日本のファンにとって2010年メジャーリーグのトップニュースといえば、マリナーズ・イチローの10年連続200安打達成だったが、米国内では「史上最低で史上最高の試合」と呼ばれるようになった試合の印象が強烈だ。
一躍株を上げたのが、審判の世紀の大誤審で完全試合を逃したタイガースのアーマンド・ガララーガ投手(28)。
6月2日、ガララーガはインディアンス戦に9回2死までパーフェクト。
27番目の打者を一塁ゴロに打ち取り、カバーに入ったガララーガが一瞬先にベースを踏んだが、一塁塁審のジム・ジョイス審判の判定はセーフ。
史上21回目、今季3度目となる完全試合が消えた。
ところが試合終了後、審判歴22年のジョイス審判はロッカーでビデオを見て「誤審」を確認。
すぐにガララーガに謝罪して騒ぎが拡大した。
テレビは終日、このシーンを流し続け、新聞はこの世紀の大誤審に「完全犯罪」の見出しを踊らせた。
ここまでは「最低の試合」。
ところが翌日、ガララーガは穏やかな顔で「僕以上に彼がつらいはず」と語り、試合前のメンバー交換に監督代行で登場。
涙をぬぐうジョイス審判と固い握手を交わした。
「完璧な人間なんていない」という監督が仕込んだ和解のためのイキなセレモニーだった。
これにはファンも大感激。
脅迫電話が間もなく消えた(これが最高の試合)。
一生に1度あるかないかの記録を消され、なお相手を思いやるガララーガの行動は、自己中心的な選手が増えたメジャーでは絶滅危惧種のような印象を与えた。
スポーツ・イラストレーテッド誌も「記録には残らなかったが、彼のレガシー(遺産)はそれ以上に偉大だった」と、ジャイアンツのワールドシリーズ優勝に次ぐ2番目のニュースにあげた。
確かに100年後、200年後にも、これと同じ状況での誤審は起きないと思わせるユニークな”事件”ではあった。
[ZAKZAK]
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