全日本プロレスが青息吐息だ。最終戦で両国国技館のビッグマッチも控える6月シリーズを前に、軍団抗争の目玉である悪役グループ「ブードゥー・マーダーズ(VM)」が解散、4選手が出場停止するという異常事態になった。
事の発端はVMのメンバーでもある所属レスラー、スーパー・ヘイトこと平井伸和が5月29日の神戸大会後、急性硬膜下血腫で意識を失い緊急入院。後になって、VMのリーダー・TARUから試合前に控え室で暴行を受けていたことが分かった。
試合中に平井が頭を打つ場面はなく、TARUも殴打を認めたことから、刑事事件に発展する可能性を残している。
関係者の話では「試合前の控え室で他に稔、KONO、MAZADAの3名に囲まれた平井が一方的に詰め寄られ、ドアが閉められた後も、謝る平井にTARUが『鉄パイプ持ってこい』と叫びながら暴行を加えている様子が聞こえてきた。再びドアが開くと平井の顔面が血まみれだった」という。
ある参戦レスラーによると「両者に金銭トラブルがあったと聞いている」というが、91年にデビューの平井に対しTARUは96年デビューの5年後輩選手。
上限関係が厳しいプロレスの世界で、なぜ後輩が先輩を殴る事件に至ったのか。
全日本に参戦したことがある中堅レスラーの中には「もともとホスト出身で顔も広いTARUは金回りも良く、選手たちを使うような立場になったり、金を貸すこともあったりで、先輩相手でも敬語も使わず、まるで取り立て屋のような態度になっていた」とささやく者もいる。
また、関係者が口を揃えて「ここ数年の全日本プロレスは経営状態がかなり厳しい」とも証言しており、その結果、上下関係どころではなくなっていたと推察される。
「経営が悪いから選手が営業や雑務も兼ねていて、5月は九州を転戦して神戸大会が最終戦。過酷な労働環境でイライラする者も多く、29日の事件当日はTARUの機嫌もかなり悪くて周囲がビクビクしていた」(前出関係者)
さらに全日本では、先日の震災の影響で多くの興行が中止や延期になったばかりか、場外乱闘に巻き込まれ負傷した観客から4,400万円の損害賠償を求める訴訟を起こされるなど、ただでさえ苦しい台所事情に追い打ちをかけるような事態が続いている。
最近ではAV女優まで担ぎ出したイロモノ路線も目立ったが、あるプロレス記者は「それも行き詰まって客入りも悪く年内いっぱいもつかどうか」と団体の終焉が近いとすら見ている。
全日本プロレス
かつては「王道プロレス」を掲げ、来年には40周年を控えるマット界の老舗・全日本プロレス。武藤敬司社長はこの難局を打開する技を持っているのだろうか?
[日刊サイゾー]
現場を知らない人間が仕切れるワケがない。