〝戦闘モード〟に突入だ。
ボクシングの前世界バンタム級4団体統一王者の井上尚弥(30=大橋)が、WBC&WBO世界スーパーバンタム級王者スティーブン・フルトン(米国)に挑む世界戦(25日、東京・有明アリーナ)の前日計量に臨んだ。
22日の会見でフルトン側陣営から過去の井上のバンテージの巻き方が拳に硬さを持たせるものではないかと疑問視され、意外な形で注目を集めた世紀の大一番。
その計量を井上は55・2キロ、フルトンはリミットいっぱいの55・3キロでそれぞれ一発パスした。
井上「上等だよ」
すでに闘志みなぎる井上は、直後に行われたフルトンと顔を向き合わせての撮影で関係者の制止が入っても視線を外さず30秒超にらみ合うなど、早くも激闘を予感させた。
井上は、にらみ合いについて「燃えてきました。腹が立った。なんか視線の送り方ってあるじゃないですか。上からきてるなと。上等だよって思います」と余裕の笑みを浮かべていた王者への怒りをあらわにする。
それでも「メンタル的にいい調子です。明日は技術戦になると思うので、そういう(怒りの)感情は抑えて。頭を使っていきたい」と自分に言い聞かせるように話した。
新たな階級での計量を終え、改めて「しっかりと築き上げて体をつくってきた。ここからリカバリーして、また違った体が見せられるんじゃないかと思います」と自信をのぞかせる。
そして「(バンタム級との差は)たかが1・8(キロ)ですが、それがどれだけデカいかは明日の動きで分かると思います。バンタム級で通用していたものが通用するのか、あるいはしなくなるのか。明日それを証明してやろうと思います」と拳を握った。
バンテージ問題
両陣営が譲歩
なお、問題とされた拳のテーピングとバンテージの巻き方についてはその後のルールミーティングで両陣営が譲歩。
日本ではナックル(指の付け根の関節)以外に拳に直接テーピングを巻くことが認められているが、今回はガーゼの上にテーピングを巻くことになった。
[via:東スポ]
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/270661
バンテージ問題
難癖つけたワケ
ビッグマッチの公式会見が22日、横浜市内のホテルで行われた。
フルトン陣営のワヒード・ラヒーム・チームトレーナー(29)が井上のバンテージの巻き方に「公平に安全に行われるように」と“いちゃもん”をつけ、井上が「正々堂々と戦うのでご心配なく」とやりかえす場面があった。
フルトンへの代表質問が終わり、続いて井上へ話が向けられるタイミングで、突然、フルトンのチーフトレーナーが「聞いて欲しい話がある」と切り出した。
スマホに書いて準備してきた声明文を読みあげる。
「WBC、WBO、JBCら関係者に聞きたい。この試合が始まる前に最も大切なことは何ですか?」
そしてラヒームトレーナーの“いちゃもん”が始まった。
「バンテージの問題だ。フルトンは私に“気にするな、議論するな、どうせ勝つから”と言うが、そういうわけにはいかない。証拠もある。こっちも井上と同じように巻けるが、安全性はどうなるのか。
この問題が解決しないとフルトンをリングに上げたくはない。まず肌に直接テープを巻くのではなく、ガーゼを巻いてから、次にテープを巻くべき。クリーンに、お互いに安全なバンテージを巻こうじゃないか」
井上のバンテージの巻き方にクレームをつけたのである。
「ドネア2」バンテージを巻いてもらう井上
井上のバンテージの巻き方はまず肌に直接、粘着性のテーピングを施し、次に柔らかい布製のバンテージを巻き、再度、テーピングで固定する方式。
ラヒームトレーナーは、その肌に直接テーピングを巻くことが「違反行為だ」と主張したのである。
ラヒームトレーナーが「証拠」として通訳に見せたのは、昨年6月のノニト・ドネアとの再戦時の発信された海外の記事やツイートだ。
Plenty of chatter online right now about Inoue getting his hands wrapped earlier prior to #InoueDonaire2. This type of pre-taping and padding wouldn’t be allowed in many regions/countries. Keen to get thoughts from fighters/coaches… #boxing @FightDisciples pic.twitter.com/QtnVAGDBGz
— Nick Peet (@Peety_Editor) June 7, 2022
ニック・ピートという英国の記者がツイッターに
「井上尚弥のテーピングについての話題が多く上がっている。
このような下地のテーピングと緩衝材を入れる行為は、多くの地域や国では許可されていない。
選手やトレーナーの意見が聞きたい」
というツイートと共にドネア戦の控え室で、井上がバンテージを巻いている際の動画を添付していた。
これはドネア陣営が撮影した映像だ。
リツートだけでなく、英専門メディア「インツーボクシング」が「井上が論争を巻き起こす」と記事化。
「テーピングを直接肌に第一層として巻くことには何の問題もない」という声と、共に元WBC世界スーパーウェルター級王者のリアム・スミス(英)の「なぜドネア陣営が問題にしなかったのか疑問。肌にテーピングを巻くのは禁止。そんなに巻くなんて聞いたことがない」という反論ツイートなどが掲載されていた。
『intuboxing』
だが、これらの論争もフルトン陣営の指摘も完全に間違っている。
世界戦のバンテージルールは、ローカルコミッション(JBC)のルールに沿い、それをWBCなど各認定団体が承認、ルールミーティングで両陣営の確認をとった上で決定する。
当日は、相手陣営の代表者と、試合役員立ち合いのもとでバンテージが巻かれ最後に不正ができないようにサインが書かれて封印される。
JBCのルールは肌に直接粘着性のテープを貼ることを認めている。
井上というより、日本人ボクサーのほとんどが、まず肌に直接粘着性のテーピングを巻き、次に長さが規定で決まっている柔らかい布製のバンテージを巻き、その上から再び長さ6フィート(約1m83センチ)までのテーピングを使って固定するというやり方を採用している。
ただし、粘着性のテープをナックルパート部分に貼り付けてはならない。
このバンテージルールは、米国でもネバタ州、テキサス州、ニューヨーク州で採用されているが、海外の一部の地域や国で禁じられているところもあり、フルトン陣営はそこに活路を見出そうとしたのだろう。
またJBCも含め、テープ、バンテージ、テープ、バンテージと必要以上に重ねて巻く行為は「スタッキング」と称して禁じられている。「石こう」のように拳が固くなるとの指摘があるからだ。
フルトン陣営は、この部分も問題にしたかったのだろうが、井上の巻き方は、ルールに沿ったもので「スタッキング」ではない。これはクレームではなく完全なる“いちゃもん”だ
井上は、あきれたような苦笑いを浮かべて、こう反撃した。
「いやあ。なんかすごくナイーブだなと思った。自分は24戦やって全試合正々堂々と試合をしている。なんの記事を見ているかわからないが、すこしナイーブ。こちらも正々堂々と戦うのでご心配なくと」
するとラヒームトレーナーは再度マイクを取り
「ナイーブになっているのではないかと言われたが、私の仕事はフルトンが問題なく試合をできるように準備を整えること。選手のどちらかが有利になってはいけない、公平でなければいけない。
パンパンになったグローブでの試合は公平ではない。フルトンを守るため公平に試合を行われるためにコメントしたんだ」
と応戦した。
パンチ力への警戒と恐怖
なぜフルトン陣営は違反をしていない井上のバンテージに“いちゃもん”をつけたのか。
大橋会長は、「意味がわかんない。今までこれで世界戦19戦を戦い、問題になったことは一度もない。何を言っているのかわかんなかった。それほど警戒している。認めてきているということなんだろうね」と受け止めた。
あまりにも凄いパンチ力を恐れているのである。井上が、そのパンチ力に関して、いちゃもんをつけられたのは、今回が初めてではない。
2014年12月に行われたWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチで井上が王者のオマール・ナルバエスに初回から2度ダウンを奪い、2回KO勝ちを収めた際にも、リング上で相手陣営から「グローブに何か入れているんだろう」とクレームをつけられた。
その場で外して見せると「グレートだ」と逆にクリーンな強さを称賛されたことがあった。
実は、過去に元6階級制覇王者のマニー・パキャオや、スーパーミドル級の4団体統一王者であるサウル・カネロ・アルバレスなどのパンチャーも、バンテージの巻き方にクレームをつけられたことがある。《中略》
いずれも肌に直接テープを巻くことを「スタッキングだ」「違反だ」と抗議されたもので、2018年9月のカネロ対ゲンナジー・ゴロフキンの再戦の際には、控室にチェックに来たゴロフキンのトレーナーが、「これは違反ではないか」と猛抗議し、立会人に「違反ではない。認められている巻き方だ」と却下されている。
JBCや米国の主要なアスレチックコミッションが肌に直接テーピングを行う方式を認めている理由は、「拳のケガを保護するため」のもの。
拳がより固定されることで明らかにケガで減る。そして強打者が、この巻き方を好む理由も同じく拳のケガ予防だ。
井上も度重なる拳の故障に苦しんできたが、バンテージ職人の協力を得たのちに佐久間トレーナーが研究を重ねて、バンテージの巻き方を工夫するようになってから試合中のケガがなくなった。
元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏も、フルトン陣営のクレームの狙いをこう読み取る。
「それだけ井上選手のパンチ力を恐れているのでしょう。僕の現役時代も世界戦で同じようなクレームを海外陣営につけられたことがありました。
JBCは昔から肌に直接テープを巻くことを許可しています。何の問題もありません。フルトン陣営の狙いとしては、バンテージを薄くさせて、試合途中に井上の拳のケガを誘発しようという狙いもあるのかもしれません」
ましてや拳のケガで5月7日に予定されていた試合が延期になったのだ。
24日には前日計量及び両陣営が参加してのルールミーティングが行われるが、大橋会長は「もうひと悶着あるかもしれないね」と警戒心を深める。
フルトン陣営がWBC、WBOに直接、肌に直接テープを巻くことを禁じるように要請するだろうが、JBCの関係者は、認定団体は、従来通りローカルコミッションのルールを遵守する可能性が高いという見立てをしている。《後略》
[via:RONSPO]
https://www.ronspo.com/articles/2023/2023072303/
試合はNTTドコモの映像配信プラットフォーム「Lemino」で独占無料生配信される。
https://www.youtube.com/watch?v=9j5CrgNYDXA
ネットの反応
・Leminoっていうところで会員登録して観たら解約すれば無料で観られるってことか
>登録なしで観れる。前回の試合もそうだった。
・井上の試合観たいから午後休取った「どっかいくの?」て聞かれ、咄嗟に「診察で‥」と嘘ついちゃったw
・いよいよ本番!楽しみでしかない!
・井上尚弥はバキバキに仕上がってますね。
・尚弥選手いい顔してますね!
・フルトン髭剃っててワラタ
・フルトンに王者の品格を感じ、井上に燃えたぎる蒼き炎を感じた。
・フェイスオフも挑発行為はないものの、お互いに目線を外さないし、久しぶりにこんなピリピリした井上尚弥を見た。
・フルトンは気持ちの強さをとても感じた。
>あの体格でしっかり身体作って来ましたね。
・フルトン落ち着いてたね!雰囲気あるよ。
・目が離せない。すごい試合になりそうだ。
・フルトン腕は長いけども計量時では体格差はそれほど感じられなかったね。
・井上選手の新たな肉体凄いなぁ。これならスピード殺さずにパワーで押し切る戦いもできるね。
・井上には、ライト級まで行っちゃおうよ!ってくらいに夢を見てるのでこんなところで転んでほしくない。
・めちゃくちゃ楽しみなカードだが、塩試合の予感しかしないのも事実。フルトン延々とアウトボックスに徹しそう。
・フルトンのディフェンスはメイウェザーの動きに近いんだよなあ
>まあメイウェザーになれるかってとこだよな
・井上のボディが炸裂し圧勝するだろう。5R以内でKO
・少しは勝負なる相手じゃないとつまらんな
・ノックアウトなら井上。判定ならフルトン。簡単な相手ではない。
・フルトンが勝てる要素ないだろw
・ドネア「ほんの少しフルトン有利」
>井上と二度戦っているドネアが言うと意味がある。
>自分が階級上げて全く通用しなかった経験があるからこういう発言になるのも頷ける
>嫉妬はダサいな
>まあ、蓋を開けてのお楽しみやね
・記者会見のバンテージの一件からピリついてきたな。
・JBCではオッケーなんで井上に言うことではないw
・米国でしか闘った事の無いフルトン陣営は、ひょっとすると世界共通だと思っているかも知れない。米国人って自分達が全てだと思っている節があるからね。
・フルトン陣営がかなりピリピリしていて面白かった
・トレーナーはフルトンが勝てない事分かってるから逃げ道作ってあげてるんだよな、優しい奴や
・ロドリゲスやドネア2みたいに、結果的にモンスターを怒らせてしまって痛い目を見ることになるだろう
・バンテージ問題は、ドネア2以降に軽く話題になってるね。テーピングを肌に直接巻く行為自体が「スタッキング」と呼ばれる、拳を厚く固くする反則行為だと。ただ、テーピングを巻く際に相手陣営も不正がないように見るのが通例。ドネア2の時も相手陣営の前で堂々とテーピングを巻いているし、何の抗議もされていない。
・神経戦を仕掛けてきたか まともにやったら勝ち目ないと思ってることバレバレじゃねーか
・ナイーブって言葉に凄い反応してるな。
・井上選手のナイーブという言葉が伝わってしまって、通訳の人がsensitiveと意訳したのにフルトン陣営はナイーブという言葉に反応してしまっている。こういう時に和製英語ってややこしいよな。
・ナーバスの意味で使ったナイーブが意図せずナチュラルカウンターになってて笑うw
>井上が意図せずにしっかり煽り返してて笑う
・この文脈で行くと、ナイーブは幼稚とか下らんとかに相手は取るよね。
・両方の意図する所が伝わってない迷通訳。
・一部、自分なりに訳してみました。
「私の懸念についてフルトンと話したが、フルトンは懸念について(会見の場で)議論するなと、私(Wahidさん)の懸念について議論するなと頼んだ。フルトンは “彼(井上選手)がグローブにレンガを入れていようが、俺は勝つ “と言った。私はフルトンの勇気を賞賛すると同時に、トレーナーとして彼の安全に気を配らなければならなかった」
通訳「私がこのように発言をしているのも、我々は全力をかけて、そしてスティーブンフルトンそのもの、この本人が試合に向けて真剣に取り組んでこの試合に来たということです」
・通訳が質問者の和訳をハショリ過ぎてるのは何故?
・これは通訳がよくない。試合前におかしな誤解が生まれてしまった。
・重要な主張が全く伝わらなかったですね。あまりにフルトンのトレーナーがかわいそう。
・フルトン凄くいい人そう。もちろん井上に勝って欲しいが、フルトンにも頑張って欲しいと思った。
・バンテージへの追及はあくまで隠語。フルトン陣営の本音は「アレ」についてクレーンでやれということ。
>クレーンw何を吊るすんだよw
チャンピオンの中のチャンピオン。本物のチャンピオン井上尚弥。
見ていてため息が出るくらい惚れ惚れする強さに感じていたが、トーナメント戦辺りからは恐怖を感じて背筋が凍るくらいの強さ。まさにモンスター。