ドタバタ生んだうかつと想像力不足
シンガー・ソングライターの星野源(43)が、大みそかに放送される『NHK紅白歌合戦』で披露する楽曲を「地獄でなぜ悪い」から「ばらばら」に変更することを発表した。
「地獄でなぜ悪い」は星野が出演した園子温監督による同名の映画(2013年公開)の主題歌。
しかし園子温監督の出演女優に対する性加害疑惑がかつて報道されていたことから、24日のNHKによる楽曲発表以降、ネット上で疑問の声があがっていた。
本紙で「松尾潔のメロウな木曜日」を連載中の音楽プロデューサーの松尾潔氏も「ポップミュージックはつねに弱き者の側に立つことを熟知していると信じています。(略)源さんもNHKもどうか考え直してください」とX上で呼びかけていた。
NHKは変更の理由について公式サイトで以下のように説明した。
〈私たち制作チームは、今回のテーマである『あなたへの歌』のもと、この楽曲に込められた思いやメッセージを、テレビをご覧になる『あなた』へお届けすることで、今さまざまな時間を過ごしている人たちを勇気づけたい、という思いから、楽曲の選定を行い、オファーしました。
なお、アーティストはもちろん、NHKも性加害は決して許さないという姿勢であることは言うまでもありません。
しかし、曲目発表後の反響を受け、あらためて紅白制作チームとアーティストサイドで協議を行い、番組全体の構成や演出面などから判断し、星野源さんの歌唱曲を、デビューアルバムに収録されている『ばらばら』に変更することを決定しました〉
星野源の曲目変更についてのお知らせ『第75回NHK紅白歌合戦』公式サイトより
元BPO委員で放送ジャーナリストの小田桐誠氏はこう話す。
「楽曲を選定する段階で、NHKも星野サイドも、なぜ多角的な検証をすることができなかったのかというのがまず一点。一方で、SNSの浸透で、楽曲の幅広さや受け止め方に対する寛容さがなくなってきていることへの危惧もあります。
しかし紅白は公共放送による国民的な番組ですから、楽曲の意図は別のところにあったとしても、あらかじめ十分な想像力を働かせておく視点は必要だったと思います。
それを土壇場になって、世論の批判が起きたから差し替えるというのは、正直、うかつでみっともないと言わざるを得ない」
星野サイドは自身のサイトで楽曲変更の理由について、
「星野は2012年にくも膜下出血で倒れ、その闘病期に病院でこの楽曲の作詞をしました。
詞の内容は、星野の個人的な経験・想いをもとに執筆されたものです。後述する映画のストーリーを音楽として表現したものではありません。星野源の中から生まれた、星野源の歌です」
と「地獄でなぜ悪い」について改めて説明。
「一方で、すでにSNS等で指摘されているように、のちに性加害疑惑を報道された人物が監督した映画の主題歌であること、映画タイトルにある『地獄』というワードにヒントを得たこと、映画タイトルと同名の楽曲であることもまた事実です。
この曲を紅白歌合戦の舞台で歌唱することが、二次加害にあたる可能性があるという一部の指摘について、私たちはその可能性を完全に否定することはできません」
「今回の歌唱楽曲は『アーティストの闘病経験を経て生まれた楽曲で、いま苦しい時代を生きる方々を勇気づけてほしい』という、紅白制作チームからの熱意あるオファーを受けて選定された経緯があります。
しかし、そのオファーの意図から離れ、真逆の影響を与えうるのであれば、それはオファーを受けた私たちの想いに反してしまいます。
そのため、今回同曲を歌唱することを取りやめることにいたしました。私たちは、あらゆる性加害行為を容認しません」
と立場を表明。
「この曲が多くのファンの皆様に愛していただいている楽曲であることを、私たちはよく理解しています。また、星野自身もとても大切にしている楽曲であることはこれからも変わりません」
とファン向けに“思い入れのある曲”を強調しているが、それなら最初から想像力を働かせておくべきだった。
[via:日刊ゲンダイ]
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/365597
松尾潔氏も「よかった」
【動画】星野源 ばらばら
騒動へのアンサーソング?
2010年にリリースされた楽曲『ばらばら』は、「世界はひとつじゃない」「ばらばらのまま」「ぼくらはひとつになれない」などの歌詞が含まれ、ゆったりとしたテンポな曲だ。
この曲が、今回、賛否が渦巻いて楽曲変更をせざるをえなくなった現況を「体現している」と反響を呼んでいる。
ネット上では
「鳥肌たった」
「歌詞が正に」
「すさまじいアンサーになってる」
「この歌詞の曲を持ってくる意味とか考えちゃうな」
「代打が『ばらばら』なの深読みしてしまうくらいには意味深」
「変更されたばらばらの歌詞がすべてを語っているような気がしてくる」
と背景の意図を想像し、意味ありげだとコメントする声が目立った。
[via:中日スポーツ]
https://www.chunichi.co.jp/article/1004664
【歌詞】星野源 ばらばら
代替曲に選ばれた「ばらばら」の歌詞に注目が集まった。
「世界はひとつじゃない ああそのまま ばらばらのまま 世界はひとつになれない」といった歌詞を、今回の件に対する星野の意味深長なメッセージだとにとらえる人も多い。
ミュージシャンの高野寛は「星野くん、この騒ぎの後に『ばらばら』を歌うこと自体が、メッセージなんだな」と投稿。
音楽ジャーナリストの柴那典氏は「『ばらばら』を、この状況へのカウンターとして歌うということに、強烈な”星野源らしさ”を感じる。痛快ですらあるよね」と私見を述べ、そのほかにもXユーザーから
「代替曲が『ばらばら』ってのが強烈な皮肉でパンチが効いてて星野源がますます好きになった」
「あんな歌詞を紅白で歌う事ほど過激でパンクなことはないと思う。皆で一つになるとかそういうウソ臭い事を一刀両断にし、しょーもない世を受け入れつつなんとか生きて行こうとする曲。痛快だよね」
などといったコメントが散見された。
[via:日刊スポーツ]
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202412270000222.html
「一見、“世界はばらばらだし、それでいいんだよ”と歌っているように見えますが、“重なりあったところにたったひとつのものがある”という歌詞に哲学を感じる。
今回の騒動でいえば『地獄でなぜ悪い』を批判している人たちも、星野さんが憎いわけではなく、性加害の被害者の気持ちを考えてふさわしくないと指摘しているだけ。一方で星野さんも“勇気づけたい”からと当初選んだわけです。
星野さんと批判している側は一見ばらばらに見えますが、重なりあっている部分には“優しさ”があるんですよね。批判している人たちの気持ちもきちんと汲み取りながら、歌を通して世の中を勇気づけたいという姿勢は変えない。
『ばらばら』にさまざまなメッセージが込められている部分が、賞賛されている理由だと思います」(音楽ライター)
[via:週刊女性]
https://www.jprime.jp/articles/-/34955
『第75回NHK紅白歌合戦』
NHKのプロセスには不信感
NHKのプレスリリースによると、《曲目発表後の反響を受け、あらためて紅白制作チームとアーティストサイドで協議を行った》と記されている。《中略》
ここで今一度、楽曲の選定の経緯を振り返ってみよう。
「今回の『紅白』のテーマは『あなたへの歌』。この意図は、
『メジャーもマイナーも、国も性別も、時代にもとらわれることなく、他でもない“あなた”へひとりひとりに最高の歌をおくります!』
というメッセージが込められているのだとか。そのため制作チームは星野さんにも《この曲をテレビを観ている“あなた”の一人一人に届けて欲しいんです》と説得しました」(前出・芸能ジャーナリスト)
そもそも、なぜそこまでNHKは同曲にこだわったのか?
「『地獄でなぜ悪い』という曲は、星野さんがかつてくも膜下出血で入院していた頃に作られたもので、逆境にある自分を歌ったもの。
そこでNHKも、『いま苦しい時代を生きる方々を勇気づけてほしい』とオファーしたようです」(芸能ジャーナリスト)
「星野源 地獄でなぜ悪い」PVより
聞いた限りではNHKの『紅白』演出チームは情熱あるスタッフと思われがちだが、一方で不信感を持つユーザーも少なくない。
《出場歌手が歌いたい曲よりも、NHKが歌わせたい曲を押し付けているような気が》
《「NHK様の御意向」ありきな紅白のセトリも見直す時期が来ているのかもしれない》
《紅白で歌う曲目をNHK側が決めておりますが今回の件でもう止めた方がいい》
つまりは、ていのいい“押しつけ”だったのではないかという指摘だ。
「今回の一件でわかったのは、出場するアーティスト本人の意思にかかわらず、NHK側から歌唱曲を指定するケースがあるということです。
『紅白』でありがちな光景として、歌手が同じ曲を毎年のように歌って揶揄されることもありますが、これもNHKからの依頼なのでしょう。
今年も演歌歌手の三山ひろしが“けん玉世界記録”に挑戦しますが、このパフォーマンスも、制作チームのある意味“独断”でラインナップされたものでしょう。
アーティストは、年に一度の国民的行事に出られるというだけでいいのかもしれませんが、今後はより本人の裁量を重視するとか、視聴者が出場歌手を決めるなど、寄り添った演出があってもいいのではないでしょうか」(音楽ライター)
毎年『紅白』離れが叫ばれるが、NHKはその理由が、自分たちにあることをそろそろ認識したほうがいいかもしれない。
[via:週刊女性]
https://www.jprime.jp/articles/-/34951
『第75回NHK紅白歌合戦』曲順
ネットの反応
・ホリエモン「クレーマーに負けた悪しき前例。テレビはどんどんつまらなくなる」
・ひろゆき「映画業界で起きた問題で、監督が問題を起こしたので『その配給会社の作品はNHKで取り扱いません』とかなら、まだ理解出来る。ところが、音楽を提供しただけの音楽業界の星野源さん個人がペナルティーを受けて、映画業界はお咎めなし」
・何が「うかつ」だろうか?星野源が一番当惑してるだろう。
・紅白ってアーティスト自身が選曲できない。今回はNHK側の見込み違い。
・紅白なんてほとんどNHKからの楽曲指定でしょ?星野源にあーだこーだ言うのはおかしい。
・NHKがなにも考えずふんわりオファーしたとしたらその事の方が問題だと思う。
・二者共に自らの想像力の欠如を公に認めたくはないんだろうな…とは自分も感じてた。
・この曲はNHK側からの熱烈なオファーがあったと強調していた。今思えばこれは予防線になっており、星野源側はこうなることをある程度予感していたのかもしれません。
・「もう少し想像力を働かせば」とよく見かけますが、みんなどうやって揚げ足とってやろうかと想像力を無駄遣いしている気がします。
・今回の件でどういうパフォーマンスするか楽しみになった。
・この選曲はめちゃくちゃ星野源だなぁって思いました。
・アンサーソングはアーティストらしい伝え方だな
・星野源のファンの方って、深読みする人が多くないですか?本当にご本人にその意図はあるの?
・「ばらばら」もNHKサイドの意思表示という気もするけど。
・演出を変える時間ないから違和感のない曲を選んだだけだと思うが
・深読み。代弁した気になって悦楽を求めることか。
・そもそも星野源の楽曲全体に通底してる価値観は一貫してるから、どの曲選んでもこういう読みが出てきそうな気もするけど。
・仮に自分が愛する曲まで批判されて演奏の場を与えられないことへの皮肉や世間へのメッセージだとしたらその感情はとても共感します。
・皮肉とか言ってる人はばらばらって曲の歌詞を見てくるといい
・「ばらばら」の歌詞は、【人と違うことは当たり前で、意見が合わないこともある。でも、それだけのこと。対立したり、攻撃したりする必要ないよね】だと私は読み取ってる。皮肉なわけがない。
・ごちゃごちゃうるさい松尾潔に対するメッセージだと思うぞ
・一つ言えるのが星野源は見かけによらずパンクな男だ。
・批判した人たちの中で「地獄でなぜ悪い」を実際に聴いた人が何人いるかな?
・こんな理由で歌唱変更なんて、テレビはもう終わってるのか。
・これはキャンセルカルチャーの手口にまんまと嵌められた悪手。
・クレーマーってのは味をしめるから、要求はどんどんエスカレートするぞ。
・変な成功体験を植え付けてしまったな
・この件に関してはこれで良いと思うよ。星野にとってマイナスでもない。
・クレーマーに負けた、は言い過ぎ。少しでもケチがつく要素があったなら、事前に取り除いておくのがベスト。
・コンプライアンスを押しつけ合う窮屈な時代はうんざりだ
・世の中考えすぎ。コンプライアンスの名のもとに自由が奪われていく…。
・いつ曲が性加害をしたんだ?こんな事をしてたらこの曲はもう永遠に禁曲になってしまうぞ
>別に源さんのライブで歌う分には問題ない 紅白みたいな電波垂れ流しでやるのが問題ってだけで
・騒ぎ立てている連中は大した覚悟もなく、SNSで善人ぶっているだけ。いつまでこんな風潮につきあうのか。
・星野さんの決断は尊重します。しかし、批判したもん勝ち、言ったもん勝ちの世の中は生きづらいですね。
・星野源が意図せず加害者に加担してしまう事を防いだのに、それをキャンセルカルチャーと呼んでるような国は沈むよ。