームだということを。

前半の30分間、日本は魔法のような、激しく、獰猛で、集中したラグビーを見せた。

次に対戦する南アフリカも含め、トーナメントに残った、全てのチームを凌駕するほどの。スコットランドも善戦したが、より頑強で、より鋭く、より俊敏であった日本に、完全に圧倒された。

日本のラグビーファンたちは、今なら何だってできる、どこが相手だって倒せると信じているだろう。そして、日曜日の夜に彼らが偉業を成し遂げた今、日本人だけではなく世界中の誰しもが、同じように思っている。

[via:The Guardian]
https://www.theguardian.com/sport/blog/2019/oct/13/japan-typhoon-rugby-world-cup

ネットの反応

・素晴らしい翻訳をありがとうございました。
・スコットランド協会会長の発言をバッサリと切り、横浜スタジアムの防災的意義への言及、国歌への複雑な国内事情、おもてなしの精神まで、本当は日本人が発しないといけない部分をイギリスの記者の方が理解頂けていることに感謝です。
・やはりあの勝利は、もはや「奇跡」でも「まぐれ」でも何でもなく、選手やスタッフ、関係者、観客、国民の皆の強い気持ちにより紡ぎ出された「必然」であったと確信できました。
・記事を読んで泣いたのはいつぶりだろう。
・おもてなしの向こう側
・なにこの手のひら返し
・反骨精神ではないと思うの
・たぶん英国はスコッチが負けてめっちゃ嬉しかっただけだと思うw
・日本が有利になるために中止を望んでいるんじゃないか、なんて日本人にとって一番心外で侮辱的な言い掛かりが消えたのが良かったな。試合自体も凄まじくてその価値があった
・できるなら中止しないで試合してくれって思っていた日本人は多いはず
・戦わずして勝つよりも、戦って負ける方を選ぶような気質はあるかもね。スポーツならそれでいいんだけどねw
・名こそ惜しけれ、という鎌倉時代からの言葉があるからな
・負ける事が恥なのではない 戦わぬ事が恥なのだ
・というより前大会で大差負けを喫して決勝行けなかった雪辱を果したいのは選手達だけでは無いよ
・不思議と負ける気がしなかったし、誰も負けを想像してなかったかも こういうのが神がかり、って言うのかね
・手段を選ばず、とにかく決勝トーナメントに上がれればいいというのが目標じゃないからね
・恥の文化だからな なかなか理解されにくいけど
・羽鳥慎一「台風来い来い」
 >そういう冗談も理解できないのか
・いや、なんというかスコッチがあまりにも魅力のある負け役を演じてくれたからね
 >見事なヒール役を演じてくれてありがとうまで言ってやろうぜ
・本気のオールブラックスと戦ってみたかったな・・・ってのが多そうな気はするぞw
・さすがに、決勝まで勝ち抜けると思ってる日本人は少なかろう。
・おもてなしって言葉やめーや
・なんでもかんでも「おもてなし」て言葉で結論付ける風潮なんとかならんの?
・まあブロッサムズと裏方はよく頑張ったよ
・試合中止になったうえに災害ボランティアまでやったカナダとナミビアにもありがとうと言いたい

スコットランドラグビー協会CEO マーク・ドッドソン氏

スコットランド協会の法的措置発言

台風19号の接近に伴い、決勝トーナメント進出が懸かっていた13日の日本対スコットランド戦が中止になる可能性が浮上すると、スコットランド協会の最高責任者マーク・ドッドソン氏は、試合がキャンセルになれば法的措置に出る可能性もあると警告。

スコットランドが台風19号の「巻き添え被害」を受けるわけにはいかず、ラグビーファンが「融通の利かないワールドラグビーにすっかり驚かされている」と言い放った。

日本戦が中止になって0-0の引き分け扱いとなれば決勝トーナメントに進めないことから、スコットランドは何としても試合の開催を望んでいた。

結果的に試合は行われ、日本が28-21の歴史的勝利でプール突破を果たしたのに対し、スコットランドは早期敗退が決まった。

[via:AFP=時事]
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191015-00000026-jij_afp-spo


日本戦敗退に涙するスコットランドのキャプテン グレイグ・レイドロー選手

スコットランド勝ち点はく奪も!?

W杯の統括責任者のアラン・ギルピン氏はドッドソン氏の発言を看過しなかった。スコットランド側の発言について、独立紛争委員会で審議されることを明言した。

この問題に関して、STVのサーシャ・プラット記者はツイッターでスコットランド代表が途轍もない代償を払う可能性を明らかにしている。

「スコットランド代表は“ラグビーの評判を貶めた”という(ペナルティで)告発される可能性がある。ワールドカップでは前代未聞。

申し立てが認められた場合、罰金か勝ち点剥奪になる。勝ち点6以上の剥奪となれば、ドッドソンのコメントはスコットランド代表の2023年大会の自動出場権を犠牲にする可能性がある」

スコットランドはA組で2勝2敗の勝ち点11の3位に終わった。勝ち点7以上剥奪されると、4位のサモアの勝ち点5を下回る可能性が出てくる。

W杯ではプール戦の各組上位3チームが次回の本大会出場権を手にできるシステムになっており、スコットランドが仮に勝ち点でサモアを下回った場合、予選からの参戦を余儀無くされる危険性もあるという。

W杯に過去全大会参戦のティア1国。トップの発言が招く、最悪の事態の可能性を地元メディアは憂慮している。

[via:THE ANSWER]
https://the-ans.jp/rugby-world-cup/88928/

楽しむことは不謹慎!?

日本VSスコットランド戦の会場となる横浜国際総合競技場は、近くを流れる鶴見川の氾濫を防ぐための遊水地に建っています。

有事の際は、スタジアムの1階部分は水に浸かり、周辺の公園とともに水に浸かります。そうすることで下流域への水害を防いでいるのです。

そのような場所に建つスタジアム、いかに「想定していた事態」であったとしても、本当に試合が開催できるのかは当日までわかりませんでした。

当日午前9時頃と言われた開催可否の決定はずれ込み、午前10時をまわってもなお発表はなく、やきもきするような状態。

簡単に発表できる状況なら予定時間通りに開催を発表したでしょう。いっそ止めてしまえば話が早いという気持ちであれば、やはり予定時間通りに中止を発表したでしょう。

時間がずれ込むというのは、「困難ではあるけれどどうしてもやりたい」という想いで懸命に働いている人がいたからこそ。

その懸命の働きに応える方法は「自粛」ではないはずです。大変な状況ではあるけれど、できることはやろう、元気な人は元気に生きよう、そしてその元気を足りない場所に回すのだ。

2011年当時には、現地のものを買って「経済を回す」といった表現も印象的でしたが、どこかで生まれた元気もきっと届けることができる。食べることや寝ることが落ち着いてきたら、きっとそれが必要になる順番がくる。だから、できるかぎりやろう、そんな意識。

「試合をやろう」と頑張った人がいるなら、それに応えるためにも精一杯「楽しむ」ことが観衆のつとめではないかと僕は思います。そうやって元気は広がっていくのだと。

そんなスポーツの持つチカラを、選手たちも自覚していました。

試合を終えたあと口々に出てくる言葉たち。キャプテンのリーチマイケルは「僕たちの戦い、少しでも勇気与えたと思います」と想いを語りました。

代表初トライをあげた稲垣啓太は「ラグビーで元気を取り戻していただきたい」と力強く言葉にしました。最年長トンプソンルークは「台風のあとラグビーはちっちゃいこと(中略)みなさん頑張ってください」と被災された方を思いやりました。

そこには「こんなときにラグビーをやっていていいのだろうか?」という迷いのようなものは微塵もありませんでした。

自分たちは自分たちの仕事としてラグビーをやる。そのことが巡り巡って復興であったり、元気を出すことにつながっていく。

「日常」を守る戦い

それはスポーツの持つチカラ、エンターテインメントの持つチカラを自覚し、「こんなときだからこそ」一層頑張らなくてはいけないと思う人たちの姿だったように思います。

その堂々たる姿に僕は、ラグビー日本代表がベスト8に進んだように、スポーツというものもまた社会のなかでひとつ上のステージに上がったのかもしれないと思うのです。

楽しむことは人間や社会にとって必要であり、スポーツにはその大きなチカラがある。こんなときでも、むしろ「こんなとき」だからこそ。そのことを、ラグビーをやり切った選手・関係者たちと、全力で楽しんだ観衆たちが、迷いなく示していたのではないかと。

ラグビー日本代表は試合だけではなく、「不謹慎ではないのか」という迷いを寄せ付けず、「日常」を守る戦いに勝った。あのスタジアムにいた者のひとりとして、僕はそう思うのです。

[via:文春オンライン]
https://bunshun.jp/articles/-/14731

なぜ稲垣は「そこにいた」のか?

「おそらく、そこにいたからトライ取っただけの話」

今どきの言葉で言えば“塩対応”か。13日のスコットランド戦で、プロップ稲垣啓太が奪った代表初トライに対する藤井雄一郎強化委員長の回答が、素っ気なくて面白かった。

そして発言を反復するうち、「そこにいた」ことの凄みを感じる。念のために補足すると、同強化委員長の発言は「彼はフィットネスもスキルも高い選手。ゲームのシステム上、コンタクトする場所にいつも立っている。オフロードでつないで忠実にサポートした結果」と続く。最大級の賛辞だろう。《中略》

キヤノンの自由視点映像

ジョセフジャパンで「スモー」の呼称を与えられているFW第1、2列の選手は、プレーするエリアが限定されている。

したがってトライが生まれる場面では下働きが多くなり、プロップの選手が決定機でボールを持つチャンスはかなり限定される。ではなぜ、稲垣はあの位置を走り込めたのか。

試合翌日の14日、リーチ主将が会見で語った言葉で解決した。

「試合に出ている選手でルールがある。もし前に出てストラクチャーから離れてボールが前に出たら、自由にプレーしようというルールをつくった」。



ラックからボールが出る場面、稲垣は田村、堀江、ムーアと並んださらに外にポジショニングしていた。オフロードパスによって一気にゲインラインを突破し、一度はボールのある位置から離されたが、そこで「ルール」が生きた。

一気に加速し、トゥポウからラストパスをもらった。もし稲垣がフォローしなかったら、トゥポウは倒され孤立していた。勝ち越しトライが生まれることはなかった。

[via:スポニチアネックス]
https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2019/10/15/kiji/20191015s00044000363000c.html

海外の反応

・WHAT A TRY!!
・Fuck me Japan
・I AM FULLY ERECT.
・こんなトライそうそう見ることはできんぞ!
・なんかわけわからんけどイングランドがこれまでに決めたどのトライよりも嬉しい。
・日本が刺身のようにスコットランドのディフェンス陣をスライスしてる
・個人技では決して見られないチームだからこそ見れる美しさがあった。
・息を呑むようなプレーの積み重ね。
・これだよ、視聴者が持てめていたラグビーは
・なんてトライだ、なんてラブリーな走り、そしてパスの連鎖! 本当に凄い試合だよ。
・日本のこのプレースタイルを見て惚れない人間なんているかい 😍
・これ今大会のベストトライだろ。オフロードパスのパラダイスや!
・俺この試合を永遠に見ていられるわ。素晴らしいスキルだ。
・南アフリカは “この” 日本と決勝トーナメントでぶつかるの?...2015年の悪夢が蘇る
・なんてこった、俺は今段々と日本人になっていっている...
・スコットランドが今、日本という台風に襲われている。
・熱烈なスコットランドファンだけど...今のはちょっと震えるレベルのトライだったわ
・今頃スコットランドのファンは台風がUターンしてくれることを祈っているはず。
 >試合中止のドローで手を打っとくべきだったのでは?
・この試合は行われるべきではなかった、と法的措置を取る準備をしているんじゃね?
・ウェールズファンだが日本の攻撃の美しさに嫉妬している。
・私は日本人でもスコットランド人ですらないのに、私の心臓はこの試合に耐えれそうにない。
・スポーツで見ることができるスペクタクルの中でもこの試合のようなものに何度出会えるだろうか?
・これ今大会のベストバウトでしょ。


漫画家・森田まさのり氏「にわかファンが絶対笑わない稲垣選手を笑わせてみた」

関連商品

コメント

  1. 1
    名無しさん 2019/10/18 15:45

    語る言葉なし、ただ涙

コメントする

関連記事

このカテゴリの最新記事