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井上尚弥 衝撃8回TKOの舞台裏 お互いの駆け引きがヤバすぎる!フルトンがカマしてきた驚きの秘策とは?

スーパーバンタム級最強と目されたフルトンに8回TKOで勝利をおさめた井上尚弥。

衝撃の完勝劇の裏にはどんな駆け引きがあったのか? 井上尚弥vs.フルトンの”勝負を分けたポイント”を元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏が徹底解説!

7月25日、東京・有明アリーナ。

リーチ差をものともせず1ラウンドからジャブの差し合いに勝ち、エネルギッシュに拳をふるう井上、それでもギリギリのところでクリーンヒットを許さないフルトン。

劣勢だった王者が7ラウンドに初めてジャッジ3者から支持を集め、判定まで長引くかと思った矢先の8ラウンドで、井上は左ボディーストレートから飛び込んだ右でぐらつかせ、素早い寄せから放った左フックでダウンを奪う。

立ち上がったところをコーナーに追い詰めてラッシュし、TKO勝利をもぎ取っている。《中略》

飯田の解説のもと、あらためて試合を振り返ってみたい――。

L字ガードでフルトンを誘い出す

飯田が注目したのが2人の立ち上がりだった。

逃げるフルトン、追う井上――。試合前に映し出されたVTRのなかでそう語っていたモンスターが繰り出した“仕掛け”に、飯田は声をあげて驚くことになる。

「分かりやすい例えで言えば、マイク・タイソンさんのようにガードを高く頭を振りながら前に出ていくプランを想像しがちですが、尚弥選手がガードを下ろしてL字にして、フルトン選手を誘い出そうとしたのには驚きました。

と同時に“そう来たか”と思いましたね。中央にポジションを取って、プレッシャーを強く掛ける感じでもない。もし前にグイグイ出ていったら、相手も下がったはず。

でもガードを下げているし、出てこないとなったらフルトン選手も王者のプライドがあっただろうし、下がるに下がれない。尚弥選手は技術戦をけしかけようとして、フルトン選手を焚きつけたわけです」

試合後の井上インタビュー
「フルトンのスタイルを研究する中で、L字は使えるなと。向かい合ったときに絶対にペースをとらせないのが作戦だった。L字で固めて、そこで圧を掛るのが狙いだった」

1Rでジャブを見切る

王者の心理状態も読んだうえで、井上は誘い出すことに成功する。技術戦とは、つまりジャブの差し合いの攻防。見切るために敢えて相手にパンチを出させるという駆け引きだったと飯田は読む。

「ガードをルーズにして、動かないことで逆に打たせているように感じました。それだけ見切る自信があったんでしょうね。

尚弥選手がガードを下げた分、お互いの距離はちょっと近くなります。尚弥選手は最初、後ろ重心でした。フルトン選手を引き寄せて、近づけさせて、打たせる。

彼は本当に目がいいんですよ。ジャブの打ち出しのモーションなんて、あのレベルくらいになるとほぼないと言っていい。それでも肩の動きとか、後ろ足の踏ん張りだとかちょっとした予備動作やクセを見抜くのが格段に長けています。

数発打たせてみたところで、パンチの軌道、スピード、距離をインプットできてしまう。今回もそうでした。

それを証拠に、1ラウンドの途中から重心が真ん中になっていて、ヘッドスリップで避けるようになっていました。ああ、もう見切ったんだな、と思いましたね」

試合後の井上インタビュー
「(試合のポイントは)距離感ですね。どちらの距離で戦うか重要視してきた。身長、リーチでフルトン優位、その中でペースをとることをテーマにしてきた」

ジャブの差し合いで完勝

ただ、井上がモンスターなのは、情報を集めていた後ろ重心のときでさえも、ジャブの差し合いに勝っていたことだ。この1ラウンド、フルトンのジャブを被弾していない。

「普通、後ろ重心から自分のパンチを当てるって簡単じゃない。ただ尚弥選手には当てはまりません。重心移動のスピードが速く、相手を呼び込んでいる分、距離も詰まって相手に届かせることができる。

リーチが長く、体格差で上を行くフルトン選手に対してジャブの差し合いでここまで完璧に勝てるなんて、ボクシングに詳しい人でも思わなかったんじゃないですかね。

まだスーパーフライ級で戦っていたころの尚弥選手ならおそらくガードを上げて、激しくプレッシャーを掛ける戦い方を選択していたと思うんです。

それもこれもいろんな経験を積んで、場数を踏んできたからこそあの戦い方を選択できたんだろうなと感じます」

完璧なスタートだったが…

誘い水でフルトンを下げさせず、体格的に不利とも思われたジャブの差し合いで完勝したうえで相手の情報のインプットも完了するまさに完璧すぎるスタートだった。

井上の術中に、まんまとフルトンがはまったという見方でいいのか。

そう飯田に問うと、顔をしかめて「そうとも言い切れないんですよ」と応じる。飯田の目には不気味なフルトンの姿が映っていた――。

フルトンの奇策

挑戦者の“誘い水作戦”に唸った一方で、スーパーバンタム級の猛者に競り勝ってきた2団体世界王者が取ってきた“奇策”も世界のボクシングを長年見てきた飯田覚士を驚かせていた。

「フルトン選手がどうしたかっていうと、これまでの試合と比べて足のスタンスを明らかに広げてきた。その前足で尚弥選手の踏み込みを邪魔して、懐の深さをつくっていたんです。

だから同じオーソドックス(右構え)なのに、前足がぶつかるシーンがよくありましたよね。

尚弥選手が出す左足の前に、自分の左足を置くってことは体を横向きにしなきゃいけないため右ストレートを打つにしても、腰が入らない。それでも踏み込みを止める、邪魔するっていうことを優先した。

その目論見はまずまずうまくいったとは思います。僕もこれまでボクシングを見てきたなかで足の長いリーチをこのように使うのかって、新たな発見ではありましたね」

左ジャブ、左ボディーストレートなど井上のパンチは単発で浴びつつも、いつもより10cmくらい広げた前足で踏み込みを妨げてスピードに乗った強打の威力を弱めて、何とかさばいていたというのが飯田の見立てである。

「尚弥選手からすると、足1つ分前に出されている分、外から打ちにいくことを考えなくてはなりません。フルトン選手の前足を踏み越えていく分、ジャンプというか遠い距離に対する対処が必要になった。

1ラウンドでジャブの差し合いに勝って、減量苦から解放された尚弥選手にはパワフル感がありました。序盤KO勝ちもあり得るなと感じました。でもそうはならなかった。

途中、捕まえさせなかったのは広いスタンスを有効利用したフルトン選手の巧さでした」

フルトンの足を踏み作戦

「尚弥選手が1ラウンドの途中で、相手の足に当たってつまずいた場面があったんですよ。でも凄いなと思うのが、それ1回だけなんです。踏み越えていくなり、違う角度から攻めようとするなりしていました。

こんな場面もありました。3ラウンドに尚弥選手がインサイドに入ってきたときにフルトン選手が左フックを合わせようとしたんです。これこそがフルトン選手がこの試合で絶対にやりたかったこと。

簡単には入らせないが、入ってきたらきたでフックなりアッパーなりでスピードに乗ったショートで合わせてやるぞ、と。それを尚弥選手はこともなげにヒュッとかわしたんです。

合わせようとしたスピードパンチがかすりもしないわけですから、フルトン選手からすればかなりショックだったのではないでしょうか」

フルトンは外堀を埋められていくような感覚だったのかもしれない。肉体のみならず、心も削られていく感覚。

試合後の井上インタビュー
「つま先が当たったら、そこからぐっと踏んできた。集中力が途切れるんですよ。異様に左足が斜めに入り込んできた。事前に映像で見たときは気にならなかった。ああいうのは、練習をしていないとできない。わざと。戦術だったんでしょうね」

戦法を変えたフルトン

6ラウンドまでの採点は圧倒的に井上が有利であることは誰の目から見ても明らか。そこで戦法を変えてきたのはフルトンのほうだった。

「7ラウンドに入ってからいつものスタンスに戻してきたんです。彼も踏み込んでのパンチを打ち込んでいくためにスタンスを狭めて、グッと行くつもりなのかと思いました。

でも後で考えてみると、むしろ(体力的に)きつくなって緩めてしまったというほうが正しいように感じました」

ジャッジ3者ともに7ラウンドはフルトンの10−9。しかしそれは最後の抵抗にすぎなかったことが次の8ラウンドで証明される。

井上は左ボディーストレートを叩いたその刹那、鋭い右を浴びせてぐらつかせ、追い足で左フックを見舞ってダウンを奪ったのだ。




井上の右ストレート着弾の瞬間


追撃のフライング左フックの瞬間

「繰り返しになりますけど、尚弥選手がそれまで仕留められなかったのは、相手の前足が邪魔になっていていつも通りの踏み込みができなかったから。

フルトン選手は懐を深く保った分、クリーンヒットを回避できた。それがスタンスを狭めてしまうと、突っ立つ形になってしまう。

尚弥選手がいつもどおりの踏み込める状況になって、そのチャンスを逃さなかったということ。スタンスが広かったままなら続く右は打てなかったと思うんです。

このときストレートというよりちょっとかぶせる感じで打っていました。フルトン選手のガードの上から当てるってことは、やっぱりそれだけ近くに入らないといけませんから。

7ラウンドより8ラウンドのほうがあからさまにスタンスは狭くなっていて、井上対策を解いた瞬間に、あのダウンシーンが待っていました」



うつろな目でダウンするフルトン

驚きは、これで終わりではなかった。立ち上がったフルトンに対し、井上がコーナーに追い詰めてパンチの雨を降らせて試合を終わらせたシーンだ。



コーナーに追い詰めパンチ連打でTKO

「フルトン選手と言えばクリンチ。腕で巻き込む力が絶対的に強くて、戦った相手はみんな逃げきれずに巻き込まれてきました。コーナーで彼は、何度もクリンチにいこうとしているんです。

でも尚弥選手が体のパワーでそれを許さない。足腰の強さ、体幹の強さでそれを弾き飛ばしていました。実際、体も大きくなってスーパーバンタム級の肉体でした。

死にもの狂いでやってきたクリンチに巻き込んでしまえば、あのラウンドは逃げ切られたかもしれない。どうしてクリンチできないんだって一番驚いたのはフルトン選手だったはずです」

終わってみれば井上の完勝。ほぼポイントを失っていないジャッジペーパーを眺めれば、一方的な内容だったように映る。

しかしながらその内実は、両者がお互いに研究し、それを実践したうえでのスリリングな駆け引きの応酬であったことを書き記しておきたい。

そして頭脳と肉体をマックスにフル回転させたヒリヒリとした戦いのなかで、一度も劣勢に追い込まれることなく井上は“その上”をあっさりと超えていったことも。

[via:NumberWeb]
https://number.bunshun.jp/articles/-/858221
https://number.bunshun.jp/articles/-/858222

【記事全文】
井上尚弥は「何が凄かったのか?」元世界王者・飯田覚士がフルトン戦を徹底解剖!|NumberWeb
「かなりショックだったのでは…」井上尚弥はフルトンの“奇策”をどう打ち破った?|NumberWeb

【ダウンシーン動画】

【リングサイドからの動画】

【スロー動画】

【試合全編動画】
https://www.youtube.com/watch?v=o-QvGf6IWdg

【見逃し配信】8/7 23:55まで
WBC・WBO世界スーパー・バンダム級 フルトン vs 井上尚弥|Lemino

ネットの反応

・井上選手やはり凄すぎる負ける姿が想像できない
・もはやボクシングという名の総合芸術。
・1Rからまるで空手や剣道の「突き」のように井上のグローブがボディーに突き刺さっていた。回を追う毎に,フルトンの戦意が失せていくのが分った。
・2Rの井上尚弥の「顔を打って来い」のポーズ見て尚哉は完璧に見切っていると思った。
・フルトンは1ラウンドが終わったら、パンチのスピードと威力がぜんぜん違う事に気付いたようだ。それ以降、表情も暗くなり大した攻めも出来なかった。力の差を思い知ったと思う。
・フルトンの左足が異常に前に出ていて腰が引けてたもんなぁ。
・試合ではフルトンがへっぴり腰に見えて、「何?」と思いましたが、このような理由があったのですね。
・さすが飯田さん1番的確で分かりやすい記事でした
・何度か井上の足を踏んでいたし、効果テキメンだったようですね。
・フルトンのラフプレーエグい。足踏む方の靴紐は黒で、踏まない方の靴紐はイエローで気を逸らさせる。
・フルトンじゃなくてフミトンやな
・足もとを気にして見るとフルトンが足を踏みにきてるの上手いな
・フルトンが足を踏むタイミングは似ていて、後半はそのタイミングに合わせて井上が打ちに行っている気がする
・8Rを見返すと、ダウンを取った右を打つまで左しか出していない。
・顎を捉えた右もタイミングをワンテンポ早くしている。この回は最初から仕留めに来たんだなと思った。
・フルトン、左ボディを食らった瞬間、視線を正面から外してない。でもここで来るだろうとわかってる井上の右をブロックもスウェイもできない。それだけ井上尚弥のパンチが早いってこと。
 >ボディジャブが刺さりすぎてダメージの蓄積により反応が明らかに遅れましたね。
・汚い訓練された足踏み、試合後戦った相手に敬意も払わず目も合わせない、フルトンは永遠に名誉を失った。
・5Rあたりからフルトンが適合したように見えたのは、井上が全部見切ったのでスピードを落として誘ったんだと本人は述べてますね。
・フルトンの広いスタンスはメイウェザーがパッキャオにやった作戦と同じで、強打を警戒して懐を深くする効果と踏み込・ませない効果があるが、井上はそれを乗り越えた。
・フルトンは他にもいろいろ変えてきたね。まず踵重心のステップを爪先重心に変えてきた。またL字ガードをやめて両拳で顔面を最初からガードしていた。
・フルトンのクリンチを振りほどいてからの怒涛のラッシュは恐ろしさすら感じる
・最後ラッシュの時井上の右フックがテンプルに入ったときフルトンのガードが下がった。そして左フック最高のタイミングでレフェリーがストップ。ナイスレフェリングだった。
・リングサイドからの映像だと右をもらったフルトンの首が前から後に吹き飛んでるように見えるくらいの衝撃、あれでよくフルトン立ったよなあって感心する。
・想像を遥かに超えるベストバウトでした!
・ネリもカシメろも今頃青い顔してるんだろうね(笑)
・勝者には栄光を、敗者には喝采を。

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