下手な役者に薄っぺらい脚本、ベタな演出、そして、プロダクションへの忖度――。
日本のドラマ業界が抱える数多の問題点を、各局の情報番組でコメンテーターを務めるデーブ・スペクター氏が敢えて喝破する。
僕は日本のテレビ番組すべてがダメと言ってるワケではありません。ニュース、バラエティ番組は世界的に見てもレベルが高いと感じています。ただ、ドラマだけは本当にひどすぎる。
20~30年前と比べて進歩するどころか、どんどんクオリティが下がっている。特に問題なのは役者の演技力。僕もテレビ業界で仕事をしてるから、あんまり厳しいことは言えませんが……。
まぁ、演技のレベルはあらゆる先進国のなかでもぶっちぎりで最悪だと思いますね。
もちろん、なかには面白いと感じるドラマもあるんです。「家政婦のミタ」みたいに伝えたいテーマのハッキリした、ハイコンセプトな作品は欠かさず観ていました。
役所広司や樹木希林、桃井かおりをはじめ、芝居のうまい役者もいる。名作として印象に残っているのは97年にTBS系で放映された「青い鳥」ですね。
主演した豊川悦司と夏川結衣の不倫逃避行を描いているんですけど、オーバーな演技は一切なく、どのシーンも抑制が利いていて画面から緊張感が伝わってきた。
でも、どうして20年も前のドラマを取り上げるのかと言えば、それ以降、大人の鑑賞に堪える欧米型のドラマが作られていないからです。
連ドラに出演する役者の8割は、とにかく芝居が大げさで「わたし、いま演技してまぁす!」と顔に書いてある。それに、喋り方が不自然だからセリフに集中できない。
以前から不思議に思ってるんですが、日本の役者はセリフの途中に奇妙な間を一拍置くんです。「なんで、そういうことを、言うんだ、君は?」といった感じで。
あと、セリフの語尾で息を吐きますよね。「この前さ(はぁー)、どうして(へぇー)」、と。溜めを作って聞きやすくしているつもりかもしれないけど、セリフが隙間だらけで素人っぽい印象しか残らない。
だって、僕らが会話をする時に、そんな勿体ぶった喋り方しないでしょ。その上、すぐに感情を剥き出しにして怒鳴る。大声でセリフを叫ぶことが、気持ちのこもった演技だと勘違いしてるんだろうね。
とはいえ、役者だけを責めるのはかわいそう。何しろ、日本のドラマに出演してるのは、芝居経験に乏しい、モデルやアイドル上がりの素人同然の芸能人が多すぎるから。
制作スタッフも大変ですよ。撮り直す時は、「こっちの技術的なことで、もう一回お願いします!」と言うんですけど、本当は芝居の技術が足りないだけ。
しかも、厳しく指導して女優に泣かれたら面倒だし、どっちみち良くならないから、適当なところで切り上げる。これで傑作ができると思いますか。
僕は単に日本のドラマの悪口を言いたいワケではありません。むしろ、素晴らしい作品を生み出すために建設的な議論がしたい。
それだけに、いつまで経っても下手な役者を使い、海外ドラマに学ぼうとしないテレビ局のドラマ作りの姿勢には失望してるんです。
実は、欧米ではここ10年ほどテレビドラマの「黄金時代」が続いています。
火付け役となったのは99年にスタートした、現代版「ゴッドファーザー」と言うべき骨太な群像劇「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」。
それ以降、ケビン・スペイシーが製作総指揮を務めた政治ドラマ「ハウス・オブ・カード」や、圧倒的なオリジナリティが魅力の「ブレイキング・バッド」といった話題作が続々と登場しています。
第一次大戦前後を舞台に貴族と使用人の人間模様を描く、イギリス発の「ダウントン・アビー」は、世界で最もヒットしたドラマになりました。そして、「ゲーム・オブ・スローンズ」は言うまでもない。
正直、こうした海外ドラマは制作費も映画並みなんですが、作品の完成度はもはやハリウッドを凌駕している。
映画業界全体が儲からなくなったせいで、ハリウッドが手掛けるのは海外でもウケやすい大味なアクションや、コミック原作ばかり。
僕もかなりの映画好きだったけど、いまや映画館に足を運ぶのは年に2、3回程度。一方で週5~6本の海外ドラマを欠かさず観ている。それくらい、いまの海外ドラマは面白い。
たとえば、「ブレイキング・バッド」のストーリーはこうです。末期がんを宣告された田舎町のサエない化学教師が、障害を抱える息子に財産を残すため覚醒剤の密造に手を染め、闇社会とのトラブルに巻き込まれる――。
こんなドラマを日本のテレビ局がゴールデンタイムに流せますか?
しかも、これだけ型破りなストーリーなのに、徹底的にリアリティーを追求していて、主人公の息子役には実際に脳性麻痺で下半身が不自由な俳優をキャスティングしている。
その結果、一般的には無名な役者しか出演していないのに、アメリカで社会現象を起こすほどの大ヒットを記録したわけです。もう日本とはドラマを取り巻く環境が全く違う。
ジョージ・クルーニーの出世作となった医療ドラマ「ER」では本物の看護師を役者として使い、手術シーンで現実と同じ動きをさせる。
オペ中の会話も医学用語をそのまま使って臨場感を演出するんです。刑事ドラマにも必ず元警察官をキャスティングしますね。
日本でも医療ドラマが流行ってますけど、テレ朝の「科捜研の女」では主演の沢口靖子の白衣が、まぁ、パリッとしてキレイなこと。過酷な職場なはずなのに、いつ見ても白衣にノリが効き過ぎてるせいで現実味がありません。
他のドラマで気になるのは、子役の衣装がオシャレすぎること。ふつうの家庭は、子供に毎日新品の服なんて着せないって!
「ブレイキング・バッド」の主人公なんてL.L. BeanやGAPのヨレヨレのシャツしか着ない。細部へのこだわりがないとドラマ全体のリアリティーをぶち壊してしまうんです。
プロダクションとの癒着を断つ
最近は日本でもCSやBS、HuluやNetflixで日常的に海外ドラマを観ることができます。海外ドラマを観慣れてくると、日本との差は一目瞭然。
下手な役者に薄っぺらい脚本、ベタな演出、安っぽい映像技術と、日本のドラマには負の要素が詰まってる。しかも、予算は削られる一方でしょ。知らぬが仏を決め込んでいるのはテレビ局関係者だけです。
では、日本のドラマが欧米に追いつくにはどうすればいいか。
それにはまず、役者を変えることです。無名でも芝居のできる俳優をキャスティングすれば間違いなくドラマの質は上がる。しかも、演技の下手な「大物」や「アイドル」を外せば予算も浮きます。
でも、それができないワケです。
原因は、日本のドラマがキャスティング先行で進められるから。テレビ局がドラマ制作で大事にしているのは、視聴者ではなく芸能プロダクションとの関係です。
テレビ局の幹部がプロダクションに接待されて、「うちの子、頼みますよ」と言われたら断れない。加計学園と同じで忖度なんですよ。
それで「大抜擢」されるのは、演技力どころか一般常識もないカワイイだけのタレント。スターバックスのバイト面接でも落ちるような、ね。
結局、テレビ局がプロダクションの意向を汲んで「大抜擢させた」だけのこと。バラエティ番組と変わらない仕組み。
少し考えれば、この体質がおかしいことは誰にでも分かります。一流の寿司屋が接待攻勢を受けたからといって、マグロの仕入れ先を変えますか? それで店の評判が落ちたら客が離れてしまう。
こんなことが続けられるのはテレビ業界だけでしょう。本当に有難いですね、視聴者に感謝しないと。
アメリカではテレビ局幹部の給料がもの凄く高いから、そもそも接待文化がない。彼らはプライベートな時間をムダにして接待に付き合ったりはしません。仕事が終われば帰宅して、家族と一緒にドラマを観ています。
それが日本だと、制作現場は深夜1時過ぎまで撮影と編集に忙殺され、幹部になれば平日は毎晩のように接待、休みはゴルフ。
日本で誰よりもテレビを観ていないのはテレビ局関係者なんです。もちろん、海外ドラマを研究して、演出やカット割りを学ぼうなんて考えもしない。
ですから、日本のドラマの質を上げるには、まずテレビ局とプロダクションの癒着を断ち切らないとダメ。テレビ局は2年間、ドラマの制作から手を引いて海外ドラマだけを流す。
そして、携帯電話の番号を変えてプロダクションとの縁を切る。さらに、これまで接待されていた時間を使って海外ドラマを本気で勉強する。そこまでしてくれるなら、僕はいくらでも応援します。
[via:「新潮45」2017年9月号]
http://news.livedoor.com/article/detail/13498826/
ネットの反応
・激しく同意。海外ドラマの再々放送の方が楽しめる。
・全くの的確な指摘 正に溜飲が下がるというやつ
・よくぞ言ってくれました!その通りだと思います。
・アイドル、ジャニーズ外して作ってみろと言いたいです。
・正論だなぁ。海外ドラマの方が何倍も面白い。
・確かに舞台染みた大袈裟な芝居はもう時代に合わないな。日本は遅れてるよ。
・日本の子役の演技なぞ、芦田愛菜が最高峰なんでしょ?もうガッカリしちゃいますね。
・デーブの意見、良く分かります。日本のドラマも改革というか、変わって行って欲しい。
・確かに最近はアメリカドラマばかりみてるよ
・映画も音楽も洋物が最高!っていう考え方自体は好きじゃないけど同じような顔ぶれでつまんないのは同意。
・コードブルーも流行りの美男美女の大根役者揃いでせっかくの緊張感もコントのようだ。
・全く同感、私が日本のドラマや映画を見ないのは、その「わざとらしさ」。
・アイドルを売り出したい事情もあるんだろうけど、抜擢された方も可哀想って言えば可哀想。
・アメリカが全て正しいとは思わないが、この評論は同意する。
・役者よりも脚本家のレベルの低さの方が問題のような
・事務所がゴリ推しする役者しか使えないんで仕方がない
・演技も問題あるんだろうけど、心情から何から何まで全部セリフで説明するのがダメだと思うわ
・海外ドラマ高く買えってことじゃねw
・外国人に日本語の台詞回しダメ出しされるのかw
・確かに青い鳥は傑作だったな
・事実だよなあ ほんと下手くそだらけ ジャニ、AKB、EXILEとか消えろよ
・演技が上手いドラマを一般視聴者が求めていない
・ぶっちゃけ演技とかよく分からないw
話が面白ければ演技とかはあんまり気にならない
・無理にアメリカの真似する必要はないけど日本のドラマがクソなのはその通りだわ
・出演者はアイドル、イケメン、ジャニーズの大根役者、内容は好きだ嫌いだ愛してる、これじゃだれも見ませんよ。
・芸能事務所の方が力を持ってしまうと、こういうことになってしまうんだよね
欧米から見ると、芸能事務所側が中心になってしまってる構図は相当に異様に見えると思う
10倍返しの役者も何処に出てきてもあの雰囲気のままだよねー
別に欧米型のドラマは求めてませんが…
デーブに言われても…意味プ
芸能事務所が力持ってるからキャスティングが先に決まって演技、ひいては内容もショボクなるってのは日本映画も一緒だな。
ドラマが昔より面白くなくなったと感じた俺は感性が鈍化したのかと思ってたが実際に面白くない理由はこれなんだと分かったよ