5月31日、日本テレビは、同局が手がけたドラマの原作者が急死した問題について会見を開き、「社内特別調査チーム」が行った調査結果を報告。しかし、その内容に波紋が広がっている。
昨年10月より放送されたドラマ『セクシー田中さん』の原作者である、芦原妃名子さん(享年50)が脚本トラブルを告白した直後に急死。
その後、同作を連載していた「姉系プチコミック」が所属する小学館の第一コミック局が声明を発表し、真相究明を求める声が日本中で高まることに。
そうした状況を受け、日本テレビは2月に社内特別調査チームを設置し、脚本の内容をめぐって、芦原さん、日本テレビ、小学館サイドの3者間でどのようなやりとりが行われたかについての調査を進めていた。
日テレは、この報告書のなかで原因について5つの観点で分析。
企画の段階での日テレと小学館の担当者でのミーティングにおいて、「原作サイドから伝えられたドラマ化に向けた要望が、制作サイドに許諾の条件、あるいはこれに近い強い要求であるとは伝わらなかった」と記述。
そして「この点は特に、終盤のドラマオリジナル部分の制作時における原作サイドと制作サイドの噛み合わないやり取りに繋がったとみられる 」としたうえで、個別の改変ポイントの説明不足と撮影の取り直しの対応の悪さなどが発生。
「制作サイドは、本件原作者の本件脚本家に対するネガティブな印象を拭い去れなかった」と分析していた。
こうした経緯を受け、芦原さんが直接手がけることになったドラマオリジナルの9話・10話のクレジットに、降板した脚本家の名を掲載するかどうかが「決定的なトラブル 」を招いたと説明。
クレジットを表記されなかったことに納得できなかった脚本家がSNSを投稿し、それをきっかけに芦原さんがブログを更新したと綴っている。
97ページにもわたって内容が綴られていたこの報告書だが、芦原さんのことを指した”ある表現”が波紋を呼んでいる。
報告書の中で、トラブルの発端について「ドラマ化にあたって制作サイドが考えていた根幹的な方向性や物語の軸について、原作サイドとのすり合わせ・示し合せが十分ではなかった 」としていた日テレだが、小学館との打ち合わせの記録にこのような記載があったのだ。
「本件原作者は以前、漫画のドラマ化で揉めたことがあり『難しい作家』(原作へのこだわりが強い作家)であり、原作に寄り添ったドラマ制作をお願いする旨の発言があった」
日テレの調査報告書
「難しい作家」表現に批判殺到
その後も2回にわたって、この「難しい作家」という表現が登場。
ドラマ化に際して「原作に忠実に」という条件を事前に出していた芦原さんのことを“難しい作家”と表現していたことに、X上では「失礼だ」と批判が殺到した。
《難しい作家って何よ?芦原先生に失礼すぎる 原作に沿ったドラマを原作者が望むことが難しい作家なのか?至極当たり前の条件だろ どんな脚本でもOKという原作者もいるだろう でもそれが当たり前のドラマ制作環境っておかしいだろ 物言わぬ作家が当たり前っておかしいだろ》
《今日東京行く電車の中で日テレの報告書読んでたけど、なんか原作者が可哀想すぎる…って悲しくなってしまった……。こだわりの強い難しい作家って、こだわりが強いからこそ素晴らしい作品を生み出せるんじゃないのかな》
《日テレの報告書ようやく全部読みました 難しい作家という言葉のチョイスから滲み出る本音、途中で嘘ついた(最悪)のも軽視からだなと思った どうしても私は原作者側に感情移入してしまうから、この報告書の内容はかなりしんどい》
《#セクシー田中さん の報告書読んでます。コミュニケーションの齟齬が多すぎて悲しい……。こんなちぐはぐな中で企画が進められていたと思うと……。あと、先生を『難しい作家=原作へのこだわりが強い作家』と認知しているのも悲しい。原作へ愛がない作家なんていないはずだよ。》
[via:女性自身]
https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/2332123/
小学館の調査報告書
小学館は日テレ側を批判
芦原妃名子さんの死去を巡り、原作を出版した小学館は3日、社内の特別調査委員会の報告書を公表した。
「日本テレビ側が原作者の意向を代弁した小学館の依頼を素直に受け入れなかったことが第一の問題であるように思われる」と指摘した。
報告書は、日テレは「契約」時に、芦原さんが脚本を書く場合もあると合意していたと指摘。
芦原さんが作品の世界観を守るため、小学館を通じて何度も脚本家に意向を伝えていたにもかかわらず、日テレ側が十分に伝えていなかったとし「原作者と脚本家との間を調整するという役割を果たしていない可能性」があると批判した。
[via:産経新聞]
https://www.sankei.com/article/20240603-MFHQD2KIG5L37NKO7RP3QDCRLI/
以前にも原作改変問題
小学館の報告書の中で同社は、本件以前にもメディアミックスにあたり原作が改変され、修正を重ねるケースがあったことを明かした。
報告書には映像化までの経緯や芦原さんのこれまでの映像化された作品の詳細、本件の問題点などが記載されていた。
その中で、同社がこれまで取り組んできたメディアミックスについて触れ、「ドラマ完成までに生じる問題」として「原作改変の問題」について言及。
漫画編集に関わった社内の複数のヒアリング対象者によると、「これまでも原作改変がたびたび問題になった」と明かした。
同社は「漫画とドラマでは表現方法が異なるのでどうしても原作を改変せざるを得ないことは共通認識として編集者にはあるところ、原作者が許容できないほどに原作からの改変をされ、編集者が修正交渉をすることもよくあったようである」と説明。
その上で、「実務の実際では、改変が当然できると考えているようなテレビ局のプロデューサーもいる。テレビ局は時間に追われ、脚本を作りながらドラマ制作を進めていくので、作家にとって熟考する時間的余裕がなかった例も少なくない」と、局側への理解も示した。
[via:スポニチ]
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2024/06/03/kiji/20240603s00041000463000c.html
主演だった木南晴夏も大迷惑
『セクシー田中さん』
◇時系列まとめ◇
23年4月
相沢さんがドラマの脚本を執筆することに同意
6~7月
第4話でエピソードの一部入れ替えを芦原さんが認めず。やりとりの末、芦原さんの意向に従って作成
8月
芦原さんから8~10話のプロットが制作側に送られる。芦原さんの意見は「変更は基本なし」だったが、小学館の担当者は「一切の変更を許さないわけではない」と伝えた
9月
3日にクランクイン。その後プロデューサーが小学館の担当者に「相沢さんが芦原さんの指摘を読むのがつらい」と言っていることを告げる
10月
小学館の担当者からプロデューサーに対し、8話以降は必要な変更以外はしないでほしいと要請したが、プロデューサーは無理との回答。撮り直しが発生
11月
相沢さんが9、10話の脚本から降りると決める
12月
15日にクランクアップし、24日に最終回。28日、相沢さんが「苦い経験」とインスタに投稿
24年1月
26日に芦原さんがSNSで制作側とのトラブルを公表。28日に「攻撃したかったわけじゃなくて」と更新。29日、芦原さんの急死が判明
2月
日テレは社内特別調査チームを設置
5月
日テレの社内特別調査チームが、調査結果を公表
6月
小学館が「特別調査委員会による調査報告書公表および映像化指針策定のお知らせ」と「映像化指針」を公表
調査報告書で浮上した「プロデューサーの大罪」
今年1月29日にドラマ「セクシー田中さん」原作者・芦原妃名子さんが亡くなったことを受けて、日本テレビの社内特別調査チームが調査報告書を発表した。
昨年までテレビ局に勤務する社員弁護士として、数々の社内調査に関わってきた元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士に報告書を読んで解説してもらった。
西脇亨輔弁護士
芦原さんの死とは向き合わないことを選択した調査チーム
今回の報告書は本文だけで91ページの大部だが、その冒頭を読んで私は呆気にとられた。そこには調査の目的についてこう書かれている。
「本件原作者の死亡原因の究明については目的としていない」
では一体何のためにこの3か月間、調査を行ったのか。
ドラマ制作のなかで貴重な命が失われたから、その原因を明らかにするために調査をしたのではないのか。
私はこれまでテレビ局の法務部員として社内調査に関わってきたが、調査を始めるときには内容が散漫にならないよう最初に調査の目的、優先順位をはっきりさせる。
今回の日本テレビの調査はその優先順位を決める時点で、芦原妃名子さんの死とは向き合わないことを選択していた。
「必ず漫画に忠実に」をめぐる小学館と日テレの「認識の違い」
しかしその報告書にも様々な新事実が明かされていた。そしてそれらが浮き彫りにしていたのは、芦原さんとドラマプロデューサーとの信頼関係が失われていき、悲劇へと向かう姿だった。
報告書の内容は多岐にわたるが、両者の関係に焦点を絞ると以下のような流れになる。
まず日本テレビと小学館の間で「セクシー田中さん」ドラマ化の話が大筋でまとまったのは、日テレ側によると昨年3月。
この時、小学館側は「漫画をドラマ化する以上『自由に好き勝手にやって下さい』と言われない限り、原作に忠実にドラマ化するのは当然だ」という認識だったと日テレの調査に対して回答している。
一方、日テレ側のチーフプロデューサーはヒアリングに、「必ず漫画に忠実に」などの条件がこの時点で出されていたら「ドラマ化は無理である旨きちんと断る。時期的にもまだ他のドラマへの切り替えも間に合う」と答えたという。
芦原さん抜きの会議で「キャラクターの設定変更」
食い違いはここから始まっている。原作者にとっては原作が守られることが大前提だ。一方、ドラマプロデューサー側は「改変できない原作など取り扱わない」という意識を露わにしていた。
そして今回がゴールデン・プライムタイムでの初作品だった現場プロデューサーは、原作者がいない場所で脚本家らを交えて「よりよいドラマ」のための議論を行い、原作者にはその結果だけを伝えた。
報告書にはこんな例が書かれている。
原作では主人公「田中さん」を慕う後輩「朱里」について、父親のリストラなどもあって短大に進学したという設定になっていた。
しかしプロデューサーらの会議では「短大は最近の若者にはリアリティがないのでは」「リストラはドラマとして重すぎる」等の意見が出て、結局「父の会社が不景気になり、本当はかわいい制服の私立高校に行きたかったけど、公立高校に行くことにした」という設定に変え、芦原さんに返した。
それに対して芦原さんは、かわいい制服など「心底どうでもいい」と回答したという。
プロデューサーなりの「よりよいドラマ」のための議論だったのだろうが、議論の過程なく突然結論だけ伝達されたら、どんな原作者も疑心暗鬼になるだろう。
日テレに弁護士を通じて内容証明郵便まで送っていた脚本家
そして去年10月上旬、決定的な出来事があったことを報告書は明かしている。
ある場面に想定と違う点があったため、芦原さん側がプロデューサーに問い合わせをした。これに対してプロデューサーは「そのシーンはもう撮影してしまった」と答えた。
しかし、それはウソだった。
実際にはそのシーンは撮影前だったが、芦原さんから何か言われて今から変更になったら大変だと、プロデューサーは撮影が終わったことにしたのだった。しかしその後これが芦原さんの知るところとなり、信頼関係は壊れていった。
そうした中でドラマ終盤を迎え、原作漫画が未完でドラマオリジナルとなる部分について、芦原さんは自分の手で脚本を書くことを選んだ。
そのことを脚本家に伝える際、プロデューサーは「自分も大変憤っているがこれをのまないと放送できない」と説明、脚本家は最終話放送後にSNSで「最後は脚本も書きたいという原作者たっての希望があり、過去に経験したことがない事態で困惑した」と芦原さんを批判するような発信を行った。
さらに脚本家は今年1月16日、弁護士を通じて日本テレビ側に内容証明郵便を送付し、芦原さんが脚本を書いたドラマ第9話、第10話には自分のアイデアも含まれているので自分を脚本家としてクレジット(氏名表示)するよう要求。
事態が混迷する中で芦原さんは同月26日に事の顛末をブログで公開、3日後の29日、亡くなったことが分かった。
なぜプロデューサーが機能しなかったのか
芦原さんが亡くなる直前のSNSの応酬について、報告書概要版はこう結論づけている。
「事態の収束のために日本テレビとして取り得る選択肢はほとんどなかったといえる」
だからもっと手前で対応を、と報告書は続けているが、いや、この段階でもテレビ局側の「選択肢」は色々あったはずだ。
プロデューサーが芦原さんや脚本家から話を聞いたり二人が直接意見交換できる場を作れば、事態は打開できたかもしれない。現に芦原さんの死後、脚本家はSNSにこう書いている
「芦原先生がブログに書かれていた経緯は、私にとっては初めて聞くことばかりで、それを読んで言葉を失いました」
なぜ全てのクリエイターの中心でその交通整理をすることが仕事のはずのプロデューサーが機能しなかったのか。なぜ皆が腹を割って話す場所を作ろうとしなかったのか。そしてなぜウソまでついてしまったのか。
プロデューサーが芦原さんに撮影前のシーンを「撮影済み」とウソをついたことについて、報告書は「撮影スケジュールの進行やキャスト・スタッフ等の負担を気にしたA氏(注:プロデューサー)の心情は理解できるものの、本件原作者との信頼関係を保つ上で、やはりこのような対応は避けるべきだったといえる」と結論付けている。
小学館側には書面ヒアリングだけ
しかし、それは甘すぎる。こんな行いを「理解」などしてはいけない。
原作者を自分の言いなりになるべきものと考え、うるさくならないように嘘までつき、最後は脚本家に原作者への「憤り」を打ち明けて敵意を煽る結果を招く。
今回の悲劇の底に一貫して流れているのは、作品作りに関わる全クリエイターのコミュニケーションのハブ(中核)であるべきプロデューサーが、自分とその周辺だけで番組製造にいそしみ、果たすべき役割を果たさなかったことにあるのではないか。報告書が明かした新事実はそんな思いを強く抱かせた。
そして今回の報告書はあくまで日本テレビ側の考えを示したものだ。第三者委員会によるものではないし、芦原さんと近く接していた小学館側には書面質問だけで直接のヒアリングは行っていない。
多くのファンに愛された芦原さんの尊い命が失われたのはなぜなのか。真相に近づくためには小学館側の見解などもふまえ、多面的に考えなければならない。
答えはまだ遥か彼方だと思う。
[via:デイリー新潮]
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/06011035/
ネットの反応
・自分は悪くない!by日テレ
・死んだ方に問題があるって言いたい思いがビンビン伝わってくるな
・こんな報告書出せる会社って…
・日テレ、口を開けば開くほど敵を増やしてて草
・テレビ特権意識にどっぷり浸っている日テレ
・テレビは今だに殿様商売なのが痛いよね
・日テレ無神経すぎて呆れる
・再発防止じゃなくまず処分しないといけないだろ
・日テレのコンプライアンスじゃプロデューサーは処分されないのか
・チーフプロデューサーになんの責任も負わせないのなら、この件は解決することはない
・責任の所在を煙に巻こうとしてるのかね
・日テレ「これにて完全終了」
・日テレはもう実写ドラマ作るなよ
・小学館としては日テレの調査を怪しんでいるということだ
・クリエイターを名乗って良いのは原作者であって同人脚本家ではない
・なんで脚本家なんていう半分裏方みたいなものが大物面してるんだろうな
・脚本家インスタ削除で逃亡
・伝えてなかったら脚本家は悪くないじゃん
・脚本家「被害者だった」
日テレ「俺達は悪くない」
小学館「俺達は頑張った」
原作者「…」(死人に口なし)
・伝わってないとかじゃなくて原作に忠実にするのが基本だろ
・そもそも原作に忠実なTVドラマなんて存在しない
・契約ではなく要望
>要望じゃない、約束(契約)だろ
・結局全部表に出たら、原作者だけでなく、ネットで袋叩きに遭っていた脚本家まで実際に被害者で、悪いのは完全にテレビ局だったという…
・この件は、原作者が亡くなったからこんな事態になってるけど、表面化してないだけで、原作ファンが怒りまくった事例などいくらでもある。
セクシー田中さん事件の報告書別紙3を読むと凄いことが書いてありました
・今後もドラマの契約書は作らない
・作るとなんでも規則みたいになる
・安全にドラマは作れない(事故も?)
・社員を守り社員がクリエイティブに仕事を出来る環境を優先(外部作家は知らん)これ報告書ですよ?! pic.twitter.com/4WMVHxwdSh
— パナマ文書 (@Panamabunsyo) May 31, 2024
これ原作者も脚本家もプロデューサーも”女性”だよね?
”女性”ならではの揉め事って言ったら性差別かな?
これは、アメリカを見習うべきで、契約書を作るしかない
改変されたら訴えるしかないだろ